「只今帰りました」
「石田殿 おかえりなさい」

三成は自分の恋人、豊久が待っている家へと帰った。

同棲している、とは言ったものの お互いの勤め先が違うためにゆっくりと話せる時間がそう多い訳でもない。

だが今日は二人ともの仕事が早く片付いて、久しぶりにゆっくりと顔を合わせたのだった。

「今日はツイてるんですかね。そういえば朝の星占い1位だったんです!!」
「星占いも中々馬鹿にできませんね」
「てことは今まで信じてなかったんですか?」
「そんなことはありませんよ。そうだ、茶を入れましょう」

毎朝、TVで星占いをみてから出勤するのが三成の日課だった。

「このまえ1位だったときに失くし物が見つかったんですから・・・」

おそらく信じていないであろう豊久の背中に呟いてみた。

そこで三成は自分がかかえて帰って来た荷物の事を思い出した。

「そうだ、豊久殿」
「どうかしましたか?」
「今日、左近からたい焼きを貰ったんですよ。何でもたまきが買い込んできたとか・・・。よかったらどうですか?」
「たい焼き・・・ですか」

彼が返答をよこさなかった事に三成は心当たりがあった。

「あ、甘い物苦手でしたっけ・・・・??」
「好んで食べようとは思わないだけですよ。一つくらいなら頂きますよ」

途端に三成の顔が明るくなり、いそいそとたい焼きを出している間に、豊久が茶を運んできてくれた。

二人の間には特にコレといった話題の共通点が少ないため、自然とこういう時の会話は仕事の事になってしまう。

「この前取引に行った会社の先方が個性的な方で・・・「えぇい!!ワシがこうと言ったらこうじゃ!!」みたいな・・・」
「そうなんですか・・・私のところには戦隊モノ好きな男が部署に入ってきましたよ。正義正義と・・・」
「え いいじゃないですか。戦隊モノ格好いいですよ」
「・・・そうですね」

そんな感じの会話をしていると、ふいに豊久が三成にこう言った。

「石田殿 頬に餡子が付いていますよ」
「え、本当ですか!?」

何か俺って子供っぽいな、と思いつつも自分の頬を擦ってみる。

「違います 反対側ですよ」

そう言われて今度は反対側の頬を擦ろうとしたら、急にその手を豊久につかまれた。「ちょっと待って下さい」
「豊久殿?」
「擦るとまたあちこちに付きますよ」

そういうと豊久は三成の方へ身を乗り出してきた。

次の瞬間に三成が感じた物は、鼻をくすぐる豊久の髪と頬に当たる豊久の唇と舌の感覚だった。

急な出来事に何も言えずただ真っ赤になる三成に、豊久は涼しい顔で

「とれましたよ」

と言ってきた。

「な・・・豊久殿・・・!!」

こちらとしては言いたい事は山ほどあるような気もしたが、上手く言葉も出てこなくて、何事もなく茶を飲む豊久を見ていると何だか余計に恥ずかしい気もして。

「どうかしましたか?」
「・・・なんでもありませんっ」

実は自分の方が年上だというのに、いつも豊久殿に流されている気がする。
そんな事を考えなくも無いが今はとりあえず、こんどこそ餡子を付けずにたい焼きを食べる事に集中しようと、三成は3個目のたい焼きに手を伸ばした。











恋する白。の嶺弥様より

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