「…名前か」
「はい」
「どうだった」
「やはり…石田三成の元に……」
「そうか」
闇に浮かぶ月は雲に隠れて相手の顔が見えない。
夜の静けさの中、風でざわめく木々の音だけが聞こえる。
「どいつもこいつも、あいつのどこに惹かれるのか…」
「高虎様…」
「あーぁ…結構気に入ってたんだがな、気に入った奴らはみんな俺から離れていく」
「高虎様…!」
高虎は手で定規を打ちながら自嘲したように笑みながら言う。
そんな高虎を見ていられなくって、自分が高虎の目に映っていないように思えて、それが寂しくて見て欲しくて何度も名を呼ぶ。
「高虎…様…」
「………」
「私は、決して…何があろうとも、貴方様の側から離れませぬ」
「………」
「………っ」
ただ無言。何も言葉を返してくれない高虎に名前は居たたまれなくなって一礼するとその場から去った。
(やっぱり私なんかじゃ高虎様に認めてもらえないんだ)
名前は一人自室で声を押し殺し、涙を流した。
ただただ、高虎を想って…
一人残された高虎の頬に涙が伝う。
「はつ……」
一つはもう戻らぬ彼女を思い
一つは…
『私は、決して…何があろうとも、貴方様の側から離れませぬ』
脳裏に映る彼女の表情
「…死んでも離れてくれるな」
離れぬと、そう誓った彼女に
付かず離れず
20090222