先生、わたくしの中に潜んでいる目に見えない何者かが、私をだんだんと壊してゆきます。 透明な何かで身を裂こうとしているのです。
けれども、先生。 わたくしは、目に見えぬ何者かにこの身を切り裂かれるのは怖くはありません。 たまに息ができないくらい苦しい時がございます。 体を捨てたいくらい痛む時がございます。 それでも、それと戦ったあと、わたくしの体はすばらしい開放感に満たされるのです。 生きていると実感できるのです。 だから、目に見えぬ何者かにこの身を切り裂かれるのは怖くはないのです。
先生、わたくしは、死ぬのは怖くはありません。 神様のいらっしゃる場所は、それはそれは美しい場所だとうかがいました。 だから、死ぬのは怖くはないのです。
でも、先生。 たった一つわたくしに怖いことがあるとするならば、 それは先生がわたくしをお忘れになることです。
わがままな女だとお嫌いになってもかまいません。
先生、わたくしは貴方の心の中にいたいのです。
お願いです。 わたくしの、生涯一度のお願いです。
わたくしを忘れないでください。
そのお心の片隅でよいのです。 わたくしの欠片でよいのです。 先生、貴方の中にわたくしを住まわせてください。
せんせい、
せんせい、
先生、
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hired by ジューン <あなたが薄暗くなる>
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