honey・moon




青ガラスの底に沈む液体に指を入れる。
どろり、と粘ついた蜂蜜が指先を徐々に喰らった。
このまま琥珀にならないものか、そう思う。
蜂蜜が樹液のように固まって、指先は逃れられなくなる。
そのうち全身に、まるで蜂蜜が生き物のように這い上がってきて、琥珀になるのだ。
きっと、琥珀の内側から見る外の世界は美しいのだろう。
日差しがきらきらと、薄い蜂蜜色を通して映るのだ。
なんて芳しい世界になるだろう。
水晶体に投影される、聖三玻璃(プリズム)の花束。
蘭のように優美で、薔薇のように馥郁(フクイク)とした香りを放ち、野菊のように可憐で愛らしい光の渦。
エーテルが私の周りを踊り、やがて蜂蜜を砕くだろう。
そうしたら、ショートケーキにでもふりかけてもらおうか。
きっと、蜂蜜だけなら甘いのだろうけれど、中には私が入っているからちょうどいい味になるはず。
ラズベリー、レモンシロップ、桜の塩漬け、サクランボのコンポート。
たぶん、そんな味。
残りは、結婚の約束をしたあの人へ贈る指輪にしてもらおう。
ぷらちなを飾る控えめな小石になるのだ。
祝福の鐘が鳴り、空から降るのはまばゆい光のベール。
さっきのショートケーキは、ウェディングケーキにいいかもしれない。
私を構成するすべてでできた、私の結婚式になるのだ。

青ガラスの底から指を引き抜く。
とろりとした蜂蜜は指をすべり、そのまま口へと運ばれた。
花の香りが鼻腔に広がり、全身に行き渡る。
私はショートケーキを作ろうと席を立つ。
椅子の上には、琥珀がこぼれて揺れていた。




20110308
Submitted to COMPLICEさま
written by Robin.






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