※学パロ、出てくるキャラは皆同じクラス(年齢などは一期設定)。

ロックオンはクラス担任(担当は数学)。

明らかに年齢的にあり得ない人が生徒だったりしますが、スルーでお願いします。





寮から学校への道を歩いていた時。不意にコンクリートの道に、黒い水玉模様が出来始めた。

それと同時に、頬に冷たい感触。

空を見上げてみると、白と灰色が入り交じったような空が、昨日と変わらず広がっている。


「……今日もまた雨か……」









「おはよう、刹那」


昇降口に入ると、同じクラスの沙慈が靴を履き替えているところだった。

沙慈に向かって「……おはよう」といつものように素っ気なく挨拶を交わすと、刹那も靴を履き替え始める。
くしゃくしゃの髪の毛は水分を含んでどことなく湿っていた。


「……いきなり雨が降ってきて焦ったよ…。折りたたみ傘持ってて良かった……」


沙慈が刹那に向かって言った。その甲斐あってか、沙慈は刹那と違って全く濡れていない。


「……刹那、僕のタオル使う……?」


濡れていても全く気にした様子を見せない刹那を見かねて、沙慈が自分のバッグからタオルを取りだした。


「必要ない、すぐに乾く」


靴を履き替えた刹那が教室に向かい、沙慈も慌ててその後を付いていく。


「そのままじゃ風邪引いちゃうよ!?…ブレザーまで濡れてるし……」

「ブレザーなら教室で脱げばいい」

「そういうことじゃなくて……!!!」


今日も、雨の一日が始まった。



******


「2人ともおはよっ!!……刹那は今日も濡れてるね」


刹那と沙慈が教室に入ると、クリスティナが笑顔で挨拶してきた。クリスティナは自分の席に座って、前の席のフェルトと何かを喋っていたようだ。

刹那は結局、あれから沙慈に頭を無理矢理拭かれたのだが、湿っているものはどうにもならないので雨に濡れてきたことがバレバレの状態だった。沙慈は何でこんなに世話焼きなんだろうと刹那はぼんやり思う。


「俺のせいじゃない、雨が悪い」

「いや、濡れてることを責めてるんじゃないから。……でも確かに何でこんなに雨なんだろう」


クリスティナの言葉通り、最近は雨が続いている。外の体育の時間が潰れたり、いきなり登下校中に雨に見舞われたり……学生にとっては迷惑なことだ。


「梅雨じゃあるまいし……。やっと暑さが過ぎて過ごしやすくなるかなって思ってたのに、今度は雨だよ?」

「秋雨前線の影響じゃないかな……」


フェルトが呟く。秋雨前線とは文字通り、秋雨を降らせる前線のことだ。今、この辺りでは秋雨前線が暴れているようだ。


はぁ、とクリスティナがため息をついた。


「梅雨だとか秋雨だとか……もう、雨多すぎるでしょ。雨に濡れると確かに男って格好良くなるけど、やっぱり青空の下の男も格好いいよねー……。そう思わない、フェルト?」

「えっ!?……そ、そういうことは…良く分かんない……」

「髪の毛から水が滴りながら雨宿りも…そりゃ、良いんだけどー……」

「な、何の話……?」


クリスティナとフェルトがそんな話をしているのを尻目に、刹那は窓際の自分の席に着いた。沙慈が刹那の右隣の席に着く。この2人は席が隣同士だった。

机に肘をついて、窓の外を見つめる。そこから見えるグラウンドに水たまりが既に出来上がっていた。昨日までの雨で出来上がっていた物かもしれないが。とにかくグラウンドに出来た水たまりはここ最近の雨の様子を物語っている。

何となく窓を開けてみると、雨が降る音がとても大きく聞こえる。


「こんなに遅刻ギリギリに登校してくるなんて何を考えているんだ、君は?」


人を問答無用で批判するような、雨音にも負けない声がいきなり聞こえてきた。

刹那が振り向く。後ろの席のティエリアが明らかな批判の目で刹那を見ていた。

当たり前だが身体も服も、ストレートの髪もちろん全く濡れていない。刹那と正反対だ。


同じくらいのタイミングで登校してきた沙慈が気まずそうな苦笑を浮かべる。学級委員長だからなのか、校規委員だからなのか……正直に言えばティエリアの役職が何なのかよく分からないが、何故自分じゃなくて刹那をいつも批判するのだろう。しかも、超高圧的な態度で。

それで精神的に参らない刹那は相当すごい。


「……雨が悪いんだ」


さっきも同じ事言ってたよね、刹那……。と沙慈が小さく呟く。


「天候のせいにすればいいと思っているのか?」

「………最近の雨の量…秋なのか梅雨なのか分からなくなるな」

「話を反らすな!!!」

「まぁまぁティエリア、実際に刹那は間に合ってるんだからそんなに怒らな……」


ティエリアの隣の席のアレルヤの言葉は、ティエリアに冷たく刺さる目線を送られたことによって途中で途切れた。


「時間を守らないなど考えられない」

「……遅れてはいない」

「……あ、えーっと……刹那、このままじゃ今日の体育も無くなっちゃうのかな?」


再び火花が散りそうだったので、沙慈が慌てて話題転換を図る。


「無くなるな」

「そ、そう………」


転換どころか、会話が終了してしまった。



******


それからまもなくチャイムが鳴り、教室に一人の教師が入ってきた。


「ホームルーム始めるぞ」


教卓に出席簿を置いたのはこのクラスの担任のロックオンだった。爽やかな笑顔で女子に大人気な先生だ。


「……今日の欠席は……」


ざっとロックオンがクラス内を見渡す。その目は誰も座っていない机に向いた。


「……ハレルヤにミハエル、またサボってんのかよ…雨の日ぐらい朝から出席しろよな」

「……晴れの日ならサボって良いんですか」


クリスティナが苦笑しながらロックオンに尋ねた。


「そういう意味でもないけどよ、サボってる時のイメージってやっぱり晴れだろ」

「……確かに屋上で語り合う時ってだいたい晴れてますよね」


何のイメージなんだろ…とフェルトが少し首をかしげた。


「…今日も雨なんて…成層圏が恋しいぜ」

「ひねらないで空って言った方がみんなに通じると思いますよ」


ここ数日は太陽が全く顔を出していない。雨が続くと、気分が沈んでしまう。子供は雨が降ると水たまりで遊んだりなどして気分が高揚するが、もう既にこのクラスの皆は雨が楽しい年齢ではない。

夏の青空が続いた後に秋雨が降り出すのだから、尚更晴れていた時が恋しくなる。


「こんなときに勉強なんてもっと陰気になるけど早く教科書出せよー。しかも数学もあるしな」

(自分で自分の教科をそんな風に貶すのもどうかと思うが…)


刹那はぼんやりそう考えていた。

******



3時間目、数学の時だった。

数学の授業が始まり、教室の中で聞こえる音はロックオンが何かを喋る声と皆がノートを取る音、そして雨の音だけになった。

刹那はぼーっと外を眺めながら持っているペンをくるくると弄んでいる。

数学の時間中はいつもこうなることが多く、そのためかいつもテストの成績があまり良くないが、それくらいでは動じないのが刹那だった。


今日の帰りはどうするか。また濡れて帰るか、誰かの傘に無理矢理入れてもらうか……

そんなことを考えていると、1つの音が聞こえなくなった。


(……雨が…?)


ぼーっとした状態から脱却して、目を凝らして外を眺めると……雨が止んでいた。

それどころか、校庭が不意に明るくなる。水たまりが、明るい光を反射してキラキラと光っている。

太陽が出てきたのだ。


窓から流れてくる、先ほどとは違った暖かな風。


「おっ、久々の太陽だ!!!」


授業中なのに、ロックオンが空を眺めて喜びの声を上げた。クラスの皆もわっと表情が明るくなる。

丁度良く、雲と雲の切れ目から太陽がのぞいているのだ。雨が上がった瞬間に太陽が出てくる。なんてグッドタイミング。雲は空気が読めるらしい。



不意に、刹那の机に何かが落ちてきた。


「………?」


手に取ってみると、それは葉っぱだった。

だがその葉っぱは緑色ではなく、黄色みが混じった紅葉である。

窓の外には、この葉っぱと同じ色をした葉を付けている木が植えられている。風に乗って飛んできたのだ。


「そうか、もう秋なんだね」


隣の席の沙慈が葉っぱを見つめながら刹那に言った。


「雨続きで、実感無かったけど」


これから、秋が始まる。直に今ほどの雨降りは無くなっていくだろう。


「………」


葉っぱを窓の外に放りながら、刹那が呟く。


「………もう、雨のせいに出来なくなるな」


真顔で呟くのを聞いて、思わず沙慈は笑ってしまった。




のちもよう
(刹那、秋になったら何したい?)
(…考えていない)





――――――

2010/10/18
ありがとうございました!

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