白←骸
電子的なチャイムの音にふわりと意識が浮上する。
頭をあげると、先生が授業の終わりを告げたので、ああ、寝てたんだなあ、と気づく。
「また寝てたでしょう」
日直が黒板を消していくのと真っ白なノートを見比べてぼーっとしていると、呆れた声が背中からかかる。
声で誰かは分かるが、わざわざ振り向いた。
「骸クン、おはよー」
「もう午後ですけど」
「お昼ご飯の直後だからこそ眠いんじゃん」
返事と同時に、目の前に差し出された青色のノート。
ありがと、と手をひらひらと降ってからシャーペンを持つ。
骸クンはというと、僕の前の席の椅子を180°回転させ、向き合う形にして座る。
「相変わらず綺麗なノートだよねー」
「人に見せるのに汚いノートなんて恥ずかしいじゃないですか」
「僕に見せること前提?」
「他に何か?」
文句をいう筋合いはないのだが、何となく腑に落ちない。
でもわざわざ僕のためだけに綺麗に書いてくれる、というのは嬉しいかもしれない。
いや、とても嬉しい。
「僕、骸クンのこと好きだなあ」
そう言ってシャーペンを真っ白のノートに滑らせると、ガタタッと物音が立った。
何だろうと顔をあげると、目の前に座っていたはずの骸クンがいない。
「え、骸クン?」
「……いえ、大丈夫ですなんでもありません気にするな」
わ、と驚いた声が出た。骸クンの頭が、机の向こう側から出てきた。
どうやら骸クンは椅子から落ちたらしく、表情を歪めて椅子に座り直した。
椅子から落ちるなんて、どんな座り方をしていたのか。
「どうやったら椅子から落ちるのさ」
「滑ったんです!」
笑いを含めて聞くと、思いの外強い口調で返される。
しかしその頬は赤い。なんだ、落ちて恥ずかしかったのか。
「骸クン、可愛い」
乱れた髪を直してあげると、更に赤は増して、とうとう骸クンは俯いてしまった。
「早く写しなさい…」
か細い声に、あ、と気づき急いで手を動かした。
[
back]
タイトルは 確かに恋だった様より。リンクはBKMです。