甘、微々裏
「あのさぁ」
「く、ひゃぁっ!?耳元で喋らないで下さいっ…!」
「…ふぅん、耳弱いんだ」
はっと骸は身構えた。雲雀の声色が面白がっているようだったからだ。
そんな時は、大抵ろくな結末を迎えない。
慌てて耳元の顔を押し退けた。
「放しなよ」
「じゃあちょっと離れてください」
「うんわかった」
やけにあっさり肯く。
骸は不審に思いながらも、言葉にしてしまったことにはしょうがないので手を引いた。
「それでね、」
「っちょ!雲雀く、話が違うっ」
やはり雲雀は雲雀。
先ほどの返事は適当なもので、骸が手を退けた途端にがしりと骸の手を固定し、耳元でそのまま喋り続ける。
ふっと雲雀が軽く耳に息をかけると、骸の背中がぞわぞわと粟立ち、なんとも言えない感覚を与える。
「―――っどきなさい!!!」
「やだ。いいから話聞いてよ」
「ふぁ、やめっ舐めるな…」
耳朶をべろりと舐められ、じたばたとした骸の抵抗が弱々しいものになった。
顔を赤らめ、目を伏せているその姿に、雲雀は少なからず興奮してしまい、これはすごいことを発見したと内心で喜び勇んだ。
「この間、君、僕のこと『貴方』って呼んだだろ?」
「………っ」
「それで、あの呼び方ってまるで新婚みたいだよね」
「……はぁ、…」
「聞いてる?」
「んぁ、聞いてます、からぁっ!!」
くちゅくちゅと汚らしく唾液の音を立てて、舌先で耳を弄んでやれば骸の肩が跳ね、あぁ、なんて最中のようないやらしい声を出す。
(…これは、やばい、ね…)
「もっ…やめなさい、恭弥!!」
「ワオ、名前」
「へ?」
「セックスの時にしか下の名前呼ばないじゃない、君」
「え、―――あ、これはっ…!」
「…へぇ」
雲雀は骸の耳を散々苛めぬいた舌で下唇を濡らす。
それを見た骸の顔色が青ざめた。その瞳が宿しているものが情欲だと気付いたからだ。
「セックスの時みたいに、欲情しちゃった?」
「違っこれは、」
「乳首勃ってるしね」
ぴん、と服の上から分かるほど強く主張しているそれを指で弾けば、骸の瞳が濡れ、熱っぽい息が出た。
「んん…やめて…」
「やめたら辛いのは君だよ」
「…恭弥、最低です…っ!」
「なんとでも」
雲雀がソファに押し倒せば、期待とも拒否ともとれるような喘ぎを漏らし、煽られる。
また耳をねぶると、もう我慢できなくなったのか骸は高い嬌声をあげた。
「今日は耳でイってみようか」
にっこりと笑い言い放つ。骸は涙を滲ませて震えながらも雲雀を睨み、変態、とだけ罵った。
ぜんぶ舐めとってほしいの、
(期待なんてしてない…!)
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タイトルは涙星マーメイドオライオン様より。