言うくらいなら口がry | ナノ





「もう自分で食べれるでしょうっ」


やや強引に器を彼に押し付ける。
白蘭は残念そうな顔をしたが、大人しく受け取った。
そのままもぐもぐと食べ始める。


「…なんだか貴方が大人しいと調子が狂いますね」


顔を軽くそむけてぼそり、と呟く。
視界の端で白蘭が え? という顔をした。


「そう?」

「ええ、全くです」


昨日の事件からも分かるように、こいつはかなり我儘だ。
とても、我儘。
それなのに、今日はなんだかおかしい。


「なんで、…大人しいんですか」

「骸クン?」

「…」



僕は、何を言ってるんだろう。

これじゃまるで、僕が白蘭に我儘を言われたいみたいじゃないか。

違う、そんなことはない。
…きっと。


「もう、なんでもないです!!」


いきなり声をあげた僕に白蘭はびくり、としてスプーンを落としてしまった。
間抜けな音が部屋に響く。
慌てて拾おうとした僕の手首を彼が掴んだ。


「どうしたのさ、骸クン…」

「…なんでもないって言ってるでしょう」

「あーん、のこと、怒ってるの?」


先ほどのことを思い出す。
恥ずかしいながらでも、ゆったりと流れてた心地よい時間。


…もしかして、そういうことなのかやっぱり。
認めたくない心がうずく。
しかし、白蘭が心配そうな顔をしているのが見えた。

僕は、白蘭に気づかれないようにこっそりとため息をついた。

掴まれて無い方の手でスプーンを拾う。
そして、白蘭の元からまたもやや強引に器を奪い返す。


「骸、クン?」


戸惑う彼に構わず拾ったスプーンでお粥を一杯すくう。
それを白蘭の口元に近づけた。


「………あーん」

「!」


白蘭は驚いた顔をしたが、すぐに笑顔に崩し、口を開けた。


「あーん」


続いてもう一口。
今度は無言のまま彼に食べさせようとしたら、またも手首を掴まれ止められた。
白蘭はニヤニヤしている。


「ふうん、骸クン僕に困らせて欲しかったんだあ」

「違います、無理されてこれ以上酷くなられても面倒くさいからです」


反論は聞き流され、白蘭の手が手首から僕の頬に移動した。
彼の手を冷たいと思うのは本当に彼の手がつめたいからか、僕の頬が熱いからなのか。


「いいよ、じゃあいーっぱいわがまま言うね」

「止めてください、誰も貴方の我儘なんて期待などしていない!」

「赤面してから言われても説得力ないよ」


やっぱり僕の頬が熱かったのか。
微妙にずれた思考の中、とりあえずお粥をつっこんでしまおうと思い至った。


「あむ、」

「早く食べ終わんなさいっ」

「むいむい、まだあとはんふんもあふお」

「口の中に物を入れて喋らない!」


ようやく食べ終わると、白蘭は次はちゅーしてよ、なんて言い出した。


「む…無理です」

「ほっぺでもいいよ」


目を閉じてスタンバイした白蘭に僕は恐々と、軽く頬に唇で触れた。

瞼を開いた彼は嬉しそうに言う。


「…なんてゆーか、こういうのも初々しくて可愛いよね」

「……はいっあーん!!」


差し出すと白蘭は悪戯っぽく笑い、素直に口を開けた。






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