おじいさんと世界



その人は、さびれた町へ訪れては、その町で一番古ぼけている空家に住み、町がある程度発展したら出て行く……という、一風変わった旅人だった。
齢は70程で、こけた頬には胡麻をまぶしたかのような、白黒まだらな短い髭が生えていた。頭髪は若干後退していて細くて短く、刈り上げたばかりの芝生によく似ている。
背には革製の肩帯が印象的な大きいカバンを背負い、脇には水袋やナイフ、ロープ、帆布、獣よけらしき鈴がぶら下がっている。
何が入っているのか、カバンは満杯状態だった。

「ほしをあつめとるんだよ。ほしはやさしい場所へすすんで落ちるもんでな」
 わたしは彼に、どんな旅をしているのかを聞いた。
 「ほし」とは何なのだろう。彼の言う「ほし」は、空の星々のことではないような気がした。


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