▼黄色い信号機

大久保龍也。夜須翼。日野美波。そして、僕。昔は仲がよかった。それも小学の時までで中学からは赤の他人のようになった僕たちがなんで高校生になって突然集まってるんだろう。相変わらず大久保は体格が良いわりに家事とかうまいし、行儀やらなんだりでうるさくてお母さんのようだし。夜須は家が金持ちの坊ちゃんで庶民のことを馬鹿にするくせに庶民代表の大久保の料理を人一倍食べてるし。日野はさっきからテレビで流れてる教育番組をまぬけな顔をしながら見てる。
あの頃となんら変わりない。それがひどくひどく僕の胸を締め付ける。息すら吸えなくなるんじゃないかって、でもそれでもいいやって、いつからだろうか、進むわけでも止まるわけでもなく黄色い信号しか僕の中に存在しなくなったのは。
時間が過ぎた。どれくらい過ぎたのかは分からない。大久保が僕の方を見てから時間が過ぎていたことに気がついた。
コホン。なんて大久保がわざとらしく咳払いをした。心臓の音が心なしか大きく聞こえた。
「黒澤、」
大久保が僕の名前を呼んだ。大久保から目を逸らしたら今度は夜須と目が合った。息が詰まりそうだ。
「昔の約束、覚えているか?」
体に見合わないほどの声の小ささ。こちらを伺っているような、もしくはやっと絞り出したような声で、ゆっくりとゆっくりと震えた言葉で僕に問いかけた。もう音が聞こえなくなった。早いのか遅いのか分からない僕の心臓の音しか聞こえない。3人とも僕のことを見ている。なにを期待してるの。やめて。やめて。やめてください。過去のことはもういいでしょう。頭がこれまでにないくらいフル活動している。唇がガチガチと寒いわけでもないのに震える。手に汗が出る。やっとのおもいで絞り出した声は。



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