風船思ひ出



校長先生が私たち6人におめでとうと言った。私たちは口を揃えてありがとうと言った。紙切れを雑に丸めてリボンで括っただけの卒業証書を手に持って、ボロボロな校舎を出た。少しでも動かせばキィキィと錆びれた音のする校門を出れば本当にこれで終わりなんだな。ってそこで思い出の大切に気づいた。
小さな小さな街の卒業式。小学校から6人みんな一緒。クラスも一組だけ。運動会は地域の大人も参加ありのハチャメチャ。文化祭なんて商店街の方が力入れてるし、合唱祭はのど自慢大会。少し癖のある先生と少しやる気のない生徒のぶつかりあいなんていつものこと。窮屈だったはずのあの教室も、名前を呼べばすぐに聞こえる校舎も、風船のように私の中に浮かんできて、花弁が散るように地面に涙が落ちた。
この街に高校なんてないから隣町とかに行くしかない。この5人とも今日でさようなら。
運動しか頭にないバカのシンジ。歌うことが好きな歌姫オリカ。八百屋の娘で説教婆ァユノ。お絵描きが大好きな不思議くんイロハ。セクハラ魔エロ大魔人トオタ。そして、私。の6人はさようなら。
何泣いてるのよ。なんて言いながら自分も泣いてるユノ。
バーカ。なんて涙目で言ってくるトオタ。
そんなトオタにお前もバカだよ。なんて同じように涙目なシンジ。
ふふふ。って笑いながら泣いてるオリカ。
ハンカチで涙を拭いてくるイロハに抱き付けば、イロハも痛いくらい抱きしめ返してくれた。肩が震えてた。
「嫌だぁーーー」
私が嗚咽混じりにこぼした言葉に、6人みんなで泣いた。私たちの泣き声はまるで赤ちゃんのようで街中に響き渡っていた。



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