翔⇔主人公←那月の設定です。那月が翔を殺しています。
不快に感じる場面があります。嫌な方は観覧をご遠慮ください。



















「未美〜っ!ただいまぁ」

那月君が笑顔で私に駆け寄ってくる。黄色のくせっ毛、白い肌、黒い眼鏡。
その姿にときめく私はもういなかった。怖い。怖い怖い怖い怖い。来ないで。来ないで、来ないで。

「今日は大人しくしてたんですねぇ。偉いえらぁい」

気づいたら監禁されていた。牢屋のような暗い部屋に閉じ込められていた。鎖に縛られていた。飼い犬が繋がれているかのように。何が起こったのか分からなかった。でも、一つだけ分かったこと。それはもうここから抜け出せないということ。
那月君が私に好意を抱いてくれていることはこうなる前から知っていた。でも、それは翔君やぬいぐるみに抱いている感情と同じだと思っていた。
「好きです」と、言われたことがあった。でも私は冗談交じりにしか受け取らなかった。理由は沢山あったけれど、何より、私には好きな人がいたから。
来栖翔君。小さくて可愛いけど正義感のある強い男の子。私は那月君や翔君、皆といる内にだんだん翔君に惹かれていった。そしてまた、彼も。
「好きです」と那月君に言われた数日後に、翔君に「好きだ」と言われた。嬉しくて嬉しくて涙が出そうだった。「私も好きです。翔君が大好きです」

そこから、記憶が飛んでいる。私が目を覚ました時、目の前には那月君がいた。

「貴女が僕以外の物になるなんて耐えられなくて」

そう言って笑った那月君に、私は恐怖しか覚えなかった。今まではその笑顔に心癒されていた。那月君の笑顔は素敵だと思っていた。

「ここから…出して…下さい」
「嫌です」
「この鎖を外して…下さい…」
「嫌です」
「こんなことをして…何になるんですか…」

「こうすることでお前を俺だけのものにできる。その体も、今日から俺だけのものだ」

口調が……いつもの那月君じゃなかった。誰…?

「んんっ!?っは、離して!」
「お前に拒否権は無い。今の内に慣れとけ。今日から毎日だからな」
「何言って…っあ、…いや、だ」

心の無い行為も…もう、何度も繰り返した。最初こそ嫌がって抵抗してた。でももうそれも無駄だということに気付いた。私はいつしか抵抗しなくなった。それを良いことに、彼の行為は日に日に暴力化していった。
怖さは増していった。でも、私の感情は無くなっていった。もうどこにも逃げられない絶望で心が支配されていた。

「あ、そうだぁ。今日はそんな偉い未美に良いお話があるんです」

私は何も答えない。

「翔ちゃんを連れてきてあげたんですよぉ」

…え…なんで?どうして…?翔君の名前が…?

「見てください、未美!ほら、ほら!」

途端、どさりという音が響く。弱弱しく、私は前を向いた。

「翔ちゃん、凄いんですよぉ。なかなか脳が死んでくれなくて。面倒になったから漬けておいたんです。凄いでしょ?何ヶ月か経っているのに、ちゃーんと姿が残ってるんです。」

裸の翔君を床に投げ捨てた音だった。

「ひっ………ぃ…!!」
「どうして怯えるの?翔ちゃんだよ?」

ほらほら、翔ちゃんですよ〜、と、那月君は足で翔君を遊び始めた。

「やめ、て…くださ……」

私が涙混じりにそういうと、那月君は嬉しそうな顔をして言った。

「ああっ。まだ泣けるんですねぇ。嬉しいなあ。最近全然表情を変えないからつまらないと思ってたんです」
「ぁ…あ…あぁあ……ぁぁ…ぅ」
「無表情の貴女も大好きですよ?でも怖がっている貴女も恥ずかしがっている貴女も悦んでいる貴女も大好きなんです」

大好き
その言葉が色褪せて感じる。

「未美……こっちを向いて。」
「こ、ないで……いや……」

無意識に、那月君から逃げる。ジャラジャラと乾いた音が響いた。

「愛してる…愛しているんです、未美……愛してる、愛してる、愛してる愛してる愛してる愛してる…ずっと僕だけの………可愛い未美でいてくださいね……。貴女の居場所はここだけなんですから……ふふ」