十二月




 

冷たい空気の中を、僕は彼女と並んで歩いている。

「雪の匂いがするわ」

 彼女が空を見上げて呟く。僕は何も言わない。二人の吐く白い息が、混じり合って溶けていく。

「冬が寒いのは、きっと寂しいからなのよ」

「違うよ。冬が寒いのは、地球が公転しているからだ」

 彼女は少しだけ不服そうにする。

「そんなこと私だって解ってるわ」

「僕だって君が解ってるってことくらい知ってるよ」

 北風が吹いて、彼女は寒そうに肩をすくめる。本当に北風かどうかは知らないけれど、この季節に吹くんだからやっぱり北風だろう。 

「私達って本当に気が合わないわね」

 何故か少しだけ気持ちが軽くなって、僕は微笑む。それは彼女も同じだったようで、楽しそうににっこり笑った。

「でも、きっと恋人ってそんなものよね」

 僕は頷く。彼女が冷たい手で僕の手をとる。子供のように、ぎゅっと、強く。

「貴方と私は似てる。でも、決して、解り合えはしない。永遠に」

 呪いのように、祝福のように彼女は呟く。それから、透明な目で僕を見上げる。

「大丈夫、私達、きっと上手くやっていけるわ」

 僕は黙って微笑む。彼女は相変わらず楽しそうに笑う。

 ひらひらと、静かに雪が降り始める。僕らは手を繋いで歩いていく。

  




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -