赤木くん達が帰って、他の部員たちも帰って、ひなのは最後の一人になった。


赤い髪の彼をのぞいて。

彼(桜木くんって言ってたな)は部員たちが帰った後も一人で練習をしている。

見た目に反してやっぱりいい子だ。

だって、彼は初心者で(木暮くんに聞いた)他の部員は経験者で。

技術的にはどうしても他の部員に負けてしまう。

だからこんな時間まで残ってずっと一人で練習してるんだ。

うん、がんばってるな。

そう言えば私もバスケ始めたころはがむしゃらに練習してた。

…そう、三井も一緒に。

文句言ったり、文句言われたり、うるさい時もあったけど、楽しかったな。

…ああ、もう。

バスケ関連の思い出は全部三井につながってしまう。

ずーんと落ち込んでいると、足元にボールが転がってくる。

ボールを手にして、顔を上げると桜木くんがこちらを見ていた。


「スイマセン。」

「あ、いやこちらこそ。ずっと見ててごめんね。」


そう声をかければ、桜木くんはぶんぶんと頭を振った。


「全然ですよ!むしろいてください!!」


体が大きいのに、全身で表情を表すな、桜木くん可愛いな。

そんなことを思いながら話かける。


「桜木くん、がんばるね。」

「いえ!!この天才バスケットマンに練習なんていらないんですけどね!!なっはっはっ!」


そう言いながらもボールを手にする彼に微笑む。

こういう人は嫌いじゃない。
(むしろ彼はおもしろいし。)


「天才も練習が大事だもんね。」


そう言えば桜木くんは背筋をピシッとさせる。


「――ええ!!モチロンです!天才な上に努力まですれば……超天才?」


どーんと言う桜木くん。

どうしよう本当におもしろい。


「練習せねば!!」と再びボールをつき始めた桜木くんに、ひなのは「あ、」と声をかける。

すると彼は不思議そうにこちらを振り返る。


「ね、桜木くん。私もちょっとバスケやってってもいい?」

「は、え、ど、どうぞ。」


ぽかんとした様子の桜木くんにニッと笑う。


「私バスケ、やってたんだよ。」


そしてボールを手にドリブルしてランニングシュートを決める。

そしてすぐにボールを拾い、ジャンプシュートを放った。

パスッという音が久々で心地いい。

振り返ると、瞳をキラキラ輝かせる桜木くん。


「すごいです!!」

「え?」


疑問符を浮かべると桜木くんはこちらにやってきて手をバタバタさせる。


「本当にスゴイですよ!ルカワなんかよりも軽くて華麗で、う、美しかったです!」

「ふふ、そんな誉め殺し、嬉しいなこのやろー。」


誉められたことに嫌な気はしないので、にやにやしながら桜木くんを肘でつつく。

彼は尚誉め続行中だ。


「本当に本当にステキでしたよ!ルカワのシュートなんてメじゃねーっす!!」

「ルカワ……ああ、あのスゴイ子?」


ルカワくんは練習をちょっと見ただけで才能を感じてしまう。

彼は期待のルーキーだろう。

いい選手が入ったんだなぁ、湘北に。

これまた先の楽しみな子だろう。

しかし桜木くんはルカワルカワと連呼しているけれど、ひたすらルカワくんの文句を言っている。

二人の間に何かあったのだろうか。

まだ入学してそう経っていないだろうに。

そんなことを思いながら、口を開く。


「ルカワくんもすごかったけど、桜木くんも上手になると思うよ。」


そう言うと彼はますます瞳を輝かせてこちらを見る。


「赤木くんにも言ったけど、体格もいいし、体力ありそーだし。何しろ努力する天才だもんね!きっと、スゴイ選手になるよ。」


微笑みながらそう伝えると、彼はひなのの手を取る。


「て、…」

「手?」

「あなたは天使ですか…!」

「え?」


天使?

首を傾げて桜木くんを見るが彼はもう一度「天使だ。」と呟く。

どうやら聞き間違いではなかったようだ。

桜木くんは目に涙を浮かべながらこちらをしかと見つめる。


「あの、お名前は…、」


そういえばまだ名乗ってなかった。

こっちはもう名前知ってるのに。

ひなのは微笑む。


「私春川ひなの。赤木くんと木暮くんと同じクラスなんだよ。」

「ひなのさん…。ステキな名前だ!」

















バスケットマン登場!
















(私でよかったら、時々バスケ教えるよー。)

(ほ、ほ本当ですか!)

(うん、私もバスケやりたいし。練習終わった後、一人で練習するよりきっと楽しいよ。)

(なんて優しい人だ…!ゼヒお願いします!!)







130309執筆




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