赤木くんと木暮くんに話を聞いてから、ぼーっと体育館の隅に足を抱えて座って部活の様子を眺めていた。
見ているけれど、見ていない。
頭の中は三井のことでいっぱいだった。
だって、私の知らないところで三井はケガをして、バスケをやめて、…そして不良になっていたのだから。
なんで知らなかったんだろう。
なんで気にならなかったんだろう。
どうして三井は相談してくれなかったんだろう。
そんな、なんで、どうして、という思いが頭の中を占める。
でも、結果、私は三井のことを気にしていなかった。
二年間も。
あのバスケばかなのに、あのバスケばかが、バスケをやめるなんて辛いに、きまってる。
そんな三井を放っておいて私は三井の友だちだ、と言えるのだろうか。
三井は今、なにを思っているのだろう。
そんなことを悶々と考えていると、声をかけられる。
「…大丈夫か。」
「赤木くん、」
顔を上げると、汗をふいて歩いてきた赤木くん。
それに続いて木暮くんもやってくる。
ふと、周りを見ると後片づけをしている部員たちの姿。
それにハッとする。
「あ、部活、終わったんだ。お疲れ。」
「おう。」
赤木くんは隣に座る。
「…春川は、三井と知り合いだったのか。」
そう尋ねてきた赤木くんに頷く。
そういえばこちらは聞いてそのままぼーっとしてしまったのだった。
「…三井は、中学が同じだったんだ。私もバスケ部で、よく練習一緒にやってた。」
「そうか、武石中だったのか春川は。」
木暮くんも納得したように頷く。
「にしても、三井がバスケやめるなんて思わなかったな。」
そう言えば、赤木くんも、木暮くんも、表情を変える。
木暮くんはうつむきながら口を開いた。
「オレもだよ、三井が、あの三井がな。」
「………。」
赤木くんは黙りこんだままだ。
ひなのは暗くなってしまった雰囲気にハッとする。
詳しい話は分からないにしろ、三井のことは、赤木くん達にもわだかまりを残しているのだろう。
「…あ、ねえ、あの赤い髪の子、おもしろいね、赤木くん。」
「ん?」
先ほどから目立っている赤い髪。
部活は終わったにも関わらず、まだボールをついている彼。
マネージャーの人とひたすらドリブルの練習をしている彼に笑みがもれる。
話をふると、赤木は眉をしかめてため息をつく。
「…あいつか。あいつはおもしろいとかそういう奴じゃねえ。うるさい素人だ。素人。」
ため息をつき、嫌そうな表情をしているにも関わらず、どこか嬉しそうな様子も見せる。
それにひなのは笑う。
「楽しそうだね、赤木くん。」
「そうなんだ。赤木のやつ、こうは言ってるけど桜木に期待してるんだ。もっと素直になれば――イテっ!」
「オレは期待なんてしとらん!!」
腕を組みながら言う赤木くんに笑みがこぼれる。
「そんなこと言って。あの子、すごい運動神経よさそうだし、体力ありそーだし。先が楽しみだね。」
「いーや!!断じて期待はしとらん!!むしろ破滅しないか心配だ。」
そう言いはる赤木くんにまた笑いがもれた。
暗くなるよりはポジティブに!
(また部活見にきてもいいかな?)
(おう、今年こそ全国制覇だ。)
(…さすが赤木くん!気合いが違うね。)
“全国制覇”
そんな言葉にですら、三井のことを思い出させる。
三井、今なにしてんのよ。
仲間がいるじゃない、ここに。
130309執筆