「……あー、クラス違ったね!武石中から来てる人と私誰も一緒じゃないや。三井との腐れ縁もここまでだね!」
「――よ。」
「ん?」
聞こえてきた声に三井の方を見る。
すると彼はつまらなそうにひなのを見ている。
「お前、バスケ部のマネージャーやれよ。」
「え、なんで急に。」
ぽかんとしているひなのに、三井はむすっとした様子を見せる。
さっきから何が面白くないんだ。
せっかくの入学式だっていうのに三井は浮かない表情ばかりだ。
「やれよ。マネージャー。」
「だから、なんで。」
「………………別に、」
「は?」
「ばかには分かんねーよ!!」
「はー!?ばかはどっちよ、このバスケばか!!せっかくこっちが聞いてたのに何だその態度!もうマネージャーなんてやらないからね!!三井が言うならやってもいーかなと思ったのに!」
「……あ、」
まったくもう!と怒ると三井はしまった、という表情を見せる。
「わり、」
「……?」
いつもならば、もっと突っかかってきたはずなのに。
「変な三井。」
「………。」
「………。」
変な間があく。
本当に三井の様子がおかしい。
てゆうかそろそろ教室へ移動しなくては。
そう思いながらも三井をじっと見る。
すると彼はようやく口を開いた。
「で、マネージャー、やらねえのかよ。」
「…ほ?」
また振り出しだ。
そんなに三井はバスケ部のマネージャーがほしいのだろうか。
確かにマネージャーがいる方が選手は助かるけど。
「むり、私やるなら選手がいーもん。マネージャーとか、向いてない。」
中学時代には私もガンガンバスケをやっていた。
部活やるからには、選手をやりたい。
しかし湘北には女子バスケはないし、元々高校ではやろうと思っていなかったからまあいいんだけど。
そう言うと、三井はクラス割りを見ながら呟く。
「…そっか、だよな。」
「変な三井。ちょっと、本当に大丈夫?変なもんでも食べたの?」
「ちっげーよ、アホが。」
ガンとこちらの頭をはたき、彼は先に歩き出す。
え、ちょ、三井がこっちの動きを止めてたくせに先に行くとか!
ひなのは慌てて三井の背中を追う。
「三井待ちなよ!こら、」
そう言い三井の背を叩く。
すると三井は振り返る。
「―――んだよ。」
「――っ、」
振り返った三井はロン毛。
彼は険しい表情でこちらを見下ろす。
「さわんな、オレはもうバスケやってねーんだよ。」
「え、うそでしょ、バスケばかの三井が…、」
「もうオレに近寄るな。」
―――み、つい!!
「はっ!!――は、え、ちょ、」
がばりと起きたのはいつもの自分の布団。
ひなのは深く息をはいた。
「ちょ、まじで心臓に悪い、あのロン毛。」
昨日睨まれたのが相当キてるな。
ひなのは頭を押さえる。
本当にこれは、体育館を一度覗く必要がありそうだ。
てゆうか2年って大きいな。
私ももう3年生になっちゃうよ。
どんだけ三井のこと、気にならなかったんだ私。
あんなに、仲良かったのに。
ともかくだ、今日は体育館に行こう!
事実確認をしなければ
(三井がバスケをやめたなんて、)
(思いたくないんだ私は。)
130301執筆