「三井っているでしょ?私仲良くてさ〜、今じゃすっかり会わないけどね!!」


話しのキッカケが何だったのかは思い出せないけど、三井のことを思いだし、友人に話かける。

すると友人たちは顔を見合わせた。


「…三井くんって、三井寿くんのこと?」

「え、やつしかいないよ三井寿は。」


けらけら笑いながらそう言えば、友人はまた言いにくそうに口を開いた。


「三井くん、なんか2年くらい前から怖い人達と町を歩いてるって聞くけど。」

「知ってる知ってる!怖い顔して、近寄りがたいみたいで、学校もサボったりしてるって…。」


それに、と彼女は続けた。


「バスケやめたって…今、バスケ部に顔出さないらしいけど…。」

「…………は?」











と、そんな話を聞いた。

あの三井が?

バスケばかの三井寿が?

自意識過剰のキャプテンで、でもみんなを引っ張る力のある三井寿が?

そんなばかな。

あいつがバスケをやめていいところが残るのか。

いや、残んないでしょ。

少なくとも私は奴のバスケやってる姿が好きだったんだ。

それに、バスケがラブでなんとか先生(実際会うと安西先生は優しい人だった)の元でバスケやりたいって言って、湘北高校に入学したあいつがバスケをやめるなんて、そんなことありえないでしょ。

クラスは離れて、すっかり会う機会もないけれどどうせ奴のことだからバスケしかしていないだろう。

……とか言いながらもそういえば高校入ってまったくと言っていいほど、三井には会ってない。
(私は帰宅部だし、部活の話などあまり耳にしない。しかも私は元々他人にたいして興味がなさすぎるとよく言われる。近くにいれば気になるんだよ?私そんな冷たい人間じゃないんだよ?)

校内で全く会えないならば、久しぶりに様子でも見に行ってみるか。

どうせ、バスケやってるだろうけど。
(体育館に行けば確実だ。)

変なウワサ立てられちゃって。

バスケ部で何やってんのあいつは。

てか、ほんと三井はバスケのことしか考えてないな。

ぷぷ、と笑う。

ウワサなんてあてにならないっていうのはわかっている。

だって、(しつこいようだけど)あのバスケばかの三井がバスケをやめるなんて。

天変地異だよ本当に。

もし本当なら大雨降って、雷も落ちて大雪も降っちゃうだろう。

あれ、でも言われてみれば本当に三井とは全く会わない。

クラスが違うとは言えども、廊下で会うくらい、あっていいはずなのに。

会ったのは、本当に入学してしばらくの間だけ。

ふと友人の会話が甦る。

怖い人達と町を歩いて?

近寄りがたくて?

学校サボり?=だから会わない?


ひなのは動きを止め、立ち尽くすが、わははと笑う。

いやまさか。

一人でけらけら笑いながら歩いていくとすれ違った人に変な目で見られた。
(思いだし笑いって周りの人が驚くんだよね。)

やっぱり一度体育館に確認に行こう。


そう思い再び歩きだしたその時、なんだか聞き覚えのある声が聞こえてそちらを見た。

そしてそれと同時、彼女の動きは固まった。


「三井?」

「…ひなの。」

「え、うそ久しぶり!」


ウワサをすればなんちゃら、久しぶりに会った三井は、前より髪の毛が伸びてロン毛になっていた。

その姿に彼女は笑う。


「ぷふっ、どーしたのその髪の毛!延び放題!?そんな髪してどーしたの!!」


けらけら笑って言えば、何かしら反論されると思っていたが、彼はそんな素振りも見せない。

いつもならば、「ほっとけ。やめろっ!!」と意地になるはずなのだけれど。

三井は浮かない顔をして、こちらをちらと見る。


「うるせーな…。」


テンションの低いその言葉に首を傾げながらも、彼女は話かける。


「まさか勝つまで髪の毛は切らねーとかそうゆう感じ?でもバスケやる時どーすんのそれ。髪の毛しばってやるの?それはそれで可愛いね〜!」


「──黙れよ!!」


突然そう怒鳴られ、びくりと肩を震わせる。

ぽかんとして顔を上げれば、険しい表情をしている三井の姿。

からかわれた事に怒っているのだろうか。

それにしても彼に今までにこんな顔で睨まれたことはない。


「…ちょ、そんな怒鳴らなくても…ご、ごめん、」


謝罪を入れて、気まずくならない内に口を開いた。

「…ねぇ、そーいえばクラス遠くなってからほんと会わないよね!近いうち、体育館行こうと思ってたんだ!どうせ三井はバスケしてるだろうし。知ってる?三井変なウワサ流れてるんだよ。なんか――「三井、」

自分の背後に現れた人に驚く。

振り返れば、強面の男子。

三井を呼んだ人は、こちらを軽く睨み付けてくる。


「誰だ?こいつ。」

「───、「中学が同じだった奴だよ。」


驚いて声の出ない自分のかわりに三井が答える。

おい、そんなさらっと言うだけかよ!

ずっと同じクラスだったし、私は女バスで三井は男バスでよく話してたでしょう!

それに高校の入学式のときバスケ部のマネージャーやれってえらそうに言ってただろ!

そんな思いは口には出ない。

言おうにも、動くことができなかった。

三井はこちらをもう一度だけ見る。

そして、強面の男子と共に去っていってしまった。

ぽとんとカバンが落ちる。

いやいや、まじか。

え、見間違い?

兄弟?

そんなまさか。

とりあえず明日はきっと最悪の天気だろう。














久しぶりに会った友人は不良になっていました













(いやいやまさか!ほんとに三井がバスケやめたの!?)

(怖い顔して怖い人といるけど!!)

(誰か嘘だと言って!)

(私が知らない間何があったの!!やっぱ夢!?)








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