部活が終わった後の静けさが体育館を包む。

その中で、ダムダムとボールをつき、レイアップシュートを決める花道くんを見ながら今日のことを振り返る。

なんか今日は濃い放課後だったなぁ。

いっぱいいろんな人と話するのって楽しい。

バスケ部の子とはほとんど話できたし。

ほんと充実してるなぁ。

って、もうこんな時間。

まだシュート練習をしようとしている花道くんに声をかける。


「おーい、花道くん、今日は終わりにしよっか。」

「は、はいっ!」


にへらと笑う花道くんにひなのも微笑む。


やっぱ花道くんはバスケうまくなるよ。

ほんと。

そう思いながら片づけをする。

ボールをカゴに戻し、モップをかける。

ああ、ほんと懐かしい。

こんな遅くまでバスケやるのもほんと懐かしい。

中学のときは毎日よくやったなあ…。

そんなことを考えていると、花道くんが不思議そうにこちらを見ている。


「どうしたんすかひなのさん。」

「あ、ごめんごめん。なんだか懐かしくなっちゃって。」


笑ってそう言えば花道くんはこちらをじっと見る。


「ひなのさんは、本当にバスケがウマイですよね。」

「え、そ、そうかな。」

「そうですよ!あのルカワをギャフンと言わせる上にプレーが華麗っす!!」

「あはは、だからそんな誉めるなってー。照れるー。」


花道くんはボールを倉庫にしまい、そしてこちらを見る。


「…ひなのさんは、なんでオレの練習に付き合ってくれるんですか?」

「え?」

「イヤ、そのっ!嫌とかそーゆうのでなく、いつもこんな遅くまで…。」


わたわたと慌てる花道くんにひなのは微笑む。


「んー…、なんで、か。そうだなあー、おもしろいからっていうのもあるけど、やっぱ楽しいからかな!自主練て、一人でやるより二人だもの。私が中学のときにはね――、」




















「おいひなの!今日から自主練しよーぜ!!」

「えっ、」


ひなの、三井中学一年生


「えっ、ってなんだよ。あほ面しやがって。」

「あほ面!?どっちが!」

「じゃーなんだよ。こんな顔してたぜ。」

「ほんと三井むかつく。」


ひなのがそう言えば、三井はムッとする。


「むかつくとか言うのはこの口かー!!」


三井はひなのの頬を引っ張る。


「むむむ…!ばかみひゅいはにゃせ〜!」

「だはは!何言ってっかわかんねーぞ!!」


ひなのはカチンときて、ここぞとばかりにやり返す。


「ぐぐぐ…やみぇほ〜!」


互いに頬を引っ張りながら睨み合っていると、部員たちは次々と荷物を持ってでていく。


「おー、三井先に帰るぞー。」

「じゃーねーひなのー。程々にねー。」

「痴話ケンカはよそでやれよー。」

「また明日ー。」

「ぐぐぐ、」

「むむむ、」

「お前ら最後にちゃんと電気消して戸締まりやれよー。」


ぱたん。


「ハッ!三井最後になっちゃったでしょ!!戸締まり係になっちゃったよ!」

「別にそれ位いーだろーが。」

「もー、鍵返しに行くの怖いんだから!」

「ぷっ、怖えーのかよ。」


バカにしたような三井の顔にひなのはムッとする。


「なによ!」


ズビシ!と彼の足を蹴る。


「なんだよ!いいじゃねえか、鍵くらい一緒に返しに行けば。」

「………。」


ひなのはじと目で三井を見る。

こいつ変な所で紳士ぶるんだよね。

じっと三井を見ていると、彼はなんだよ、と見返してくる。


「べつに。てか、自主練て、」

「おー。だってひなのスリーポイント入るようになりてーって言ってただろ。」

「うん、確かに言ったけど。だって、今の女子バスケに足りてないの、シューターだし。」


そう言えばら「だろ?」と笑顔を見せる。


「だから、オレらでこっそり自主練して、みんなをあっと言わせてやろーぜ!おもしろくね?」

「……そうだね。うん、そのアイディアのった!!」

「よしきた。」


元々シューターのポジションを狙っていこうと考えていたんだ。

一人で練習するよりも一緒に練習した方が楽しいし競い合うからきっとうまくなる。

三井と二人でニヤリと笑う。


「よし、やるぞ三井!」

「おう、よし!やるぜひなの!」


この日から、引退するまで二人の自主練習は続けられた。

そして今現在。

三井は、バスケットをやっていない。

バスケのことを忘れようとして、深く傷ついて。

アイツは今、暗闇にいる。














「…ひなのさん?」


花道くんに声をかけられてハッとする。

そして彼を見れば、花道くんはわたわたと慌てだす。


「ど、どうしたんすか。な、涙が、」

「――え?あ、」


しまった、なにか油断してしまった。

三井のことに感情移入しすぎた。

ひなのは涙を手で拭い、へらりと笑う。


「あは、ごめん花道くん。なんか昔のこと思い出しちゃって。」

「昔のこと…?」

「まあ私が中学のときのことなんだけどね。私中学のとき、今みたいに毎日遅くまで自主練習してたんだ。その時一緒に自主練してたやつがさ、湘北にいるんだけど…怪我してバスケやめて、今、荒れてるんだ…まだ、きっとバスケやりたいんだろうけどね。」

「………。」

「なんか花道くんとこうやって練習してるとあの時のこと思い出しちゃって…、ごめんね。」

「イヤっ!!そんなことないっすよ。ひなのさん優しいっす!!ひなのさんにこんな心配かけてるそいつの気が知れないですよ!!」

「あはは、ありがとー花道くん。私、あいつが不良やめてバスケ部戻るの諦めてないから。だからもし、戻ってきたら…花道くんとはチームメイトだね。」

「ふっふっふ…どんなヤツが来ようともこの天才桜木に叶うはずありませんよ!!ははははは!!」

「へへへ、そうかもね。花道くんと三井が一緒にプレーしてるの見るの、楽しみだな。」

「オレに手伝えることがあれば何なりと言ってください!洋平たちにも手伝わせますから!」

「あはは、水戸くんたちの許可なしに決めて大丈夫なのー?」


ひなのがそう尋ねれば、彼はキメ顔になる。


「ひなのさんはオレのステキな先輩でダチ、ですから!」


その言葉にひなのは嬉しくなって微笑む。


「うん、そうだね、花道くん!」













涙ぽろり、のち笑顔














(なんか花道くんと話したら気持ちが前向きになったよ!私がんばるね!さすが花道くん!)

(そうですか!?へへへ、ひなのさんが喜んでくれてよかったです。)

(へへへ、花道くんと仲良くなれてよかったー。)

(オレもですよひなのさん!キョーシュクです!!)





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