ダム、ダム、とドリブルの音が体育館に響く。

久しぶりの1on1、久しぶりのこの高揚感。

バスケやるのはやっぱりワクワクする。

ドリブルをつくだけで、テンションは上がってきた。

そして目の前のルカワくんを見る。

彼はバスケにまっすぐだ。

上手くなろうと常に上を見ている。

うん、こーゆう子とバスケやんの、好きだな。


ダム、ダム、


「よし、やるよ。」

「――!」


そう言ったと同時に、ひなのは足を踏み出す。

しかし、やはり期待のルーキー。

ひなのの行く先をよんでコースを塞いでくる。


――そう、簡単には抜かせてくれないよね。


ひなのは踏み出した足の向きをキュッと変え、くるりと回る。

そしてそのまま無理矢理交わして進む。

ドリブル一つでルカワくんを置いていこうと思ったが、彼はそれについてくる。

でかいだけあって、威圧感は半端ない。

そしてでかいだけでなく、スピードもある。

それにひなのは頬が緩む。

そのままドリブルをしてゴールへ向かおうと足を進めようとすると、彼の足であっという間に前に回り込まれる。

それに気づいて、ひなのはふっと笑うとドリブル一つして後ろに下がる。


「!?」

「油断禁物、だよ。」


ひなのはボールを放つ。

そのボールはキレイに円を描いて、


「スリーポイントシュート!?」


パスっ


「――私が先取点。」

「すっごいです!!すごいですよひなのさん!!ルカワのヤローブチのめし作戦大成功ですっ!!」

「すごい…、1on1でスリーポイントっていうのもアレだけど…流川を交わしてのシュートがあんなに簡単に決まるなんて…。」


ひなのはにへらと笑う。

スリーはほんとたくさん練習したからね。

しかも、練習相手があいつだったし。

毎日競うようにシュート練習したな。

それに、でかい人との1on1なら、それなりに、戦い方があるもんね。


「いやー、でも決まってよかった。ブランクあっても入るもんだね。」

「まだまだ。これからっすよ。」

「――うん、わかってるよ。」


ひなのはにこりと微笑んでルカワくんにボールを渡す。

するとその瞬間、彼の姿はひなのの背後に移る。


「――はやっ、」


彼はそのままドリブルをして一気にゴールへと向かっていく。

油断したわけではないけれど、やはり彼のスピードには目を見張るものがある。

ルカワくんの横を走り、なんとか前へ回り込む。

彼の視線がゴールに向く。

――これくらいでは騙されない。

フェイクが一つ、また左にフェイク一つ、そしてボールを一つつき、彼は一気に抜きにかかってくる。


「――まだまだ!」


手を大きく広げ、腰を下げ、ルカワくんのコースを防ぐ。

しかしそれと同時に、しまったと目を開く。

彼はボールを一つついて、それしてそのまま流れるようにジャンプする。

その一連の流れが軽やかすぎて、シュートかフェイクか読みきれなかった。

ひなのとルカワくんの身長差はかなりある。

ジャンプ力に自信はあるけど、彼ははるか上を跳ぶ。


「くっ、」


パスっ、

ルカワくんのシュートが決まり、ひなのはふぅと息をつく。

そしてルカワくんに視線を向ける。

彼は変わらない表情のまま、口を開く。


「油断禁物。」

「ぷふっ、言うねー。やられたよ。」


微笑んでそう言うと、彼はまだ納得しなさそうな表情でこちらを見る。


「まだ、1対1。しょーぶはまだ。」

「そーだ「おわりおわりおーわーりーだーっ!!」

「うわっ、びっくりした。」


返事をしようとすれば言葉を遮られ、それと同時に花道くんが自分の前に立ちはだかり、一瞬でルカワくんが花道くんで見えなくなる。


「もうおわりだっ!!ルカワてめー調子に乗るなよ!!」

「なんだ、まだしょーぶはついてねえ。邪魔だ。」

「ダメだ!!ひなのさんはオレと練習するタメにいるんだっ!!ルカワは帰れ!!オレの番!!」

「うるせーどあほう。先輩との初心者練習はどーした!」

「はっはっは!!カレイに今日は終わった!!ねっ!!アヤコさんっ!!」

「そうね。」

「ホラみろルカワめ!!」


わいわいギャーギャー。

二人で盛り上がる彼らにひなのは額の汗を拭いながらも頬が緩む。

久しぶりの緊張感に、すっかり満足してしまった。

それにしてもルカワくんはすごい人材だ。

あんなセンスのいいシュートを見せられると彼が紛れもなく天才だと思うしかない。
(花道くんにそれを言えば「そんなことないっ!!」と怒られそうだが。)

これがまだ中学から出てきたばかりの子だとは思えない。

まだまだ彼は伸びる。

そんなことを思いながら二人の言い合いを聞いていると、マネージャーの彩子ちゃんに声をかけられる。


「…センパイは桜木花道と仲良しですね。桜木があんな必死に…。」


ルカワくんに早く帰れ、早くひなのさんと練習すんだおめーは邪魔だと言い続けている花道くんを一度見てひなのは微笑む。


「あはは、仲良くなったのほんと最近だけどね。なついてくれて。可愛いね、花道くん。」

「か、可愛い…?あの桜木花道が…。」


ぽかんとする彩子ちゃん。
あれ、なにか表現間違えたかな。

いや、でも。


「花道くん、可愛いよー。」

「そっ…そうですか!?」

「うん。珍獣みたいで可愛いー。」

「…珍獣。」















可愛いの定義



















((可愛いって、しかも珍獣って、不思議な人…。))

(おーい、花道くん、バスケしよー。)

(ぬっ!は、ハイっ!!ひなのさんっ!)

(オレとの勝負は。)

(あ、そっか。うーん、でもまた今度ね!とりあえず引き分けってことで!楽しかったねー。あ、そーいえば名前聞いてなかったね。私春川ひなのっていうんだ。)

(流川、楓っす。)

(よろしくー。)

(い、今さら自己紹介。ひなの先輩やっぱり不思議な人…。)










*****
バスケの表現、難しい。そしてバスケ経験はないので、なにかおかしくても見逃してください…!





130312執筆





×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -