部活が終わり、先ほどまで騒がしかった体育館は静かになる。
しかし、部活後の練習で花道くんがドリブル、パスの練習をマネージャーの彩子ちゃんとやっている。
桜木軍団や晴子ちゃん、部員たちは帰っていった為静かである。
彩子ちゃんとの個人練習の間は特にやることもなく暇をもて余す。
ぼーっとしながら、自分もウォームアップのつもりでボールをつき、動いている。
そんな中ふとドリブルの音がもう一つする方を見る。
花道くんの他にまだ一人残っている部員。
――花道くんが目の敵にしているルカワくんだ。
彼はまさしく華麗に一人練習をしている。
うん、華麗だ。
じーっと見ていると、バチリと目が合う。
「――あ、ごめん。見すぎた。」
「イヤ、別に。」
クールな人だ。
プレイを見ていた時も思ったが、彼は熱い部分も持っているが、見かけがとてもクールだ。
彼を追っかけしている女の子たちもいるみたいだし、すごいなぁ。
モテるんだなぁ。
と、また見すぎていたようで、ルカワくんはこっちへ視線を向けた。
「はっ!ごめん!!」
「イヤ、別に。」
さっきと同じセリフだ!
お、怒ってる?
じっと見られて気分がいいはずがない。
しまったと後悔するがそれはもう遅い。
もう一度謝ろうと口を開きかけた時、彼が先に口を開いた。
「先輩、バスケやるんすよね。」
突然のその問いかけにひなのは一瞬考える。
この後花道くんと練習するから、バッシュをはいてスカートの下にジャージを着ているのだ。
おまけにさっきからダムダムついていれば一目瞭然であろう。
「えっ、あ、まあね。」
そうどもりながら答えると、ルカワくんはこちらをチラリと見ながら言う。
「――ウマイすね。どこでバスケやってたんですか。」
「え、あ、私?」
「アンタしかいねー。」
そう無表情で言う彼に、誉められているのか、と驚く。
そして遠くから花道くんが「ひなのさんになんて口の聞き方しやがる!!ルカワ!!」と叫んでいるが、ひなのはへらりと笑う。
「私、武石中だよ。」
「武石中…。」
そう呟く彼に、ひなのは笑う。
「女子バスケはそんな強くなかったんだけどね。あとちょっとで全国ってとこで負けちゃった。…でも私の友だちで、全中MVPがいてね。そいつと練習してたから、」
「おい!!春川、オレと練習してたおかげでお前もスタメンだな!!」
「うわ、うざ、スタメンなったのは私の実力!」
「わははは!まだオレからボール奪えねーやつが吠えてやがる!!」
「むっかー、三井はそーゆー自意識過剰直しなよね!三井だって私よりちょーっとだけ早くスタメンになっただけでしょ!私だって――」
「うお、」
スパン、
「私だってスリーの正確さには負けないんだから!!そんで私の勝ちっ!」
「ず、ずっりー!!今のはズルい!!」
「バスケの世界にズルさは必要よ!」
「――先輩?」
「あ、ごめん。ちょっと飛んでた。ともかく、まあまあがんばってたからなー。あはは。」
と、昔を懐かしんでいると、ルカワくんはこちらから視線を外さない。
なんだろうと続きを待っていると、彼は無愛想なまま口を開く。
「1on1、」
「ん?」
「1on1、アンタと。」
その言葉に思考回路が一瞬止まる。
「…え、私?でも、私今は現役じゃないし。」
「やる。」
そう言ってボールをつき始め、こちらを挑発するような視線で見てくるルカワくん。
そのような挑発的な視線に、ぞくぞくする。
どうしようかと思う反面、懐かしいこの緊張感にワクワクしてくる。
ひなのはブラウスのそでをまくり、にやりと笑う。
「いーよ。なんか、おもしろそー。」
彼の視線はバスケにまっすぐだ
(でも、そんな期待しないでね。)
(全然いーっす。)
(…なんか、凄いことか始まっちゃったわね。)
(ひなのさん!!ルカワのヤローなんでブチのめしてやってください!!)
(アンタは基礎をやるっ!!)
130311執筆