まさかの兄妹事件が終わって数分後。
ひなのはあることを思い出す。
「あ、そーだ。」
練習が終わったあと、今日も居残りで練習すると言う花道くんにひなのは自分も残るということを休憩中に伝えるの、忘れてた。
さっきは(兄妹事件で)頭から飛んでしまったから。
それを伝えると彼はにかりと笑う。
「本当ですかひなのさん!!」
「うん、私もなんかバスケやりたい病が出てきちゃった。」
「よーし!!やります!!やりますよ!!この天才桜木!!鬼のようなゴリのしごきも耐えてみせますから!!」
ゴリ…その言葉にぷふ、と笑いがもれる。
ゴリというのはまさかの赤木くんのことで、花道くんは一年生だというのに赤木くんに向かって、ゴリと言い放つ。
そして木暮くんはメガネくん。
なんてまんまなネーミングなんだ。
(というのは心の中にしまっておいたけど。)
てゆうか、メガネくんって…!いいのか木暮くん!!
初めて聞いたときには目を丸くしたものだ。
いやでもほんとおもしろい。
笑いを堪えていると、未だしゃべり続けている花道くんの背後に、噂の赤木くんがぬっと現れる。
「誰が鬼だ。このたわけが。あんな練習まだまだぬるいわ!!」
「うおっ!!ゴリ!急に背後に立つな!!人間じゃないからわからん!!」
「だーれーがー人間じゃないだ!!桜木!!」
「イテテ、イテッ、イテテ!!」
耳を引っ張られる花道くんに対して赤木くんの表情は険しい。
それにまた笑いが込み上げてくる。
「花道くんがんばれー。」
そう声をかければ、彼はピュッと姿勢を正し、「休憩中でも練習をする男!天才桜木いってきます!!ハルコさん見てて下さいね!」とボールを手に走っていった。
その様子を見て笑っていると、赤木くんが申し訳なさそうに声をかけてくる。
「…やつが、迷惑かけてないか?」
その言葉にぽかんとする。
「迷惑って、え、別に大丈夫だよ。どうして?」
「…練習後にあいつが世話になってるみたいだからな。やかましいだろ、あの男は。」
一瞬ぽかんとする。
きっと花道くんはコッソリ残って練習しているつもりなのだろうけど、赤木くんにはバレていたようだ。
花道くんに対しては厳しい面が多い気がするが、期待も大いにしているんだと思う。
愛情の裏返し、なんだろうな。
迷惑かけてないか、なんて。
まるで花道くんの父親だ。
なんて言うとやめろと嫌がられそうだけど。
そんなことを思いながら、ひなのは微笑む。
「全然!私がバスケしたいから一緒にやってるんだよ!」
「そうか…いや、ならいいんだ。」
「ぷふ、赤木くん花道くんのお父さんだね。」
先ほど思ったことをつい口にしてしまった。
ハッとすれば、やはり眉間に皺を寄せる赤木くんの姿。
「…やめろ。あいつの父親なんて勘弁だな。」
予想通りのそのセリフにひなのは笑った。
「あはは、楽しそうだね、ほんとに。」
「…まあな。」
むすっとしながらもそう言う赤木くん。
「赤木はこういう所で素直になれないんだ。」
木暮くんがさらりとそう言うと、ひなのは確かにそんな感じだ、と笑う。
木暮くんのそんな言葉に赤木くんは否定の言葉を飛ばす。
と、そんな時、休憩中にもボールをついていた花道くんが赤木くんに声をかける。
「おいゴリ!休憩終わりだぞ!!とうとう時計まで読めなくなったのかっ!?」
「やかぁしいわ!!お前という男は!!ちょっとは静かにできねえのか!!」
「自分のミスをなすりつけんなよゴリ!」
「おーまーえーはー…!!」
「おいっ、赤木!練習しようぜ!時間がなくなるぞ!」
木暮くんの言葉に赤木くんはハッとしたようで、練習を再開させた。
賑やかに練習する彼らを見てひなのは微笑む。
バスケ部、楽しそうでいいな。
普通に、うらやましく思った。
これが彼らの日常なんだろうけど。
(にしても練習中にあんなおしゃべりするなんて花道くん凄いなー。)
(あいつ体力だけは底なしにあるからな。)
(疲れ知らず?つよー。)
(いや、単なる体力バカ。)
((そーそー。))
(君ら友だちでしょ。)
130310執筆