「ぎゃはははは!!」
「おい花道ぜんぜん掠りもしねーなー!!」
「だー!!うるせーっ!!」
体育館に笑い声と怒る声が響く。
笑ってるのは、水戸くんたち。
怒っているのは、花道くん。
花道くんの部活を見にきて、花道くんの姿を見て、笑う水戸くんたちに、こちらも笑いが移る。
(初心者である花道くんの動きは凄いという面もありつつ、ハチャメチャで笑える所もあるのだ。)
そんな彼らを諭すのは可愛い女の子。
(この前、花道くんがニコニコしながら手を振っていた子だ。)
「もう、洋平くんたちダメよ。桜木くん、がんばってるんだから。」
「晴子ちゃん、だって花道のヤロウあんなおもしろいんだぜ!?」
「うーん、確かにおもしろいけど…。」
あれ、花道くんの味方じゃないのか?
そんな思いがひなのの頭に微かに浮かぶ。
しかし、数秒後には「やっぱりだめよ!!お友だちなんだからからかわないで応援しなきゃ。」と水戸くんたちに話をしている。
なんだこの子、可愛いな。
「――でもひなのさんも思いますよね、花道がおもしろいって。」
「え?」
まさかの話をふられるパターンだ。
全員がこちらを見ていることに気づき、ひなのは「うーん、」と唸る。
「そうだね、花道くん一生懸命で、がんばってる姿はすごくスキだよ。」
「「おお!!」」
「さすが天使!花道の味方だ!!」
彼らにまで天使と呼ばれ、若干複雑な気持ちになる。
天使って、天使って、なんか響きは嬉しいけど私そんな慈悲深い人になりきれないんだけども。
とまぁ、それは置いといて、続きを口にする。
「――確かに行動はおもしろいかな。でも、初心者ならではの必死さがあの結果だもんね。みんな、そんな笑ったらだめだよ?」
「おお、センパイっぽい!!」
「センパイですから。」
瞳を輝かせる大楠くんに、にやりと笑う。
それを聞いていた可愛い女の子が目をぱちぱちさせて、こちらを見る。
「センパイ、」
「ん?ああ、私一応三年だから。赤木キャプテンと同じクラスなんだ。」
にこりと微笑んでそう言えば、彼女は目を丸くさせる。
「お兄ちゃんと?」
「そうそう、お兄ちゃんと。」
頷くが数秒後、違和感を感じる。
「…お兄ちゃん?誰が?なにが?」
「あ、えと、私、赤木晴子っていいます。」
「――ん?あかぎ。」
「はい。赤木。」
「え、赤木キャプテンのあかぎ?」
「赤木キャプテンの赤木。」
ニコニコふんわり微笑む彼女、赤木晴子ちゃん。
そしてビシバシ部員を指導する赤木キャプテン。
その二人を交互に見やる。
「…………。」
もう一度、交互に見る。
そしてへらりと笑う。
「あっはっは!!まっさかー!!全然似てないよ!!すこーしも!!赤木は赤木でも、違う赤木じゃない!?どんな兄妹よ!!」
そう大声で言えば、苦笑いの晴子ちゃん。
そしてその隣のにやにやしている桜木軍団。
そしてそしてひなのの背後に影。
「悪かったな、すこーしも似てなくて。」
「あ、あれ、赤木キャプテン。」
振り返れば、黒い影を背負って現れた赤木くん。
ひなのはにへらと笑う。
そんなひなのに赤木くんは言い放つ。
「晴子は正真正銘オレの妹だ!!」
「きゃーっ!!」
「「だーっはっはっは!!」」
「ひなのさんイイぞー。ゴリを怒らせた!!」
余りの威圧感に悲鳴を上げる。
と同時に水戸くんたちの笑い声。
プラス花道くんのセリフ。
「ううううそだぁ!!」
「嘘じゃねえ!!」
「ごごごめん!!赤木くんごめん!!怖い怖い怖い!!木暮くん助けて!!」
「おいっ!!赤木!」
似てない兄妹だっているさ
(び、びっくりした…。)
(ごめんなさい、お兄ちゃんが。)
(全然いーんだよ晴子ちゃん。私が悪かった。それにしてもほんと似てないね。)
(よく言われます。でもお兄ちゃん、顔は怖いけど優しいんですよ。)
(うん、それは分かってるよ、でもほんと晴子ちゃんが晴子ちゃんでよかった。)
(?)
((似てなくてよかったってことだよ。))
130310執筆