「あれ、」

「あっ!!」


バッタリ。

そんな言葉がまさしくぴったりだ。

三井を探すか、と放課後うろうろしようと考え、辺りを散策していたとき。

角から赤い髪が現れた。

そう、誰かといえば彼しかいない。


「ひなのさん!!」

「花道くん。」


ひなのはへらりと笑う。

ちなみに彼のことを花道くんと呼ぶようになったのは、勿論この前一緒に練習をして、一緒に帰った時に下の名前が花道だと知り、そっちの名前を呼ばせてもらうことにしたのだ。
(花道って、すごいステキな名前だと思う。)

花道くんは、笑顔で返してくれる。

しかしその後ろから花道くんと同じく、体格のよさそうな(ふくよかな意味も含む)人たちもやってきた。

彼らはこちらを見て冷や汗を流している。


「お、おい聞いたか!!」

「おう!!聞いたぞこの耳でしかとな!!」

「?」


一体なんのことだろうと首を傾げているが、彼らは話を続ける。


「花道のことを“花道くん”と呼んだぞ!!」

「ああ、しかも親しげに…!」

「あの花道を…、」

「ま、まさか…!」


そこまで言うと彼らはこちらへ質問を投げかける。


「まさか花道の彼女?」

「いつのまにこんな人と知り合ったんだ…。」

「どーりで昨日からウキウキしているはずだ。」

「そーいや、天使が天使がって呟いていたな…。」


何か彼らは勘違いしていないだろうか。

しかも何か絶望したように顔を青ざめ、冷や汗まで流している。

そんな彼らに気づかぬまま、花道くんはニコニコしている。


「あ、あの花道くん。」

「なんですかひなのさん。」

「後ろの…お友だち?なにか変な勘違いしてない?」

「ぬ?」


そう言って振り返る花道くん。

それと同時、花道くんは友だちに囲まれていた。


「こらぁぁ!!花道このやろう!!」

「オレたちに内緒でこんなステキな人と会ってたなんて何で黙ってやがったんだ!!」

「しかも“花道くん”とか呼ばれてよー!!」

「まさか花道に先をこされるとは…!」

「ぬ!?な、なに言ってやがる。」


次々投げかけられる言葉に花道くんも困惑気味だ。

その様子には友だちも首を傾げた。

そして黒髪の男の子がこちらに顔を向ける。


「…花道の彼女ではない?」

「あはは、」


やっぱり勘違いしてる。

それを否定しようと口を開いた時に、花道くんのでかい声にかきけされた。


「オレには晴子さんが…!はっ!まさかひなのさんはオレのことをスキなのか!?そんな、でもオレには晴子さんという人が…!いや、でもひなのさんの気持ちをを無駄にはできない!!――はっ!!まさかこれが噂に聞く“モテキ”…!?」

「あほか。」


ズビシと花道くんの背を叩くと、思ったより勢いがついてしまったようで、彼は前のめりに倒れた。
(あれ、そんな強くやらなかったと思うんだけどな。)

あはは、と乾いた笑いをもらしていると、さっきも話かけてきた男の子がやってくる。


「えーと、花道の彼女じゃなくて、」

「あはは、友だちだよ。それにプラスして言えば、練習仲間、かな。ついこの前からね。春川ひなのです。」


そう言うと彼らはふっ、と笑う。

そして口々にやっぱりなー、だとか、まさか花道に彼女なんて天と地がひっくり返ってもありえねぇな、だとか、など好き放題言っている。

それに、前のめりになった花道くんが勢いよく起き上がり彼らにつかみかかった。


「ふんぬー!!聞いてりゃ好き放題言いやがって!!勝手にカンチガイしやがったのはオメーらだろうが!!」

「なはははは!!怒るな花道」


大笑いするお友だちに、怒る花道くん。

なんだか彼らのやり取りはかなりおもしろい。
(花道くん単品でもおもしろいから、集団になるともっとおもしろいのだろうか。)

つい、笑いが堪えきれなくなってしまう。


「ぷふ、おもしろいねー、君たち。」

「そうですか?えーと、先輩、ですかね。」


一番落ち着いた雰囲気の彼(水戸くんと言うらしい。)が話かけてくる。

それにひなのは頷く。


「うん、一応3年だよ。でも堅苦しいのスキじゃないし、普通に話かけてね。」


にへらと笑いながら言えば水戸くんも微笑む。

それと同時に他のお友だちにも囲まれた。

ふくよかな子が高宮くん、金髪な子が大楠くん、もう一人のひげを生やした子が野間くん。

よし、覚えた。

よろしく、と話をしているとひなのはふと疑問が浮かぶ。


「そういえば、こんなとこで会うなんて奇遇だねえ。三年の教室に何か用?赤木くんたちはもう部活行ったよ。」

「え?」

「ん?」


そう言えば彼らにぽかんと目を丸くされ、逆にこちらもぽかんとしてしまう。


花道くんが不思議そうに尋ねてくる。


「ひなのさん、ここ、一年の棟っすよ。」

「え?うそ、そんなはず…。」


そこまで言って近くにある教室の表示を見る。

そこに書いてあるのは1の数字。


「あれ?」

「あれ、って。」


苦笑いするのは水戸くん。

花道くんは人指し指を立ててずばりと口を開く。


「ひなのさんは方向音痴なんですね!!」

「黙ってくれるかな。」


ストレートに大声で言う花道くんを一喝する。

別に彼の言うことが間違っているとは言わない。

言わないよ?

でも私はまだ方向音痴と認めていない。

例え、中学時代、練習試合に行ってちょっと自動販売機に向かっただけで体育館に帰れなくなったって。

例え、図書室に行こうとして理科室にたどり着いてその上教室に帰れなくなったって。

駅に行くのになぜか2時間ばかりかかってしまったり。

私は、認めない!


「それ、方向音痴って言うんすよ。」

「「「間違いない。」」」


水戸くんがさらりと言い放ち、花道くんたちが一斉に頷く。

わー、ストレートな人たちー。

傷つくー。

そう呟けば高宮くんが口を開く。


「そんなヤワに見えない。」

「ちょ、待って待って。私会ったばっかの上級生!そんなストレートにもの言う!?ふつうは言わないでしょ!」


必死にそう伝えれば、彼らは笑う。


「堅苦しいの嫌だからふつうに話してって言ったのそっちだぜ。」

「そーだそーだ。」

「……。時と場合による!!ばかにするなっ!!」

「「「えー。」」」


若干不満そうな彼ら。

理不尽だと分かってはいるけどこればっかりは…でも理不尽か。

心の中で葛藤していると、花道くんに話かけられる。


「ひなのさん、せっかくなんですからバスケ見に来て下さいよ!」

「んー、でもなぁ。」


三井を探そうと思ったんだけどな。

今日は断ろうか、と思い花道くんに視線をあげる。

すると、すごく、すごーく期待した目でこちらを見ているではないか。
(心なしか目がギラギラキラキラしている。)


――ひなのさん来るかな、きっと来ますよね。バスケ今日も教えてくれるかなー。教えてほしいな。おお、楽しみだ!!早くゴリたちをぎゃふんと言わせるほど驚かせてやるんだ!!よし!!やるぞ!!


彼の心が読める、読めるぞ。

うう、どうしよう。

でも道に迷ってるし…(道というか学校だけど)、花道くんと話したらバスケな気分になってきたぞ。

…まぁ、三井はもう二年もほったらかしてるし、今日も明日もたいして変わらないか。

なら今日はまた花道くんのバスケ見て、自分も体を動かさせてもらうかな。


「うん、いーよ!今日も見にいく。」

「ほんとっすか!!」

「えへへー、うん。」



















桜木軍団に出会う


















(何か用事あったんじゃないんすか?)

(え?あー、うん。でも明日でもいいし。)

(オレたちもバスケ部見に行くんだぜ。)

(え、そうなの?)

(花道をからかいにな!!)

(おーえんしろ!!おーえん!!)

(花道がまともなプレーしてからな!!)

(((ぎゃはははは!!)))

(くそー!!)

(……やっぱおもしろいな。)





130310執筆




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -