6.気がかかり



ゾロと共に怒られたシオンは、あははと笑ってナミを見る。
その後涙ながらにサンジが作ってくれた朝食をとる。
しかしその間にもルフィと視線が交わる事はなかった。
昨日言った事が彼を傷つけてしまったのだろう──それを心苦しく思いながらこの島を早く出ればルフィも忘れてくれるだろう、と考える。
だがしかし、この島の“記録(ログ)”が溜まるのに今日を含め2日かかる。
最低限その時間をここで過ごさなければいけないのだ。
シオンとしては何日いようとこの状況を何とかしようとは思っていない為どうでもいいのだがルフィはそうではないかもしれない。
彼女は今回ルフィ、そして一味とこの島を共に回る気はもうないのだ。

ただ一つ、心残りはあの少年の事である。
彼が今どうやって、どこで過ごしているのかだけは気になる。
だけどルフィ達と共にいると恐らく目立つであろう事から避けたい。
こちらをジーっと見ているナミの視線から何とか遠のこうとするが逃げれない。
さすがナミだ。
そんな事を思っていれば彼女の方から話しかけてくる。


「シオン、私たち今日も島に降りるわ。」

「うん。」

「勿論あんたは待ってる、って言うでしょう。」


こちらの考えを詠んだようなナミの発言に驚かされる。
ついナミの方に視線を向ける。
すると彼女は特に表情も変えずに言った。


「あんたは大人しく船に引きこもってなさい。」

「──!?」


まさかナミにそんな事を言われるなんて思いもしなかった。
いつもあんなに外に出ろとうるさい(と言うと怒られるが)のに。
それがどうやら顔に出ていたようでナミは「…なによ。」と視線を向けてくる。
シオンは目をぱちくりさせながら口を開く。


「…や、ナミが引きこもってろって言うなんて珍しいなと思って。」

「この島でシオンを外に出してもあんたが楽しめないでしょ。だから大人しくしてなさい。」

「…ありがとう?」

「なんで疑問形なのよ。」


むっとした様子の彼女にシオンはへらりと笑う。


「ううん、なんでも。ありがとうナミ。楽しんできて。」


シオンの顔を見てナミはため息をつきながら「船にはサンジくんが残るからね。船番よろしく。」と一言残しルフィ達と散策へと出かけて行った。
昨日船番だったゾロも含め、サンジとシオン以外は全員出かけたようで一気に船は静かになる。
ふとルフィの後ろ姿を思い出す。
ナミに連れられて出て行ったルフィは結局シオンの方を一度も見ずに行ってしまった。
詮索されない事に安堵しながらも、ルフィと共にいない事をさびしく感じてしまう。

前はいくらでも一人で行動する事ができたというのに今ではたったこれだけの事で寂しく思えてしまうなんて。
本当にルフィ達と共に過ごす事に慣れたんだなァと改めて思う。

シオンもまだこの島に降りようとは思っているが表立って動くつもりはないからナミ達が出かけて丁度よかった。
でも船番を頼まれているからな、と悩む。
しかしサンジもいるという事を思い出して彼のいるキッチンを覗きにいく。
きっと今日の食事の仕込みをしている事だろう──どうやって出かける事を伝えようかと考えながらキッチンに入る。


「サンジー、…ん?」


キッチンにサンジの姿がない事に首をかしげる。
いつもここにいるんだけれど…と辺りを見回してみてギョッとする。
サンジはテーブルに伏してブツブツ何かをしゃべっている。


「サンジ…?」


声をかければいつも瞬時に反応してくれるのに全く反応がなくて目をぱちくりさせる。
しばらく様子を見ていても彼はピクリともしない。
その様子を見てシオンはしばらく考え、そして話かける。


「サンジー、ちょっとだけ出かけてくるね。船番お願いね。」

「シオンちゃん、なんでクソマリモ野郎とお出かけなんて…、」


こちらの問いにまるで返してくれない。
そんな事もあるんだなァとのん気にもらし、この様子では聞いてなさそうだから、と彼の側に一筆残しておく。
これで、きちんと言い残してから出た事になる。
うんうんと頷きながら彼女は船を出ていくのであった。







ちょっと出かけてきます。










(いやー、サンジが反応してくれないなんてなァ、珍しく事もあるんだな〜。)
(ぐずっ、シオンちゃん、なんでシオンちゃん…!!)






190727執筆



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