5.しょうがない
ゾロと共に船は戻ってきた頃にはすっかり日が昇っていた。
完全に日が昇る前に戻ってくる予定だったはずなのに…とシオンは隣を見る。
欠伸をしながら立っている我が一味の剣士である。
行きはともかく帰りまでも自ら道に迷おうとするとは本当に恐ろしい。
あれだけの迷い癖があれば至る所で迷うはずだ。
と納得したこの数時間だった。
しかし、問題はゾロの迷い癖の話ではなかった。
すっかり日が昇ってしまったという事は2人の不在が発覚してしまったわけで──シオンは眼前に広がるこの光景にため息を吐きたくて仕方なかった。
(吐きたくても吐く事ができない。)
その理由というのは、
「あらシオン、ゾロ。揃ってお帰りで。」笑っているのに怒っている様子のナミ。
「シオンっちゃんっ…!なんで、なんでっマリモ野郎なんかと出かけっ、ぐずっ、」シオンとゾロが共にいるのを見た瞬間泣き崩れたサンジ。
「よかった、シオン、ちゃんと帰ってきて…心配したんだぞ。」とチョッパー。
「あなた達…みんな心配してたのよ?」と冷静な表情のロビン。
そして、
「……、」
「…ルフィ?」
目が合ったにも関わらず口も開かないルフィ。
いつもであったなら、「ズルいぞ!おれを置いて冒険に行くなんて!」とでも言いながら文句言ってきそうな彼が、何も言わないなんて。
そこで昨日のやり取りを思い出す。
──そうだ、自分の方がルフィを突き放したんだ。
彼の様子を見ながらどうした物か、と少し考えてみるも「しょうがないか。」という気持ちで落ち着く。
今いくら考えた所でこの件に一味を巻き込むつもりはないシオンはここでルフィにフォローを入れたとしても何も解決しない事に気づいた。
ならば話すのは全て終えた時か──(そんな事にはならないと思うが)一味に手を借りる時だと考え至った。
そう考えればルフィが今口をきいてくれなかったとしてもしょうがない、と割り切る。
シオンはへらりと笑う。
「ごめんね、ちょっとお花を摘みに行ってただけなの。」
ほら、と手元に残っていた花を見せる。
それを聞いてゾロはため息を吐くも何も言わない。
それをありがたく思いながらナミを見る。
「…花を摘みに?」
「うん。」
シオンが持つ花を見ながら納得はしてくれているようだがまだ疑いの視線を向けてくる。
その横ではサンジがぐすっ、と泣きながら言う。
「シオンちゃんっ…!なんで、なんでクソまりもなんかとっ、お花摘みになんて…!おれを呼んでくれればいくらだって集めたのにっ!」
「ふふっ、ごめんねサンジ。本当は一人でいこうと思ってたんだけど…ゾロに見つかって。」
そう言えば何故か急に頭を叩かれる。
「いたっ!な、なんで!?」
振り返ってみればカッと目を吊り上げたナミがそこにいた。
「なんで、じゃないっ!まず、なんでみんなが寝てる間にそういう動きをするのよあんたって子は!ゾロが見つけなかったら一人で行くつもりだったわね!?そーゆう事はやめなさい!そんでゾロっ!!」
ガツンと音が響きシオンの横にいたゾロはシオンと同様、頭を叩かれていた。
「…いってェな!!何しやがる!!」
言い返した瞬間、もう一発ゲンコツは追加された。
それをチョッパーやウソップは顔を青ざめて見ていた。
「何しやがるじゃないわよっ!ゾロ!あんたに至っては不寝番だったでしょう!!役割はちゃんと守れっ!もし夜中に敵襲があったらどうしてたのよ!!」
正論をふりかざされ、ゾロはがこめかみに青筋をいれながらも反論する言葉が出てこない。
さすがナミである。
そん事を思っているうちにナミは「あーもう!なんでこいつらはこうなのよ!!」と叫ぶ。
ナミはやはりこの一味の影の船長である。
そんな事を思いながらシオンは苦笑いで返すのだった。
賑やかな落ち着く空間
(なに笑ってんのよ!あんたの事よあんたの!!)
(あははっ、そうか、ごめんね。)
(…もうっ!!)
190725執筆
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