4.だれがわるいのか



「──おいシオン、」

「ん?なに?」


日が昇る前、ゾロと共にゴーイングメリー号を出てきたシオン。
どこに行くんだと問うたゾロに彼女は笑顔を見せ「お花を摘みに。」と言ったわけだが、まさか本当にお花を摘みに、とは思っていなかったようで彼は困惑しているようだ。
そう、今シオンはゾロと共に花畑へと来ていた。
声をかけられた事にシオンが彼を見ると鮮やかな花が咲き誇る中に無愛想な男が立ちすくんでいる姿は中々にシュールである。
そんな姿に彼女はついふふっ、と笑ってしまう──するとゾロは「…なに笑ってやがる。」と彼女が笑った事に眉を寄せた。
それに対してシオンはにこりと微笑むと「なんでもない。」と返し花へ視線を戻す。


「まァ、ここに来るまで正直1人の方が早かったなーなんて事は考えてないから。」

「考えたんだな?」


即返答された事にシオンはへへ、と笑ってごまかす。
本当に正直な話だが、行き先を知らないはずのゾロが先頭切ってスタスタと進むのを止めて方向を知らせるも何故か道を外れていってしまうのには本当に正直、困った。
今までゾロの方向音痴については知っていたつもりではあったが、実際一緒に行動している事はなかった。
迷うなら先頭切って歩かないでほしい。
それが本音である。
方向転換してしまえゾロを何とか引きずりながらやってきたのがこの花畑である。
そして花を選び始めたわけだが、ゾロはその様子を見て不振がっている。


「…てっきり昨日会ったっていう“クソガキ”の所に行くんだと思ってたが、違うのか?」


昨日一味が話していた内容に、間違いはないが、そして石を投げたのはガキ、で間違いはないが…とシオンは苦笑いである。
シオンは花を摘みながらゾロの言葉に返事をする。


「あはは、まァ…人に会うは会うんだけどね。…あの子じゃないよ。」


「そもそも私なんかが会えないし。」と笑いながら言うもゾロは未だ不振がり、こちらから視線を外さない。


「つーか、なんでシオンは石投げられたんだよ。」


それが結局、昨日彼女が問い詰められても答えなかった内容だった。
そう簡単に答えるわけもなくシオンが言い淀んでいれば「そのガキに恨まれる事でもしたのか?」と、どストレートに聞いてくるゾロには苦笑いしか出ない。


「ストレートに聞くよね…まァそれがゾロなんだけど。」

「ばかにしてんのか?」

「違うよ、…石を投げられた理由はまァ…言わないよ。」

「てめェな…、」

「だって、これは私の問題だし、私のせいでみんなが“人殺しの仲間”にされちゃうと嫌だから。だからいいの。気にしないで。だーいじょうぶ。本当に困ったら助けてもらう。ちゃんと、分かってるから。」


そう、みんなが心配しているのは分かっている。
だから、助けを求めるタイミングは自分で選ぶ。
それが必要でなければそれが一番でもある。
そう言えばゾロはため息をつく。


「…大体な、シオンは言葉が少ねェんだ。だからこういざこざになる。ルフィもむくれるしナミもキレる。こっちに心配かけたくねェってんならそれなりに説明しろ。しねェからこうなるんだ。またルフィに担がれるぞ。」


そう諭されるように言われるとシオンは目をぱちくりさせ、そして笑う。


「ふふっ、担がれるのか…それは嫌だなァ。」

「じゃあ、あいつらが心配しねェようにちゃんとしろ。」

「…うん。だーいじょうぶ、ちゃんとする。ゾロ、」

「なんだ。」


シオンはへら、と笑う。


「気を使ってくれてありがと。ほんと優しいよね、ゾロは。」


へらへら笑って言った事が何か気に入らなかったようで「バカにされてる気しかしねェ。」とため息を吐くゾロ。
本気でそう思ってるんだけどなァと呟くもそれはスルーされてしまった。
それにシオンはまた笑う。










ゴーイングメリー号がある海岸から花畑へ、そして高台へと登って来たシオンとゾロ。
この場所からは町、そしてその反対側にはゴーイングメリー号が確認できる。
ゴーイングメリー号を視界に入れたゾロは何も言わないシオンを見る。


「──で、ここはどこだ?ここに何しに来た?」


不思議そうな様子のゾロにシオンは口を開く。


「…ここからだと、町が見えるから。」


そう言うとシオンは摘んできた花をそっと置いて目を瞑り祈る。
その姿を見たゾロはしばらく黙り、目を開いて立ち上がった彼女に声をかける。


「…ここで誰か死んだのか。」


ほんとストレートだなァと笑い口を開く。


「違うよ、ここでは死んでない。…その人のお墓の場所は、私は知らないから。だから町が見えるこの場所から祈って、謝ってる。」

「……。」

「許してはもらえないかもしれないけどね──さ、帰ろっか。もう朝日が昇ってだいぶたつ。もうナミ達も起きてるだろうし。」


何も言わないゾロにシオンもこれ以上何も言わない。
船へ戻ろうと歩き出したシオンの後ろ姿にゾロは呼び止める。


「おいシオン、」

「……。」

「お前、自分が悪くなくても自分のせいにしてるんじゃねェか?そうなるのはお前の悪い所だ。」


その言葉にシオンは一度止まりそしてまた歩き出す。


「──それは私が決める事じゃないから。」


その返事にゾロは静かにため息を吐き、そして歩き出したのだった。












さ、帰ろう









(誰が悪いのかなんて、自分で決める事じゃない。)
(その本人が決める事なんだ。)



190724執筆



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