3.おれはしらん



しんとしたままの船内。
甲板へと出て行ってしまったシオンの後を追ったのはルフィだった。
シオンに何かあるとルフィがいつも寄り添って(半ば無理やり)話をさせ解決させる──だからきっと今回も大丈夫なはずだ。
恐らく全員がそう思いながらルフィが戻るのを待つ。
きっと、シオンと共に戻ってくるはずだ。
だって、いつもそうなのだから。
静かに彼らが戻るのを待っていると、バン!たドアが開きルフィが船室に入ってきた。
その後ろにシオンがいるかと思って顔をそちらに向けるとそこには彼女の姿はなく、むすっとした様子のルフィの姿しかなかった。
それに驚きながら、ナミは彼に駆け寄り声をかける。


「ルフィ…シオンは?」


そう尋ねるとルフィはぴたりと動きを止めた。








「ルフィ、私たち出会ってまだそんなに経ってないでしょう?」

「……。」

「ルフィ達と出会うまで私、結構悪い事もしてきたわ。だから今回のはそのツケが回ってきただけ。ルフィは何もしないで。」








ルフィはぐっと手を握りしめて口を尖らせる。


「……おれは、──おれはもう知らんっ!!」


彼はそれだけ言うとむすっとしたまま深く帽子を被り壁にもたれかかる。
ルフィと共にシオンも戻ってくると思っていた一味には予想外の展開で呆然とする。
まさか、ルフィが言っても何も話してくれなかったというのか。


「おい、ルフィ。」


ウソップが声をかけても「もう知らん!」の一点張りである。
一味は顔を見合わせ息を吐く。
ナミも深く息を吐いて口を開いた。


「…今日はもう様子をみましょ。まだこの島にはいるし、もしかしたら時間が経てば動きがあるかも。」


彼女のその言葉に一味は同意する。


「…そうだなナミさん!」

「きっと、のんびりさんも困惑しているのね。待った方がいいわ。」

「そうだな!」

「ああ、そうしようぜ!な、待とうぜルフィ!」

「……。」


な?と気づかうウソップの言葉にもルフィは反応する事はない。
そんな様子にウソップは息を吐く。
その横でゾロは眠る体制のまま口を開いた。


「自分から言わねェやつは放っときゃいいって言ってんだろ。」

「おいこらてめェクソマリモ!!お前はいい加減にしやがれよ!?人の心が分からねェ機械か!!!」


詰め寄ってくるサンジにうんざりした様子でゾロは文句をこぼす。


「はァ…うるさくて眠れやしねェ。」

「何寝ようとしてんだ!!大事な話だぞ!!」


カーッと怒鳴るサンジに面倒くさいという感情しか沸かない。
そんな事を考えていればナミにま怒鳴られる。


「つーかあんたは今日不寝番よっっ!!寝ようとするんじゃないっ!!」


こんな日に限って不寝番か、とゾロはため息を吐いた。


「お前ナミさんの話を聞け!!」


シオンが心配だからかはしらないが、気持ちを紛らわすかのように先程から妙に絡み、ギャーギャー喚くサンジにゾロは心から面倒だと思うのであった。














日が昇る前の静かな時間。
そんな時間にシオンはベッドからそっと抜け出す。
ナミやロビンが起きぬようにそっとドアを開け甲板に出る。
昨晩は彼女達が心配そうに自分を見ていた事に気付いてはいたが寝たふりをしてナミが質問する事を回避した。
(ロビンに至ってはこちらが寝たふりをしていた事に気づいているような気がしたが。)

外に出ても明るさは変わらず、まだ暗い空が視界に入る。
聞こえてくるのは波の音のみ。
出かけるなら今。
シオンは足を町の方へと向ける。


「──どこに行くつもりだ?」


声をかけられた事にシオンは振り返る。
そこには欠伸をしながらゾロが立っている。
慎重に気配を消してまでいたのに気づかれた事に驚く。
流石というかなんというか。
ゾロはこちらの思いをよんだかのように返事をする。


「昨日のお前が変だったのは間違いねェからな。動くなら夜中だろうと思ってた。それにちょうどおれが不寝番だったからな。ついでに見張ってたら案の定だ。」

「うーん、まさかゾロに行動をよまれるなんて。それにゾロなら放っといてくれるかと思ってた。」


そう返せばゾロは「まァな。」と頷く。


「あいつらはギャーギャーずっと騒いでやがったがな、おれは放っておけと言った。どうせ、お前の事だ…船に引きこもるだろうってな。」


それは外れたようだがな、と言うゾロにシオンはふふっと笑う。


「そうだね。…うん、引きこもろうとも思ったけど、…私にとっても譲れない所はあったから。それだけしたら余計な事はせずに引きこもる事にするわ。」


へら、と笑うも何故かゾロに睨まれる。


「なにゾロ、怖い顔して。」

「おめェはな…そんなんだからルフィにナミにサンジに…絡まれるんだろ。」

「絡まれるって…。」


ゾロの言いようには苦笑いしか出ない。
それにそんなんだから、とは何なのだ。
そう思っていれば彼は何故かため息を吐くと彼女を見る。


「それで、何をしに行くつもりだ?」


そう問われ、シオンはにこりと微笑む。


「──ちょっと、お花を摘みに。」

「…はァ?」


拍子抜けした様子のゾロにシオンは思わず笑ってしまうのであった。









少しおでかけ









(さ、じゃあみんなが起きる前に行ってくるね。)
(お前…アホだな。)
(え?)
(また勝手に行動するとナミに怒鳴られるぞ。)
(ああ…まァね。でもだーいじょうぶ。バレる前に帰ってくるから。)
(おれも行く。)
(…え?)
(お前が一人で動くよりかマシだろ。)
(ゾロ………。でもゾロ今日不寝番だったんじゃ…。)
(もうぼちぼちで夜明けだ。いいだろ。別に。)
(…そうかな?)
(おいさっさと行くぞシオン)
(あ、うん。って違う違うそっちじゃない!なんで行き先知らないのに先にいこうとするの!?)



執筆190722



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