21.5 ちゃんと覚えていて


──sideナミ



ルフィの元へと送り出し、まったくもう、と一息つく。
本当にあの子には困ったものである。
一味はもとよりルフィと少しではあるが気まずくなってしまったはずなのにまたか頭から抜けていたなんて。
あの子の対人スキルは低いのは知っていたけれど重症だ。
(それでも初期よりかは大分対人スキルは上がっている筈だ。)

シオンの後ろ姿を見送りながらため息を吐く。




“キラー”

それは彼女が追われている組織の名前である。
シオンと出会ってから僅か数回ではあるが“キラー”に所属するという敵に会ってきた。
“ロングリングロングランド”でデービーバックファイトに巻き込まれた際に現れた男、そして今回の男たち。
彼らはシオンが1度訪れた場所、何処かで仕入れてくる情報で彼女を追い、どんな場所にも潜入しているらしい。
(後に聞いた話ではアラバスタでも遭遇していたらしい。)

“キラー”に関してはシオンも分からない事が多いらしく、聞いても出てくるのは曖昧な情報ばかりである。
組織の人間は珍しい血を持つシオンを“実験動具”として手に入れたいらしく(考えるだけで胸糞が悪くなる)手に入れる為には手段も選ばない。
“生きていればなんでもいいみたい”と笑って話すシオンに衝撃を受けたのは私だけではないだろう。
そんな彼女を心配するのは勿論であり、できうる限りの事をしてあげたい。
だがそれは中々彼女には伝わりきらない事が多い。
“キラー”の事に関してはシオン自身が一味を巻き込みたくない、と思っているであろう事は分かりきっている。
それは他の事に関してもであり、それは今回の事で浮き彫りとなった。

“人殺し”と言われた彼女は一味に取り繕う事もせず、助けを求めるでもなく、ただただあの少年テオの言う事は事実だと、そして一味には関係ないのだと拒絶した。
シオンの行動にヤキモキするこちらの様子には一切気付いていないのだ。
心配なんて未だにされていないと思っているようであるし。
こちらが手を差し伸べても、いつも彼女は困った顔をするのだ。

だからこそ今回はシオンを深く問い詰める事はせず、勝手に探る事にした。
(結果また勝手に1人で船を抜け出して“キラー”と闘っていたわけだけど。ああもう本当あの子はしょうがないんだから!)

シオンが仲間を巻き込みたくないからという理由で頼らない(頼れない?)気持ちは分からないでもないし、最早クセともいえるその行動はどうしようもないのかもしれない。

それでも私は、私達は何度だって言うんだ。











あなたは独りではないんだから







(とりあえずルフィとしっかり話をしてもらって…、)
(またそれからゆっくり話せばいいわね。)
(全くどれだけ時間がかかるのかしら…。)






201010執筆



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