21.なにをする?



テオとユーリとの会話を終えたその後──テオに「まだ島を出て行かないよね!?」と尋ねられ、ログもまだ溜まっていないからこの島からは出ないと伝えるとテオは「勝手にどっかいかないでよ!?」と言い残すとユーリを引っ張るようにして走り去っていった。
できたら、もし、可能なのならばジャンさんの墓の場所を教えて欲しかったのだがあの言い方だともう一度は来てくれそうな為ここで待つ事にした。

“キラー”の2人はチョッパーの検査を受けた。
あの時の異常なチカラは薬を使った副作用で起こす身体強化らしく、アレを使い続ける事で細胞が壊れていってしまい危険だと思うとチョッパーが深刻な表情で言う。
彼らに今異常な変化はないが、このままあの薬を使い続けるとどうなるか分からないと伝える。
これ以上あの薬を使わない事をチョッパーと約束し、(彼らもあの異常なチカラが湧くあの薬に恐怖感を持っていたようだ。)今の段階で身体異常は特に見られない事から大丈夫だと答えを貰い彼らは安心したようだった。
(使っていた薬の残りはチョッパーの手に渡って調べられる事になった。)
そして彼らは静かに、2人でこの場を去っていった。

最後に彼らは言った。


「おれ達はどこかの島で静かに今までしてきた事を償いそれを背負って生きていく。“不滅のシオン”、」

「ん?」

「お前も、気を付けろ。…お前が1番分かっているんだろう。あそこの、異常さを。」


そう言う男の目は真剣なもので。
かつてのあの場所が頭にちらつく。しかし気を付けろと言われても向こうはこちらを追っている。
そして、自分も。
ふ、と微笑み2人を見る。


「…ええ。そうね。気を付けるわ。…あなた達も、気を付けて。」


彼らの背を見送り、シオンは深く息を吐く。
久しく感じていなかった“キラー”の異常さを改めて身を持って感じてしまった。
彼らの“研究”、いや“実験”は人を人と思わぬものなのだ。
振り返ると一味が深妙な表情をしてこちらを見ていた事に首を傾げる。
しかし少しすると何事もなかったかのように彼らはバラバラといつものように動き出した。
ウソップはシオンが壊しまくったナイフやら何やらの隠し武器を拾ってくれていた。
(さすがにアレらを放置はできないだろと最もな事を言われた。)

サンジはここで食事を、とこの空き地となっているこの場で食事の準備を始めた。
ならばキャンプファイヤーだとゾロが意気揚々と薪になりそうな物を探しに出掛けていった。
ルフィも何か言いたそうな表情をしながらもゾロのキャンプファイヤーという単語で木々の生えている方へと向かっていった。
ロビンはシオン、ナミ、チョッパーの側で本を開いた。

そして、シオンはチョッパーに捕まり、全身チェックを受ける事になった。
ちなみにナミに見張られながらである。
何をそんなに、と思いながらもあるのは少しの擦り傷程度であった為、別にだーいじょうぶだけど、と言ったのだが後ろからナミの圧力を感じながら処置された。
結局それ以上大した怪我は見つからず、チョッパーにオッケーを貰い、ウソップが拾ってくれている壊れた武器を拾おうと振り返ったその瞬間、未だ後ろに控えていたナミに捕まった。


「シオン、今から何をするのか言いなさい。」


突然の質問に動きが止まる。
今から?何を?
今し方まで考えていた事を言うならばウソップの手伝い(手伝いっつーか誰が散らかしたんだと思ってんだよっ!とツッコミを入れられる気がする。)もとい、壊したナイフやら短刀やらを拾うつもりである。
が、


「…正解が分からない。」


今から自分がやる事に正解も何もないとは思うのだが恐らくナミからすればこちらの回答により正解不正解があるに違いない。
しかしシオンの分からないという呟きは勿論ナミにも聞こえていたようで彼女はにこりと微笑む。


「正解も不正解もないでしょ?ほら。言ってごらんなさい。」

「……、」


自分の事なのだから自由に答えていいはずだというのに、とシオンは頬がひきつる。
こんなに圧のある中回答するのが怖すぎる。
しかし答えない訳にもいかない。
シオンは一つ息を吐いてへらりと笑う。
いくら考えてもナミの求める答えとは違った場合は何か注意を受けるのは間違いないのだから迷う時間が無駄になる。
いっそ特に深読みせず返事をするのが正解だろう。
思ったままに答えよう。











「──残念ハズレよ

「……。」

ナミの答えにやっぱり不正解か、とついため息を吐く。
ナミの問題に正解する事は少ないのだから分かっていた。
しかし一体何が正解なんだろうか。
この圧のある表情は何を意味しているのか。
それとも自分はやっぱり何かを見逃してしまっているのだろうか。
1人で勝手に戦ったから?
しかしアレはどうしようもない流れであったし、正直しょうがないと思っている。
それとも怪我を隠しているとでも思われているのだろうか。


「ナミ、ただ壊れた武器を拾うだけだよ。怪我はないし…ナミもチョッパーの診察見てたでしょ?」


そう答えるも圧力のある笑みのままナミはシオンを座らせた。
思わず正座をして何があるのかを待機する。


「ええ見てたわよ。怪我はないでしょうよ。チョッパーが診てくれたんだからね。言いたいのはその事じゃないのよ。」

「えっ、なに?」


怪我以外に何かあっただろうか。
本当にナミが何を言いたいのか分からず戸惑っていればその戸惑いがナミにも伝わったらしくハァ、と深いため息をつかれてしまった。
 

「ほんとあんたには困ったもんだわ。うちの船に乗ってだいぶ経つけど…中々成長しないものね。」

「…どういう意味なの…。」


これは怒られているのだろうか。
確かにこの船に乗ってだいぶ経つがこれでも空気を読めるようになったし、成長した方だと思うのだが。
しかしナミが言うならそうなのだろう。
ナミの言葉を待っていれば彼女は再びため息を吐く。


「…ルフィと、話はしたの?」

「ルフィと?」


ポカンとすればナミは信じられないという表情をする。


「あんた、まさか忘れたわけじゃないわよね?」


ナミの言葉にハッとする。
色々あって、半分忘れていた。
そうだ、最初にこの島に降り立った日の夜──ルフィに何もするなと突き放した言葉を言ってしまったのだ。
あの時は何もするつもりはなかったのだが結局はテオと関わる事になり、ルフィ達に助けられ、彼らが背中を押してくれたからこそテオとユーリさんとしっかり話せたのだ。
そして、ルフィには何も言っていない。
でも、と彼女は口を開く。


「ルフィ、変な様子じゃなかったし、いつもと同じだったから気にしてないんじゃない?だーいじょうぶ。」

「だーいじょうぶ、なワケあるかァっ!!」


ニコッと微笑んだナミは一瞬でこちらに詰め寄ってくる。
それに心底驚いた表情をしていると彼女は人差し指をこちらに向け、額をツンツンとさしてくる。


「あんたはっもうっ!ほんとに分からず屋なんだからっ!」

「いたっ、いたっ、ちょっ、ナミ?」


最後にぶすっと額を突き刺し彼女は言った。

「ルフィだけじゃないっ。私達がどれだけ心配してたと思うのよ!」

「…ナミ?」


先程までは勢いのある様子であったのに徐々に尻つぼみになっていく彼女の言葉。
それに驚いてナミの顔を覗き込もうとすると彼女はガバッと顔を上げた。


「シオンが人殺しなんて、絶対あり得ないって分かってるのにアンタは否定しないは話しかけるなオーラを出すわまた一人で単独行動取ろうとするわで心配ばっっかかけて!!私達は…っシオンが話してくれるのを待ってたのよ!」


その言葉に目をぱちくりさせる。
今回は何も聞いてこないし(ナミの言う通り聞くなオーラは出していたが。)そっとしておいてくれたからきっと気にしていないだろうと思っていたのに。
どうやらそういう事ではなかったようだ。
彼らの思いは少しずつ分かるようになってきたし、話す事もできるようになってきてはいるがまだまだだったようだ。
彼らが先程こちらを見ていたのも、きっと心配されていたからなのだろう。


「…私って、まだまだダメだね。」

「何?今更分かったの?」

「うん、これでも成長したと思ってたんだけど。」


へら、と笑えば「もう、」とナミに優しく頭を叩かれる。













(早くルフィと話してきなさい。ご飯に間に合わなくなるわよ。)
(うん、それまでには戻ってくる。)







ナミにはいつも見守られていたい。

201010執筆



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