8.りゆう



チョッパーの鼻を使って昨日会った少年を探せばいいとロビンの助言で気づいたナミ達。
既にルフィが町の方に走っていってしまった事に大慌てであった。
そんな彼らの事など露知らずルフィは町中を走り回っていた。


「おおーい!昨日の…あ!おれあいつの名前知らねェや!昨日のやつー!!どーこだー!!」


町人から怪訝な表情をされながらも彼がそれを気にすら事はない。
道の路地、屋根の上、はたまた畑の中でルフィは名前も知らない少年を呼び続けていた。
探し回り、辿り着いたのは昨日例の事件があった場所──噴水広場。
ルフィは噴水のてっぺんに軽くジャンプし少し上から周りを見渡す。


「んん〜…いねェなあいつ。どこにいるんだァ?」


そうブツブツ独り言を言っていれば、「おーい、君。」と声をかけられルフィはそちらを見る。
中年の男が手を挙げてこっちだ、と呼んでいる。
それを見てルフィはぴょんと男の元に降りる。
飛んでくるとは思っていなかったようで彼はその様子にびくりとしながらも近くにやって来たルフィを見る。


「…君は、昨日ここでテオと話していたよね?」

「あいつテオっていうのか?おれ名前は知らねェ。シオンに石投げたやつ探してんだ!おっさん、知ってんのか?」


その言葉に男は頷く。


「ああ、昨日私もこの場にいたからね。私はユーリ。テオの今の保護者だ。」

「ふーん。」


興味なさげに相槌を打つルフィにユーリは目をパチパチさせる。


「あっ!あのテオって奴の保護者ならあいつの場所知ってるか!?話聞きてェんだっ!!」

「場所は分かるけど…教えてやる事はできない。」

「!?なんでだよ!」

「君は、彼女…シオンの仲間なんだろう?」

「おう!おっさんシオンの事知ってんのか!?」

「まぁね…。お願いだ、ログが溜まったらすぐにこの島を出ていってくれ。そしてテオには構わないでほしい。」

「だからっ、何でなんだよっ!!」

「あの子は…テオは深く傷ついている。これ以上あの子の傷をえぐらないでほしい。君の仲間に石を投げた事は私が代わりに謝罪する。申し訳なかった。」

「おれは!謝ってほしいんじゃねェよ!なんでシオンが“人殺し”って言われたのか気になるんだ!シオンが人殺しなんてするわけねェ!!」


ルフィの勢いに驚いた様子を見せるユーリ。
静寂が訪れたがそれはまた違う勢いによって破られた。


「──このおバカっ!!」

「うぎっ!!?」


どしゃあ…と倒れ込んだルフィにユーリは動く事ができない。
しかしユーリの存在に気づく事なくルフィをはたき倒したナミは続ける。


「あんたはいつもいつも!1人で動くなって何回言えばいいの!?だいたいねェ!あんたがチョロチョロチョロチョロしてくれたおかげで私達もそれに沿って来ないといけなかったのよ!?もうちょっと人の事を考えろっ!わかった!?」


もの凄い勢いで言い切ったナミに少し遅れてやってきたウソップやロビンはパチパチと拍手する。
そしてハーッと深い息を吐いた彼女はぽかんと立ち尽くしている男に漸く気がついた。


「…あら、どちら様?」

「ど、どうも…。」
















──…


「わっ!それじゃあおじさん、昨日の男の子のお知り合いなの?」


ルフィを見つけたと同時にあの少年の手がかりが見つかったと喜ぶ様子を見せるナミ。
ユーリは未だ倒れ込んでいるルフィと先程まで凄い剣幕であったのに今は笑顔を向けてくるナミに視線を泳がせていた。
彼の視線に気がついたナミは「ああ、」と再び笑顔を浮かべる。


「大丈夫よ、コイツこんなんじゃへこたれないから!」

「そういう問題じゃねェだろっ!」


ウソップのツッコミも入るがナミは気にする様子も見せずユーリに視線を送る。
彼は動揺した様子を見せるもナミの笑顔に促され先程ルフィに話した事と同じ事を伝える。
ログが溜まり次第ここから出てほしい、そしてあの少年テオに関わらないでほしい──その言葉にルフィと同様ナミ達も困惑する事となる。


「テオはもう前に進まないといけないんだ。やっと、やっと笑顔を見せるようになってきたのに昨日また暗い顔をしていた。あの子にとって、前に進むためにもう過去を思い出してはいけないんだ…。だから私もこの事を伝えたくて彼女を探していた。」


どんどん進む話にナミは手で額を抑えて口を開く。


「ちょ、ちょっと待ってユーリさん。今聞いた話だけだと私たちまだ何も分からない。どうしてシオンはテオと会ったらいけないの?」

「会ってはいけない、というわけではないが…、」

「昨日ののんびりさんの様子といい、話を聞いていると何か理由があるようね?」


ロビンがそう問いかけるとユーリは一度口を閉じ、そして視線を落とす。
そんなもどかしい状況に耐えられなくなったらしいルフィはウソップに落ち着けと抑えられていたがとうとう勢いよくガバっと立ち上がる。
ユーリはルフィに視線を向けた。


「シオンの事なんだろ!おっさん!!教えてくれ!!さっきから言ってんだろ!!!おれはっ!!なんでシオンが“人殺し”って言われたのかが気になるんだ!シオンが人殺しなんてするわけねェ!!教えろよ!!」

「……、」


ルフィのまっすぐな瞳に射抜かれ、ユーリは口を開く。


「彼女が…、シオンがここを訪れたのは2年ほど前の事だ。」












この島を訪れた彼女に、かつて何があったのか。











(2年前…、)
(シオンが“赤髪のシャンクス”の船を降りた…あと?)








190805執筆



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