「──三井!!」
「…ひなの、」
まだ廊下をぼんやりと歩いていたらしい三井にはすぐに追いつくことができた。
(近くにいてよかったと安心した。いや、どこにいるか分かんないと…ね、迷うし。)
声をかけると三井はスッと視線をそらしてまた歩き出す。
階段を上がっていく三井に「屋上行くの?」と尋ねてみてもそれに返答はない。
「ね、ちょっと。」
「……うるせーな。」
ぶっきらぼうに、そっけない言葉に首を傾げる。
一体何なんだ。
さっき声かけにきたのは三井だったはず。
と思えばこの態度──何しに来たのよ本当に。
スタスタと階段を上がる三井に黙ってついていく。
ガチャリとドアを開け、屋上につくと三井は座る。
それにならって自分も腰かけると三井は訝しげな表情でこちらを見てくる。
「…何よ。」
「何でついてきたんだよ。」
「何でって、三井が何か用事があったんでしょ。何で出ていったの。」
「……何でもいいだろ。」
そう言ってそっぽを向く三井にむっとする。
教室を出ていった理由はさっき友人達が言った通りなんだろう。
しかし本人がその理由を言わない辺り、なんだかまだ信頼されてないみたいだ。
「…こっちに気を使わなくったっていいのに。」
そう言えば三井がこちらを見たのがわかる。
「だって三井は友達だもん。周りがどう思ったってそれは変わんないよ。三井が私の気持ちを無視して勝手に決めないでよね。」
「ば…かじゃねぇの。」
「………。」
「オレが不良だったのはその通りだし、この二年間ロクなことをしてこなかったのは事実だ。オレがどんな目で見られても自業自得だけど、ひなのまでそんなのに巻き込みたくねえんだよ。逆にオレの気持ちを分かれよな。」
そう言った三井の顔を見ると辛そうな表情。
「じゃあ私はもう三井とは話さないし、近寄らない方がいい。そういうこと?」
「っ、」
視線をそらす三井にムッと頬を膨らませると、呆れたように息をついて口を開く。
「……三井はアホだね。」
「なっ…!!」
「私の友達は私が決めるの。周りの人じゃないよ。」
三井は目を見開いく。
その様子にぷぷ、と笑って続きを話す。
「それに、みんなには三井はいいヤツだって言っといたからもう大丈夫だよ!」
「………は?」
「だーかーらー、三井は不良だったけど私の友達だし親友だから大丈夫だって、そう言っといたから!うちのクラスいい人ばっかだしもう大丈夫だよ!」
自信満々でそう言えばポカンとした様子の三井。
ポカンとした顔を数秒続け、そして次の瞬間三井は笑い出す。
「はははは!何だよそれ!おま、ほんとアホだな!」
大笑いの三井に少しばかりむっとする。
三井のために演説してきたっていうのになんて態度だ。
もう、と頬を膨らませているとしばらくして笑いが収まったらしい三井は微笑んだ。
「…ありがとな、ひなの。」
その言葉にひなのはにんまりとして頷く。
「──うん。」
関係は少しずつ作り直せばいい
(にしても恥ずかしいヤツだな、お前。)
(えっ、何が?)
(クラスメイトん前で話したんだろ、ほんと恥ずかしいわ。)
(だ、誰のためにやってあげたと…!)
(頼んでねえだろ。おせっかい。)
(むっ!!)
141201執筆