──side三井






俺のいない間、こいつは何をしていたんだ?


それが、バスケ部に復活してから疑問に思ったことだ。

──“こいつ”というのは同じ中学でずっとバスケで張り合ってきたひなののことだ。

かつて彼女が同じ高校に進学すると知って心踊ったのは昔の話だ。

こいつが女子バスケ部のない湘北に来た理由はよく分からないが恐らく適当に「近いから」とかそんな理由であろうことは察しがついている。
(ひなのから俺の望んでいる返答がくるなど全くと言っていいほど期待できない。)

そんな話はともかく、俺が怪我をしてバスケ部から離れていた(決してグレていたとは言わねぇぞ。)のは約2年半ほど。

そしてひなのがバスケ部に入り浸るようになったのは三年生になる少し前くらいだと聞いている。

まだ現在春といわれる時期であり、そう時間は流れていないということだけ言っておきたい。

そう、僅かな時間であるにも関わらず彼女はバスケ部に物凄く馴染んでいた。

いや、馴染んでいるというよりかバスケ部に慕われている。


「ひなのさ──ん!!見てください天才桜木の新技を!!」

「おおお!!スゴい!!」


目の前で赤頭の桜木と仲良さげに話をするひなのに、桜木のなつき方に、疑問を感じるばかりである。

しかしそれは桜木に限ったことではない。


「ひなの先輩、勝負。」

「また来たの流川くん!ほんと!ほんと休もう?」

「…先輩早く怪我治してくれ。」

「あははーうんうん。怪我はだいぶいいから、大丈夫。」


嫌みなルーキー流川とも仲がいいらしく、気がつけばいつも勝負を挑まれている。

確かにひなののバスケの腕は鈍ってはいないようで、あいつのバスケの腕は俺は充分に分かっている。

だから流川に勝負を挑まれているのに疑問を感じなくもないが。

だがあそこまでひなのにこだわる必要はあるのかと不思議には思う。

こいつらだけでなく他の奴らも妙にひなのになついている。


「先輩、今日はどうでしたか?」

「うーん、最近調子いいよね、ヤスくん!」

「先輩の助言のおかげです。」

「はは、照れるな〜。」




「ひなのさん、アヤちゃんにはナイショですよ!?」

「ふんふんナルホド、彩子ちゃんの為にプレゼントを」あああやめてくださいって!!」




「春川、怪我の調子はもういいのか?無理はするなよ。」

「あはは木暮くん心配性。大丈夫だから!」

「油断するとよくないぞ。頭だったんだからな。」

「赤木くんまで…。」 


ともかくバスケ部の後輩から同級生までが異様に仲がいいのだ。

あいつ、本当に短い期間で何してたんだよ。

本人曰く俺を探してたとかいうけどあれだな、ひなのの悪い癖が出たに違いない。

流され流されまくる+おせっかいが発生したのだろう。

その結果バスケ部に馴染みまくることになったのだ。
(その経緯はよくわからないが)

しかしこいつは本当に俺を探すつもりがあったのかと疑ってしまう。

しかし、ふとひなのがこちらを見ていることに気づく。


「ひなの先輩、今日はバスケしていかないんですか?」

「いや、今日は眺めに来ただけだから。」


そこまで言うとひなのはこちらをジロリと見てくる。


「三井くんがちゃんと来るかどうか心配だからね。」


その言葉に俺はキッとしてにらむ。


「──ば!お前まだ疑ってんのかよ!何日経ったと思ってんだよ!!」

「ふーん、その口がよく言うわ。この数日私がどんだけ心配してたと思ってんのよ。」

「え…心配してたのかよ。」


ひなのの言葉に衝撃を受ける。

今まで異様に見張られてる感はあったが、まさかまだ心配されていたとは思わなかった。
(バスケ部に復活した時点でもう心配などされないと思った。)

しかしそう言ったことにひなのは目をカッと開いた。

と思えば手元にあったバスケットボールを俺に投げつけてきた。
(おいおいボール投げんなよ!!)


「三井のあほっ!私が、私がどんな気持ちで…っ!!」


そう言って俯いてしまうひなのにもしかして「泣くのか?」と焦る。

慌てて身を屈めてひなのの顔を見ようとする。

するとその瞬間ひなのはガバッと顔を上げる。


「──なんてね!」

「……ハァ!?」


顔の近さに一瞬固まってしまう。

そして冷静になった途端ひなのの言葉に眉を寄せる。

するとそんなオレを見てか(顔が近かったことなど気にしてなどいないだろうが)、ひなのはケラケラと笑う。


「もうとっくに信じてはいるよ。」

「ひなのてめぇな〜…!」

「あははっ!」


大笑いのひなのの両頬をぎゅっとつまむ。


「むぎゅ、」

「焦っただろが!」


むぐぐ、と睨み付けてくるひなのの顔を見てつい吹き出す。


「ぶはっ…!」


笑いだしたオレを見てか、ひなのもこちらに手を伸ばし、そして頬をつまんできた。


「むぐ、」

「むひゃまつなや!!(三井のせいでしょ)」

「やなたはらまかたや!!(なんでオレだよ)」

「なかたやまら!!(もう全部だよ)」

「かなだらゆなは!!(意味わかんねえし)」


ギャイギャイ騒いでいれば最終的に怒られるのはオレだった。


「うるさいわ!!騒ぐなら外でやれ三井!!」

「なんでオレだけだよ!」

「バカタレが!!」

「ざまあ三井!」

「うぜえひなの!!」

「三井さん大人げないっすよ。」

「そーだそーだ!」

「お前らも調子のんなよ!宮城!桜木!」

「おいおい、落ち着けよ三井、」

「うるせー!!」


赤木を始め、宮城や桜木、木暮もまざってギャーギャー騒いでいるといつの間にか一年も二年もこっちの様子に笑っていた。

バスケ部に復活してからもまだ一年や二年とはどこかぎこちない部分があったのにも関わらず今はそんな空気はない。

ふと、もう我関せずな様子のひなのに気づく。

目が合うとふわりと微笑まれる。

そして口が開かれた。


「──。」


──ひなのがバスケ部で関係を作っていたことに、どこか置いていかれているような気持ちになっていたらしいオレは、まんまとひなのの策略にはまったらしい。

バスケ部に馴染めるようにあの流れをふっかけてきたのだろう。

くそ、なんか悔しい気持ちになるのはしょうがないことだろうか。

ひなのには敵わない、そんな風に思った。

心が暖かく、ドキドキしたのはあいつのせいだ。

それをごまかすように笑っている一年と二年を怒鳴り付ける。


「おい!!一、二年も笑ってんじゃねえよ!!」

「わああ、すみません!!」















よかったね、三井












(てゆうかひなのさんと三井さん頬つまみ合ってた時何て会話してたんだ?)
(さあ。でも二人は会話できてたっぽいよな?)
(ああ、凄いねあの二人。)
(さすがひなのさんだっ!)





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