ひなのはにんまりと笑いながら前方を見る。
その前方にはバスケ部に復活した三井の姿。
何日かこの姿を確認してはいるがにやにやは止まらない。
本当に帰ってきたんだ。
しばらくは疑いの眼差しで見ていたがどうやらもうバスケ大好き三井に戻ったらしい。
安西先生にも会っちゃったしね。
今さら引き戻ることもできないだろう。
「まだまだだな木暮!!」
「ぐっ、本当にブランクあったのか三井…。」
…しかしあいつはあいかわらず嫌味ったらしい。
三井が木暮くんと1on1をやっているのを見ながらそう思う。
しかしアイツは本当にブランクを感じさせないから何とも言い返せないのが悔しい所である。
それは今も同じ状態である。
「──なに見てんだよ。」
「…別に。」
じいっと見ていれば三井はこちらの視線に気づく。
だが素知らぬふりをすれば彼はまたバスケへ集中しようとする。
だが、
「だからなんだよ!!まだ疑ってんのかよ!?」
──疑う、というのは三井がちゃんとバスケ部に復活したのか、本当に不良はやめたのかとしばらく疑いの視線を向けていたことを言う。
だって信じられなかったのだからしょうがない。
でも何日間か見張りまくった結果はというと、どうやら三井は本当に不良は卒業したらしい。
それでもなんとなく彼を見張るようにしている──それがどうやら三井には不満なようで。
「いい加減にしろよ!!」そう怒鳴る三井にひなのはふ、と笑う。
「自意識過剰だよ。大丈夫。」
「そ、そうか?」
「そうだよ。」
「そうか…って何が大丈夫、だよ!!視線が鬱陶しいんだよ!!」
「あはははは。気にしないでよ元不良の三井くん。今まで私や安西先生に心配かけた代償と思えば軽いもんでしょ。」
「………。」
笑いながら返すと三井はため息をついてそっぽを向く。
こういう時はだいたいこちらの勝利である。
(安西先生の名前を出したのはずるかったかもしれないが。)
しかし私にも心配かけたのは間違いないのだからちょっとくらい居心地の悪い思いなど我慢したらいい。
そう考えていると三井はこちらを見てくる。
それに首を傾げて「なに?」と声をかける。
「……ひなのさ、」
「うん?」
「ひなのさ──ん!!見てください天才桜木の新技を!!」
「おお!?」
ダムダムとドリブルしながら物凄い勢いでやってくる花道くんにびくりと体を震わせる。
そして新技を目の前で披露してくれる。
ダムダムとドリブルしながら走っていき、ゴールから物凄い離れた所からジャンプをし、そしてゴールする。
「おおお!!スゴい!!」
その勢いあるゴールにひなのはパチパチと拍手を送る。
花道くんはニコニコしながらこちらへ戻ってくる。
「ど、どうでしたか?」
「うん!!パワフルでスゴかったよ!」
そう言えば花道くんは笑顔になる。
「そうですか!?」
「うんうん。」
「ひなのさんにそう言われると自信が出ますっ!!」
「あ、でも──「このバカタレが!!今のはダブルドリブルだ!!」……そうそう、ダブルドリブルだからね。」
「む、ゴリ…。」
「そして春川!桜木をおだてるなと何度言えばいいんだ!!」
キッとこちらに向かってくる赤木くんに首を傾げる。
「え、別におだててるつもりはないんだけどな。本音だし…赤木くんに突っ込まれる前もちゃんとダブルドリブルのことは言おうと思ってたよ。」
「だから…!!」
「え?」
がくりと肩を下げる赤木くんに笑っていると三井の複雑そうな顔がこちらを見ているのに気がついた。
「…どうしたの三井。」
「…いや、ひなのお前いつも「ひなのさん今度こそ見ててくださいっ!!」……。」
「あはは頑張れ花道くん。」
「さーくーらぎー!!」
「……あ、三井何だった?」
「何でもねーよ。」
「?」
変な顔になってるよ
(お姉さんが話聞いてあげるから。ほら三井くん話してごらん。)
(うるせえよ!!黙ってマネージャー手伝いしとけ!!)
(む!!なにその言い方!!)
(おお、ひなのさんがケンカだケンカ。)
141103執筆