花道くんを背負うようにしながら(まだ離れてくれない。)ひなのはズルズルと歩いていく。

洋平くんたちが何も手助けしてくれないことに関しては諦めた。

しょうがないからこのまま体育館まで行こう。

でも本当重たいんですけど。

それに花道くん晴子ちゃんのこと好きなんだよね?

こんなにくっついてていいのか。

ゼェゼェしながらも引きずるようにして体育館へと向かう。

その途中で目の前に急に現れたのは赤木くんと木暮くんだ。

二人はこちらの状況を確認し、赤木くんはため息、木暮くんは苦笑いで見てくる。


「ねぇ、何でもいいからコメントしてくれない?私悲しいんですけど。」

「ああ。春川に桜木のお守りは頼んだ。よろしく頼むぞ。」


赤木くんのその言葉に「ええ!?」と耳を疑う。

しかし彼は真顔のまま頷いて先に体育館へと向かっていってしまった。

彼の背中を見送り、次に木暮くんに視線を移す。

すると木暮くんは嬉しそうに微笑んだ。


「桜木は春川にすっかりなついたな。」


うんうんと頷き木暮くんは「部活には間に合うように来てくれよ。」と言って去ってしまった。

それに呆然とするのはひなのだった。


「ちょ、…え?何今の。私軽く見捨てられた!?」


そして後ろを見れば声が出せぬほど笑いこける桜木軍団。

ほんと誰か何とかして。

そんな時だった。


「うわ、先輩大変そうですね。」

「桜木花道!あんた迷惑かけちゃダメじゃない!」


後ろからやって来たのは宮城くんと彩子ちゃん。

ようやくまともに心配してくれる子らが来た!

そう思ったが二人は笑う。


「まぁ花道のお守りは先輩の役目っすからね。」

「ひなの先輩、頑張ってくださいよ。今日もお手伝いしてくれるんですよね?」

「え…、あ、うん、お手伝いしようと思ってたけど、ちょっと待って!!」

「じゃあお先に。」

「先輩急がないと間に合わねーすよ。」


じゃあ、と手をあげて行ってしまった二人にえええ!と衝撃を受ける。


「ひなの先輩チース!!」

「チース!!」

「チース!!」

「や、優しい優しい一年チームのみんな!ちょっと花道くん引き剥がすの手伝って!」 


笑顔で挨拶してくれた彼らにそのままお願いする。

彼らならうんと言ってくれる筈だ。

そう思ったのも束の間、彼らはこの状態(背中に花道くんがくっついている)を確認したや否やさらりと言った。


「「「ごめんなさい。」」」

「え、」

「ああ大変だ!コートにモップかけなくちゃ!」と桑田くん。

「キャプテンに叱られる!」と佐々岡くん。

「じゃあ後で!」と石井くん。


手を伸ばしても彼らには届かない。

そしてその後をスタスタ歩いていくのは流川くん。

ダメ元で声をかける。


「るっ流川くん!!ヘルプ!!」


流川くんはこちらをチラリと一瞥して一言。


「部活に遅れる。」


私たちに関わっていたら遅れると。

いやそうかもしれないけどさ、手伝ってくれるよね普通は!!

そんな思いは彼には届かずスタスタと歩いていってしまった。

そして前方の曲がり角から現れた人物に声をかける。


「ま、待ってヤスくん潮崎くん角田くん!!」


慌てて声をかければ振り返る三人。

二年生である彼らなら助けてくれる!

そう思ったが彼らもこちらの状況を確認すると苦笑いを見せる。


「はは、先輩と桜木は本当に仲良しですね。」とヤスくん。

「桜木、遅れるなよ、赤木さんに怒られるぞ。」と角田くん。

「じゃあお先に。」と潮崎くん。


ちょっと待てー!!

そう叫んでも彼らは体育館へと行ってしまった。

そして聞こえたよ、桜木のお守りがいると穏やかだな。って!

何なんだみんなして私は花道くんのお守り役なんですか!

そしてそして湘北高校バスケ部はこんなに薄情なのか!!

ああもう!こうなりゃ意地にでもこのまま引きずって体育館に連れていこうじゃないですか!

時間に間に合うようにね!!

と一人意気込んでいると背後の桜木軍団はまだまだ笑いが止まらないらしい。


「いやーひなのさんお疲れっす!!」

「花道のことはよろしく頼みます!!」

「はっはっは助かるぜほんと!!」

「バスケ部公認花道のお守り役!!」

「…………。」

「「「ぎゃははは!!」」」


ええはい、もういいですよ。

だってもう体育館はすぐ目の前だもの。

辿り着いてみせますよ。















お守り役を果たそうじゃないですか













(お、ヤケクソになった。)
(ヤケクソだな。)
(ヤケクソヤケクソ。)
(ひなのさん頑張れー。)
(うっさい!)




1141008執筆






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