「──さ、そろそろおしまいにしよっか!」
「ええっ!そんな!もう一回お願いしますよ!」
「そう言って何回やったの!もう今日は終わり。」
練習の後の特訓を続け、すっかりもう夕飯時である。
いい加減終わりにしようと提案しても花道くんはごねる。
だいぶそのごねりに付き合ったが、いかんせんもうそろそろ終わりにしないと明日に響く。
「ひなのさん…!お願いします!もう一回!もう一回だけ!」
「うぐ、」
大きい花道くんがうるうるとした目で訴えてくる。
私がこの顔に弱いのを知っているのだろうか。
だけどもここで譲るわけにはいかない。
「だ、め!通常の練習もして、彩子ちゃんと初心者特訓もしてからの1on1だよ?どう考えてもオーバーワーク。終了です!」
「……。」
しょぼん、と肩を落とす花道くん。
うう、ダメだ見てはいけない。
気持ちが揺らぎそうになる。
花道くんから少し視線をずらし、声をかける。
「ねぇ花道くん、」
「…はい。」
「花道くんは初心者だからみんなよりはスタートが遅かったよね。」
「…はい。」
「だから焦る気持ちはよくわかる。」
「イエっ、オレは天才だからそんな焦ったりなんて…。」
あわあわしながら口を開く花道くんの肩を優しく叩く。
「うん、分かってるよ。…大丈夫。そんなに焦らなくても、花道くんは毎日スゴい早さで成長してる。経験者の目からしてみれば本当に羨ましいくらい!」
にこりと微笑んで話すと花道くんも真剣な表情で話を聞いてくれる。
「花道くんは毎日スゴい早さで成長してる──でもそれは花道くんが毎日一生懸命、練習に打ち込んで、そうして成長してるんだよ。だから、急がなくても大丈夫!私が証人ですっ!だからオーバーワークはやっぱりオススメしない。オーバーワークが怪我に繋がる事もあるんだよ。…わかった?」
微笑んだまま彼を覗き込んでみると、花道くんはぷるぷる震えて涙を流していた。
「え、」
「ひなのさんっ!!オレはっオレはっ…!ひなのさんに会えて本当にシアワセ者ですっ!!」
ガバァ!と勢いよく抱きつかれ、息がつまる。
「うぐ…、ちょ、花道く、苦し…!!」
だから本当に力強いって!
(ひなのさん大好きですっ!)
(わかったわかった!だから力を緩めてくれないかな本当にヤバイよ。お花畑見えちゃうよ。)
(ひなのさぁぁん!!)
(ぎゃあぁぁぁぁ!!)
*****
基本的に主人公は花道に甘いです。
151101