「ひなのさんっ!お待たせしました!」


練習が終わったその後、いつものように“秘密の特訓会”をする為ひなのは三井や赤木くん達と会話を少ししてさりげなく体育館に残った。

いつもの事ではあるので普通に残り、彩子ちゃんの片付けを手伝っていたからそんなに待った感じはしない。

それでもいつも息を切らして笑顔でやって来る花道くんににこりと笑う。


「全然待ってないよー。よーし、今日もやるか!」

「ハイ!」

「内緒で練習して晴子ちゃんにいい所を見せるぞーっ!」

「ハイっ!!」


晴子ちゃんという単語にニヤニヤが増した花道くん。

ほんと可愛いなぁ、と思いながらボールを手に取る。

花道くんといつもする練習は実践で使えそうなもの。

大切なのは基礎練習ではあるけれど、この時間になるまでに彼は赤木くんに言われ、彩子ちゃんと基礎練習を頑張ってやっているのだからこの時間は実践練習をするのだ。


「うーん、花道くん基礎練でドリブルはすごい上手になってるし、レイアップも上手だし、リバウンドも「天才的です!」うん、そうだね。…となるとー、」


ううん、と考えていると花道くんはわくわくした表情でこちらを見てくる。


「ルカワをぎゃふんと言わせるくらいの技をお願いします!!」

「流川くんをぎゃふんと……?」


ふと想像してみるとなんだか面白い光景で少し吹き出してしまう。

絶対言わなさそうという所がまた面白さを誘ってくる。

笑っているのに気がついたようで、花道くんはこちらに視線を向ける。


「アッ!なに笑ってるんですか!」

「えっ、いや、ぷぷ、ぎゃふんと言ったら面白そうだなー、と。言わなさそうじゃない?流川くん。」

「言わせるんですよひなのさんっ!あのキツネヤローにぎゃふんと!」

「ぷぷ、分かった分かった。」


流川くんに必死に追いつこうとしている(本人はそのつもりではないかもしれないけれど)花道くんを見ていると気持ちがほっこりしたものになる。

思わずのほほんとしている中、そうだ、と花道くんをみる。


「じゃ、今日から私と“1on1”やろっか!」

「──え、そんなひなのさんと1on1なんて!」

「役不足かな…?」

「いえっ、そうじゃなくて、ひなのさんがスゴくスゴくうまいのは知ってますが…、」

「ああ、体格差かー、あはは大丈夫だよ〜。私中学の時三井とよく1on1やってたから。」

「そ、そうなんですか!」

「うん。」

「あああでもいいんでしょうか!ひなのさんと…!」


あわあわしている花道くんにくすりと笑う。


「うーんと、思いつきで言ったわけじゃなくてね。花道くん初心者でしょう?」

「は、はい。」

「花道くん色々な事どんどん覚えてきていて凄い成長してると思うの。だけど君に最も足りないものがある。」

「……!!?」

「それは、経験。」

「ディフェンスをつけての練習は部活中もやってるけど、ずっとやっているわけじゃないよね。」

「はい。」

「最近は宮城くんにもフェイントとか教えてもらっていたみたいだけど、練習は多いに越したことはないからね。」

「なるほど!天才桜木花道!ひなのさんとの1on1で更に強くなってみせます!」

「うん!」


目をキラキラさせながら力強く頷く花道くんに微笑む。
本来ならばシュートを教える、という選択肢もあった。

だけれど、彼には経験を身につけて欲しかった。

コートで争い戦う術を知ることも大切なのだ。
(それにシュートはきっと赤木くんが教えているはずだ。)

ニコニコしている花道くんにひなのは一つ言い忘れた事を付け足す。


「あ、そうそう。1on1って言っても、シュートはなしね!ひたすらディフェンスとオフェンスやり続けるよ。」

「──はい?」

そう、やるなら徹底的に、だ。
(後に、花道くんがシュート練習をしていなかったことを知り衝撃をうけるのはまた少し先の話。)














それから数十分後──


「──はいファウル!」

「ええ!?」


ひなのの言葉にガガンと衝撃を受ける花道くん。

いくら衝撃を受けてもファウルはファウルである。

練習を始めてからもう何度目かのファウル宣告である。


「そんなちょっとぶつかっただけで…!」

「そんなもんだよ花道くん。」

「ぐぬ…な、何がいけないんでしょう。」

「何てゆうか…花道くんこう…分りやすいんだよね!」

「?」

「多分試合でもそうなると思うんだけど、動きが大きいからファウルすると目立つんだと思う。ファウルするならこう…コッソリがいいよ。」

「コッソリ…。」

「そうそう。例えば──、」


ひなのは花道くんの背後に回り、腰を落とす。


「ぬっ!?ひなのさん、押してますよ!」

「そうそう。」

「そうそう。って!」

「ほらでも…、審判から分かりにくいでしょう。」


そう言ってひなのは花道くんを見る。
花道くんはうーん、と唸り「ナルホド。」と呟く。


「じゃあファウルは…バレなきゃオッケーってコトですね!?」

「う、うーん…まぁ、やらないですむならやらない方がいいけど。」

「ナルホド!」

「……。」











…何か間違えたかも













(花道くん、本当にわかってる?)
(モチロン分かってますとも!)
(ファウルはバレなきゃオッケー!ファウルするならコッソリ!ですね!)
(……まぁとりあえずいっか。)








*****
練習方法云々は正しいとか何とかは書いておきながら分かってません←
軽〜く読み進んで下さると助かります。


150701




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