「バスケがしたいです……!」  




「……ありがとうひなの。オレを呼び戻しにきてくれて。」 

「…あはっ、…もう、ほんとバカ野郎…!本当にっ、よかっ…た!」 

「もう、こんなこと二度とねーよ。絶対。」 

「…ばか三井!ぜ、絶対だからね…!」 





「おう、約束する。」 













──あれから、数日が経った。 

あれ以来バスケ部にも平穏が訪れ、三井も部に戻り前と同じ日常が戻っていた。

ああでも周りの視線が痛くてしょうがない。

ひなのはため息をつく。








「──おい春川お前大丈夫なのか?」

「ひなの生きてたの!?よかったよ本当に!!」

「春川お前よく湘南の海から無事に帰ってきたな…。」

「ひなの海に沈められそうになったって本当?」


上記のように私はどうやら湘南の海に沈められ、そして命からがら逃げてきたということになっていた。

どの噂にも最初は“不良”“体育館”というワードが入っていたのにも関わらず、それに付け足されおかしな話が独り歩きした結果、ああなったようです。

ねぇ私は一体何者なのよ。

海に沈められるって何。


「──そりゃあひなのさんだからな。」


さらりと言ったのは後輩の水戸洋平だ。

洋平くんは本当いい後輩なんだけど、なんていうか。


「危なっかしいからいつそうゆうことになるかわかんねぇってことだろ?」

「ねぇやっぱり洋平くんは私のことバカにしてるよね?」

「いやそんなことないさ。」

「……即答すぎて逆に怪しいよ。」


はははと感情のこもってない笑いをもらす洋平くんにむっとしながらも彼に当たってもしょうがないかと心を落ち着けさせる。

しかし次の瞬間である。


「いやー本当にさーひなのさんはスゲェよ。なんてったって、」

「体育館に突っ込んでって不良に飛びかかって、」

「その上不良に誘拐されて、」

「頭に傷を追ってもなんとか逃げ切ってきたんだもんなァ!!」

「本当ひなのさんには敵わねえわ!!」


ぎゃはははは!!!

大笑いをかます桜木軍団のチュウくん雄二くん望くんにまたムッとする。


「あーもう!桜木軍団黙りなさいっ!」

「桜木軍団ってまとめないでくれよ!!」

「うるさい!そっちが怒らせたんでしょ!」

「…でもよぉ。」


そう言って彼らは視線を横にずらす。

そこには二年生の見知らぬ後輩。

ひなのも桜木軍団につられて視線をそちらに移した。

彼らはこちらをチラチラ見ながら何かを話している。

そして目が合うと何故かさささとその場を去ってしまうのだ。

だけどね、私には聞こえてますよ、ええ。


「あの先輩がヤバイ人らしい!」

「あの頭の包帯が証拠だ!」

「──だってよ!!」

「「「ぎゃはははは!!!」」」

「ひなのさんいいキャラしてるな本当!!いろんな話飛び交ってるぜ!?」

「く…!いろんな話が飛び交ってるのは本当だから言い返せない!」


ムキー!とやりどころのない怒りに燃えていたひなのだが、ふぅと息をつく。


「…まぁ、もういいや。人の噂もなんちゃらって言うもの。」

「変わり身早!!」

「まぁそれはさすがひなのさんてことだな。」


どういう意味なのよコラ。

そう睨みつけても洋平くんはびくともしない。
(さすが怖くないけど実は不良な桜木軍団だ。)

そこまで会話をして、ふと背後を見る。


「──それで、花道くんはどうしたの?」


そう、花道くんはさっきから話に参加することなくひなのの背後で小さくなっているのだ。
(小さくなりきれていませんが。)

声をかけても花道くんは小さくなったまま。

それに疑問を持っていれば、洋平くんが苦笑いしながら花道くんのかわりに返す。


「花道はさ、まだ責任感じてんだよ。ひなのさんがケガしたことをさ。」


そう言われひなのは退院してすぐに体育館へ行ったときのことを思い出す。

やった本人である三井は普通に話していた。

しかし花道くんは勢いよく抱きついてきてその上凄く心配していてくれたようだった。
(ケガしたのは自分が守れなかったからだと落ち込んでいたし。)

大丈夫だと、気にしないでと言ったは言ったが彼の気持ちはそれじゃ収まらないようだ。

確かに目がちらりと合う度、頭の包帯に視線がいっていた。

ひなのはしゃがんで花道くんと視線を合わせる。


「花道くん。」

「………。」


サッと目を逸らされる。


「花道くんてば。」


ひなのはふっと笑い、そして花道くんの頭をぽんぽんとなでる。


「前にも言ったけどケガしたのは私の責任だから!もう痛くないし!気にしないで。花道くんが元気ないと私も落ち込んじゃう。」

「……。」

「花道くんは元気なのが一番だよ!」

「……!!ひなのさん!!」

「うぐっ!!」


しゃがんでいた所に抱きつかれ、その勢いのせいで尻餅をつく。

そしてぎゅうぎゅうと締め付けられ息苦しくなる。

だからだから花道くんの力は半端ないんだよね!

それに、


「笑ってないで助けなさいっていつも言ってるじゃない!そこの後輩たち!!」


正面を見ればニヤニヤしながらこちらを見ている洋平くんはじめ桜木軍団の彼ら。

彼らはこちらが文句を言っているのにも関わらずニヤニヤをやめることはない。


「いやー花道とひなのさんの仲良し具合は見てておもしろいんだよな。」

「「「右に同じ。」」」

「君らほんと…。」













先輩を敬う心がない!












(敬ってるじゃねーか。先輩。)
(くっ…その先輩って言葉がもうバカにしてるよね。)
(そんなことねーよ。先輩。)
(そうだぜ先輩。)
(ひなのさん!ありがとうございます!この先桜木花道必ずひなのさんを守りますから!!)
(花道くんそれプロポーズ!)
(…?)
(ぎゃはははおもしれー!!)
(あーもう苦しいぜ!!)
(ひなのさんはなんて優しい人なんだ!!)
(桜木軍団やかましい!!)





*****

不良に〜続編スタートです。
初っぱなから三井が全く出てこないっていう感じ。
そしてしばらく出てきません。←
でも「君しか見えない」は三井夢ですよ!(重要)

141006執筆






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