彩子ちゃんと話をしながら大体の手伝いを終えてひなのは練習を見ていた。

もうすぐ大会が始まるということもあり、みんなが真剣に練習に取り組んでいる。

3年生である赤木くんと木暮くんは特に気合いが入っているような気がする。

それもそうだろう、この大会で1回でも負けてしまえば2人は引退なのだから。

…そんな心境も自分にとっては懐かしい感情。

あの張りつめた雰囲気や高揚感はその当人でないと分からないものだ。

赤木くんと木暮くんの2人を見ていれば、その視界に三井が入ってきた。

三井が入ってきたことでハッとする。

そうだ、三井も3年だった!

今まで三井がいなかったからつい3年は赤木くんと木暮くんだと思ってしまった。

まあバスケ部に入り浸りすぎではあったとは思うけれど三井印象薄いな。

そんな三井の印象薄さにぷぷ、と笑う。

まあいなかったんだからしょうがない。

あ、やばい面白くなってきた。

笑いをこらえていれば、笑いの原因となった三井が訝しげな様子でやって来た。


「ひなのなに一人で笑ってんだよ。」


汗を拭き、ドリンクを飲んでいる三井はそう尋ねてくる。

こちらがまだ笑いを残しながら口を開こうとすると三井が真面目な顔で一言。


「顔が気持ちわりいぞ。」

「…………。」


その一言にひなのはニコッと笑顔を張り付ける。

そしてコロコロと転がってきたボールを手にして、笑顔のままボールを投げつける。


「うおっ!なんだよ急に!」

「急にじゃないから!顔が気持ち悪いとか失礼すぎる!」


そう言えば三井はフ、とバカにするような顔で笑う。


「でも本当に変な顔してたぞ。」

「腹立つ!三井なんて印象薄いくせに!」

「ハァ!?」


何のことだよ、と問う三井に先程思ったことをそのままに言ってやれば、三井はぐ、と言葉がつまったようである。


「…………。」


黙り込んでしまった三井に、彼のハートを傷つけてしまったかと気づき、ぽんと彼の肩に手をのせる。


「まあ、あれよ。…元気だして。」

「オマエが余計なこと言うからだろっ!!」

「あははは。」


でもこういうやり取りができることが一番嬉しい、そう思ってへへ、と三井を見ると今度は後ろに一歩下がった。


「…なによ。」

「いや、今度はにやにやしてどうした?暑くて頭がおかしくなったか?」

「……今私のハートはがらがら崩れました!」

「何言ってんだひなの。」

「くっ…!ちょっとでもよかったって思ってた私がバカだった!」


そう言えば不思議そうな顔をする三井。

もうこちらの思いを思い知れ、と口を開く。


「三井がちゃんとバスケ部にいてよかったなーって思ってたの!からかった私も悪かったけどね!」


そう言い視線をそらせば、三井がふと呟く。


「まだ、そんな事言ってんのかよ。もう大丈夫だって言ってんじゃねぇか。あんな事にはもうならねぇって、」

「私の三井への信頼はどん底に落ちてたからね。もしかして、があるかもしれないじゃない。バスケ部に戻ったっていうのも私の妄想だったかも、夢だったのかもって。だからやっぱりバスケ部にいる三井見て安心したんだよ。いてくれてよかった、三井はバスケしてる姿が一番いいな、って。」


そう伝えれば急に頭をガッと押さえられる。

押された事によって視線はしょうがなく下を向くはめになる。
頭をあげようとするも、押さえる力が強くて頭をあげれない。


「ちょ、三井なに…?」

「うるせー黙っとけ。」

「ぎゃっ、」


ぐしゃぐしゃと頭をかき回され、戸惑っていてもやめる気配はない。

それにムッとして顔を何とか三井の方へと向け、そしてひなのの動きは停止した。


「…まっか。」

「!!!う、うるせーよっ!」


ぱ、と手を離され頭を押さえながらひなのはぽかんとする。

そっぽを向く三井の耳は真っ赤である。

それを見て数秒止まった後に、にへらと笑う。


「へへへ、三井照れてるの?」

「ちっ、ちっげぇよ!」

「えー?本当に?ちょっと顔見せてみなよー。」

「うるせー!」

「へへへ。」


にやにやしながら三井の顔を覗き込もうとすれば、再び頭をガッと押さえ込まれる。


「わっ、」


押さえ込まれたと思いきやぽんぽん、と頭を撫でられる。


「─────、」


そして聞こえてきた小さな声にひなのは微笑んだ。


「ね、もう一回言ってー。」

「や、やだね!ああもう休憩終わりだ、じゃあなひなのマネージャー手伝いサボんなよ!」

「サボんないわよ!」


ブンと手を振っても三井に当たることはなく空振ってしまうも、ひなのの微笑みは途絶えない。

そこに彩子ちゃんが来て不思議そうな表情で言った。


「今何の話してたんですか?三井さんスゴく赤い顔して向こういきましたけど…。」


それを聞いてひなのはまたにやにやが止まらなくなり、にやにやしたまま口を開く。


「ないしょ!」

「ええ…気になるじゃないですか…。」

「ふふ。」


この嬉しい気持ちは自分の中にしまっておこうと思う。

だって、小さいながらも彼が発した言葉は紛れもなく誓いの言葉だったのだから。



















お前がいる限りもうあんな風にはならねーよ。















(三井も可愛い所あるよね………って、私がいなくなったらまた不良に戻るかもって事だった!?しまったこれじゃ本当に目が離せないじゃない、あの歯抜けめ…!)
(…ひなの先輩楽しそう。)




150531




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