彩子ちゃんに長々とした説教を受け、(周りの人に気の毒そうに見られた。助けてよ。)最後に彼女が言った言葉がこうだ。


「さあひなの先輩、マネージャーになりましょうか。」

「うんうん。ってえええ!今の流れでなんでそうなったの!?」

「だって先輩本当毎日来てるじゃないですか。いっそマネージャーやった方がいいですよ。」

「いやいや、毎回言ってるけど毎日マネージャーはやっぱ今さらだし…ねえ?」


そう返せば彩子ちゃんは頬を膨らませた。


「毎回言ってますけど、先輩はもうマネージャーみたくウチの部に溶け込んでますからね。」

「ありがとう。それはほんと嬉しいなー。」

「…先輩はいっつもそうなんですから。」

「あはは、ごめんね。でもできる限りは手伝うから。」


にこりとしてそう言えば、彩子ちゃんは膨らませた頬を戻して笑う。


「先輩には負けますよ。」

「あはは。」

「ひなのさーんっっ!!」

「うぐっ!!」


和やかに話をしていれば後ろから衝撃が。

何度も繰り返されてきたこの衝撃にふう、と息をつきながらもバランスを崩した体勢をゆっくりと戻して振り返る。


「…花道くん、ほんと何回もよくこんな体当たりを…。」

「大きな犬がじゃれついてるみたいですね。」


サラリと言う彩子ちゃんを見るも彼女は別段悪びれる様子もない。

それに苦笑いしながらも確かに大型犬にじゃれつかれているような気もする。


「まあ仲がいいのはいい事ですよ。」

「はは、まあね。で、花道くんどうしたの?」


そう尋ねれば彼は目をキラキラさせながら嬉々として口を開く。


「今日は練習する約束しましたもんねっ!来てくれて嬉しいです!天才桜木花道!ますます天才になっていきます!!」

「うん、約束したもんね。ちゃんと来たよー!超天才目指そう!」


互いにニカッと笑い合っていると、それを見ていた彩子ちゃんが口を開いた。


「ほらやっぱりマネージャーやっちゃえばいいじゃないですか。」

「いや!それはそれだから!やっぱりの意味も分かんないよ!?」

「ひなのさんマネージャーやりましょうよ!!楽しいですよ!」

「うん、楽しいかもしれないけどね?」


否定をしてしまくっているとやはり彩子ちゃんは不満顔。


「もう、先輩ワガママですよ。」

「ええええ。どっちがワガママか落ち着いてよく考えてみようか。」

「嫌です。」

「……。」


即答すぎる返答にがくりと肩を落とす。

そんなやり取りを横で見ていた花道くんは不思議そうな顔でさらりと言った。


「ひなのさん、マネージャーじゃないんですか?」

「!!!?」

「おっ、桜木花道。たまにはいい事言うじゃない!」


なんでそんな当たり前の出来事として扱われているのでしょうか。


そう言っても通じないのが花道くん。

彩子ちゃんは狙っている感満載だが、花道くんは本当に不思議そうにしているのだからタチが悪い。


「まあいいや。とりあえず部活始まるよ?」

「ハッ!ではひなのさんまた後でっ!!」

「桜木ィ!いつまでだべってる!!始めるぞ!」

「ゴリ、嫉妬か?」

「意味が分からんわ!」


今日もギャーギャーわいわいと騒がしい中始まる部活。

日に日に気合いが入っているのを感じる。

彼らの様子に中学時代はこんな感じで盛り上がっていたなーっと懐かしさを感じながらドリンクを作ろうとボトルを手に外に出る。

やはり外の風は気持ちがいい。


「ふーっ、いい風だー。さ、ドリンクドリンク。」


そうまったりしていれば、背後から笑い声が聞こえてきてその声にむすっとしながら振り返る。


「その声は……洋平くん。」

「ははは、よく分かったな。」

「分かるよ。っていうか何で笑ったの?」

「いや、先輩独り言だと思って。」

「誰でも独り言くらい言うでしょ。洋平くんいつも私見て笑ってない?」

「そんなことないさ。」

「……即答すぎて怪しい。」

「ははっ。まぁまぁ…ドリンク作るんだろ?早くしねーとアネゴが来ますよ。」

「……。」


何となく話を流された気もするが、彼の言うことはもっともなので作業を再開する。

しかしふと、洋平くんが一人なのは珍しい、と尋ねる。


「今日はみんないないの?」

「ああ、いるよ。花道の“応援”。」

「……。」


その一言で、体育館から笑い声が聞こえてくるような気がした。

彼らは花道くんを真剣に応援してはいるが、やはり面白いという所が強いようで、日々からかってからかってからかいまくっている。

そしてからかわれた花道くんは逆上して彼らに襲いかかっているのがよく見る光景だ。
(それに赤木くんが「集中しろォ!」と注意するのも珍しくない。)

彼らのいう“応援”が、花道くんにとっての応援かどうかは微妙な所である。


「それで洋平くんは花道くんの“応援”、しなくていいの?」

「ああ。今はひなのさん見てる方が面白いからな。」


その言葉にひなのの動きはピタリと止まる。


「……それって何、どういう意味なの。」

「いや、そのまんまだよ。面白いからな、ひなのさんの存在自体が。」

「……なんか嬉しくない気がする。」

「ま、気にしない気にしない。」

「……。」












いやいや気になるでしょ!











(ねぇ洋平くん!君ほんと私のこと何だと思ってるの!?)
(何って……ステキな先輩?)
(なんで“?”!?ほんっと私のことバカにしてるよね!)
(いやいやそんな事ねーって。)
(じゃあもっと喜べるような事言って!)
(……、……、先輩ステキー。)
(…………。)
(…………。)




150507




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