「だいたいなぁ、勝負自体はオレが勝ってんだからな!」
「そんなことないってば!勉強での勝負もいれなさいよ!」
「だ、からそれはな!」
ぎゃあぎゃあ言いながら体育館に入ると、1年の子に不思議な目でみられました。
くそう、三井め。
尚も文句を言い続ける三井にはもう終わりだと冷たい視線を送っておきました。
「これ以上騒いだら赤木くんに怒られるよ?」
「…う、」
ちょっと前から思っていたことだが、部に復帰して以来、赤木くんに対して以前のように接することはできているらしいが、どうやら何となく頭が上がらないらしい。
三井にとって“赤木くん”というフレーズはちょっとした緊張感が走るようだ。
ふふふと笑いを抑えることなくもらせば睨まれる。
(しかし赤木くんにビビっている三井に睨まれても怖くなんてない。)
「さーさっさと準備にでも取りかかりなさいよ。三井くん!」
「チッ。」
「舌打ちすんな!」
そう返せば不満げな様子は変わらぬまま渋々と去っていく。
その後ろ姿を見てうんうんと納得していれば声をかけられる。
「先輩、楽しそうですね。」
「彩子ちゃん。」
振り返れば笑顔の彩子ちゃんの姿。
楽しそうって、そんなに顔に出ていたのだろうか。
「先輩って、ほんとに分かりやすいですよね。」
「え、」
「何を考えているのか想像つきますよ。最近ニコニコしてますもん。三井さんがバスケ部に来てから前より楽しそうです。」
ふふふと素敵な微笑みを見せてくれる彩子ちゃん。
そんな顔見たら宮城くんまた惚れ直しちゃうよ。
「いやまぁ前よりっていうか、前も楽しかったけどね。三井が戻ってきてくれるのが今までの私の願いだったから。だから本当に嬉しいんだ。」
「そうですね…ひなの先輩は、」
「うん?」
「三井さんのことが好きなんですね。」
その言葉にひなのはにへらと頬が緩む。
「そうだね。三井は中学のころから張り合ってたから。三井のこと好きだよ。」
そう話をしてふと彩子ちゃんを見る。
彼女は目をまん丸にして驚いた表情をしていた。
「先輩…、」
「?」
「まさかそんな返事がくるとは思わなかったです…!いいと思いますよ!仲良しだし、お似合いです!」
「は?」
「え?」
彩子ちゃんの台詞に首を傾げれば彩子ちゃんも同じく首をかしげる。
そして彼女は口を開いた。
「好き、なんですよね?」
「え、うん、好きだよ?」
「……。一応聞きますがラブ、ですよね?」
「何が。ラブって、」
「エル、オー、ブイ、イーのラ、ブです。」
「誰が。」
「先輩が。」
「誰を。」
「三井さんを。」
「「…………。」」
一瞬の沈黙。
「あっはははは!!ないない!!私が三井を!?三井は友達だよ!」
そう返せば彩子ちゃんはこちらを見たかと思えば離れた所でストレッチしている三井へと視線を動かし、またこちらに戻ってくる。
そしてニコッと微笑んだ。
「あ、ごめんなさい!やっぱりひなの先輩はひなの先輩ですね!」
「え?」
「ひなの先輩て、みんな好きですよね!」
「ん?」
突然の話の流れに首を傾げる。
そんなひなのに未だニコッとしながら彩子ちゃんは一本ずつ指を折っていく。
「桜木花道も、水戸洋平も、桜木軍団も、晴子ちゃんも、赤木さんも、木暮さんも、リョータもヤッちゃんも…みんなのこと好きですよね?」
「もちろん!彩子ちゃんも好きだよ!」
「ふふ、やっぱりそうですね。…ひなの先輩はひなの先輩でした。先輩のこと甘く見てたわ…。」
「?」
ブツブツ呟く彩子ちゃんを不思議に思いながらも様子を伺う。
てゆうか彩子ちゃんは何の話をしているんだろうか。
すると彩子ちゃんと目が合う。
「先輩…私が何の話をしてるんだろうとか考えてます?」
どんぴしゃなその指摘にひなのは頷く。
そして常々思っていたことを話す。
「彩子ちゃんて…エスパー?」
「え?」
「前から心読まれること多かったけど…ほんとスゴいねー!いやー彩子ちゃんには敵わないなー。」
うんうんと納得していれば彩子ちゃんはぽかんと口を開いていた。
「…先輩て、本当不思議ですね。」
「ん?」
「なんか色々危なっかしいし、自分のことは二の次だし止めても聞いてくれないし、思ってた以上に鈍いですけど…、」
「悪口ですか。」
ぺらぺら出てくる内容は誉め言葉には聞こえない。
それに若干複雑な気分でいれば、彩子ちゃんは「でも、」と話を続けた。
「先輩と話してると安心するし、色々考えさせられることもあるし、みんなの事をよく見てくれるし…今の湘北バスケ部には欠かせない存在になってますよね。」
「え、」
「だからみんなひなの先輩のこと好きなんですよ。」
彩子ちゃんのその言葉に心が温かくなってくる。
そしてその感情のままに彩子ちゃんに抱きつく。
「彩子ちゃんほんといい子!大好き!!」
「私も好きです!」
ふふふと互いに笑い合う。
ほんとこんな可愛い後輩たちと知り合えてよかった。
ある意味三井にも感謝だな。
三井がグレなかったら私はここに入り浸ってはいなかっただろう。
そんなことを改めて考えていると、彩子ちゃんがこちらを見る。
「あ、でも用心ないとことか自分のこと後回しにするとことか危ないことに突っ走っていくのはダメですよ。」
「あ…ハイすみません。」
「そもそも先輩は…、」
「あれ?さっきまでの雰囲気はどこへ?」
「先輩!ちゃんと聞いてくださいよ!?」
「あっ、うん聞いてます。あれ、てゆうか…、」
なぜそんな話になった
(おかしいな…さっきまでは凄く穏やかな空間だった気がするのになぜ急に説教に…。)
*****
彩子姉さんにはいつも説教される主人公。
主人公の方が年上ですけどね!笑
150202執筆