教室を出てしばらく歩くとそこには三井がいた。


「あ、三井。」

「おお。」


そう言って何も言わずに二人並んで歩き始める。

こうやって歩いていると、ふと中学の頃を思いだした。

そう、あの頃もこうやって体育館まで並んで歩いたっけ。

…いや、歩いてはいなかったかもしれないな。









キーンコーンカーンコーン


──ガラッ!

チャイムの音と同時に教室のドアを開けるのは三井とひなのである。

教室からは担任の「お前ら毎日いい加減にしろ!」という嘆きの声が聞こえてきたがそれは無視である。

二人は並んで歩き始める。


「今日は私がドア開けるの早かったね。」

「ああ?僅差だろ、僅差!」

「ふふん、僅差でも勝ったもん。」

「ちっ。」


会話をしながらもお互いに野次が飛ぶ。

廊下のど真ん中を歩いていく二人には放課後だというのに人という障害物はない──というのも周りの人が廊下の隅に避けているからだ。

そしてそんな彼らからも声がかかる。


「今日はどっちが勝つんだ!?」

「毎日毎日飽きねえなー。」

「ひなのがんばれー!」

「三井男の意地を見せてやれ!」


ワイワイと言葉が飛び交うのも二人の耳にはあまり入らない。

歩いていたはずの彼らのスピードは少しずつ少しずつ早くなっていくのだ。


「今日はどっちが多くシュート決めたか勝負だ!」

「いいの?そんな勝負で。私の得意分野よ!」

「オレも得意分野だ!」


ぎゃいぎゃい言いながら進んでいればそれを聞いていた同級生が「今日の勝負はシュートの数だって!」と叫ぶ。


「シュートの数かー!予想できねーっ!」

「今日は春川に賭ける!」

「オレは三井だな!」


そんなやり取りもされているが二人には知らんこっちゃない話だった。

見ているのは互いのこと。
(ひたすら正面を向いて歩いているが。)

話はまとまり、「じゃあ今日の練習メニューのラストはお互いミニゲームってことで。」とひなのが言えば三井も頷く。

そしてそのまま猛スピードで二人は駆け抜けていった。


「お前ら毎日廊下を走るなぁ!」


そんな教師の叫びは勿論聞こえない。

男子、女子それぞれのキャプテンは三井とひなの。

練習メニューは彼らの勝負内容によって変えられていた。


「「今日のメニューは最後にミニゲーム!以上!」」


二人がほぼ声を揃えて言えば部員達は「ああ、」と声をあげる。


「今日の勝負はミニゲームですね。」

「わかりやすいわー。」

「てゆうかミニゲーム以外のメニューはどうすんの。」


同級生の指摘に「なぜ勝負だとバレているのか」そう思いながらも口を開く。


「あとはテキトーにいつも通りにやります!はい始めるよ!」

「「「はい!」」」


テキトーにというのもいつもの事。

部員達は慣れた様子でアップを始めるのだった。









「──まあ今思えばキャプテンの職権乱用だったよね。」

「は?」


突然発したその言葉に三井は怪訝そうな表情を見せる。


「あ、いや中学の時のこと思い出してさ。昔は私らの独断でやりたいことやってたなぁって。」

「…ああ、そういやそうだな。」

「よくあんなことばっかしてて怒られなかったよね。」

「オレは優秀だったからな。」

「バカだけどね。」

「な…!(言い返せない。)」

「あははは。」













ちょっと昔のこと













(いやーほんと懐かしいわー。補習大好き三井くん。)
(ち、ちげぇよ!)
(何が違うのでしょうか。)
(ぐ、)
(あははは。)






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