私は大好きな人がいる。

その人が近くを通ればすぐにわかるし、その人がどんな人混みにいたってわかる。

そう、つまりその人がめちゃくちゃ大好きで大好きで仕方がないってことです。













「大地さーんっ!!おはようございます!大好きです!」


彼の姿を見つけた瞬間に私は挨拶とそして告白をする。

前を歩いていた彼、大地さんはゆっくりと振り返りにこりと笑う。


「毎日朝からうるさいな。浅香は。」

「きゃ!朝からステキ笑顔頂きました!アザーす!!」

「その耳どうなってんだ。」


そう言う大地さんにニヤニヤしていると隣を歩いていたスガさんと旭さんが笑う。


「はは、浅香はほんと大地のことしか見えてないよな。」

「本当に大地が好きだな。」

「そんな大地さんのことしか見えてないだなんて!ちゃんとスガさんと旭さんのことも見えてますよ!視界には入ってないだけで!」

「「…………。」」


はっ、しまった。微妙な返答をしてしまった。

私の微妙な返答に微妙な表情をするスガさん、旭さんに慌ててがばりと挨拶する。


「スガさん!旭さん!ハヨーっす!!今日もスガさんは草食系のステキ笑顔ですね!旭さんはでっかいのに今日もしょぼくれてますね!」


そう言った途端、頭をガシリと捕まれる。

あれ、とその腕の主を見ればそれは大地さんのもの。

そしてその大地さんの表情は何だか微妙なものだ。


「お前には先輩を尊敬するという言葉はないのか。」

「え、やだなー私、先輩たちのことめちゃくちゃ尊敬してますよー!特に大地さんなんて尊敬しすぎて拝みそうなくらいですから!」


にへっと笑って言えば大地さんはチッと舌打ちをする。

え、何ですかそれ。

舌打ち聞こえてますから。怖いですから。


「浅香は言葉の選択を間違ってるということに気づけ。頼むから。」

「え、大地さんに頼まれちゃーしょうがないですね!私がんばりますよっ!国語の勉強今日から真剣にやります!!」


グッと気合いを入れていると頭をバコーンと叩かれる。


「ぐっ!?」


頭を押さえながら振り返るとそこには今にもため息をつきそうな表情の縁下。

その縁下がなぜか大地さんたちに謝る。


「すみませんコイツの言ったことは簡単にトイレに流すようにさらっと流していいので。」

「お前も大変だな縁下…。」

「トイレって…!」


大地さんが縁下の肩をぽんと叩く。

何なんだこのやり取り。

ていうか、


「縁下だけ大地さんの気持ち分かるとかズルいっ!」


そう叫べば、大地さんと縁下の二人から冷たい視線をもらいました。

縁下はとうとう深いため息をつくと私の襟首をつかみそのままズルズルと引っ張っていった。


「え、ちょ、まだ大地さんとお話してるんですけどっ!」

「ああうん。もう分かってるからほら、行くよ。」

「何も分かってないよね!て転ぶ転ぶ!大地さんヘルプ!」


助けを求めれば逆にひらひらと手を振られた。

それにショックを受けつつもそのまま縁下に引っ張られていく。

どんどん大地さん達との間に距離ができて、昇降口に入ったあとですっかり姿は見えなくなる。

学年が違うのだから当たり前のように階も違う。

つまり私が会いにいかないと会えないのになんでせっかく出会えた朝にすぐ引き離されないといけないんだ。

ぶっすーと頬を膨らませると縁下は呆れたような表情を見せる。


「…変な顔になってるぞ。」

「誰のせいよっ!私っ、せっかく大地さんに会えて嬉しかったのに!縁下と違くて私は部活入ってないんだから大地さんに中々会えないんだよ!?」


そう言えば彼はますます呆れた様子になる。

なによ、と身構えていると縁下はゴツリと頭を叩いてくる。


「ほぼ毎日部活を見に来てるくせに何言ってんの?」

「部活見に行ってたって私が大地さんとお話できる時間なんてほぼないじゃない!いいよね、縁下は大地さんのスパイク受けることもできるしー。隣で並んでサーブの練習できるしー。大地さんは冷たいしー。新入生にステキ笑顔見せてる時あったしー。」


ぶーぶーと文句たれていればまたため息をつかれる。


「浅香はなんかいろいろ間違ってる。」

「え、まさかのダメ出し?」

「しつこいんだよ、しかもうるさいし。そりゃあ優しい大地さんも呆れる。」

「がーん。」

「効果音を口にするな。 」

「縁下も冷たいー…!」


がくりと頭を下げてしゅんとなる。
だってうるさいとか!しつこいとか!…大地さんが呆れるとか…。


「………。」

「………。」


するとなぜか縁下は頭を撫でてくる。
涙目のままゆっくり顔を上げる。


「…なぐさめてくれてるの?縁下って優しいのか意地悪なのかよく分かんないよね。ていうかそもそも縁下のせいで落ち込んだんですけど。」


そう返せば縁下はまた笑う。

くっ、なんか腹立つ!

そう思って縁下の足を引っかけてやろうと考えたらなぜか自分が転んだ。

慌てて顔を上げればかなり冷たい縁下の視線。


「浅香はバカなのか。お前何もない所で転んじゃうような人なんだからおれを転ばそうだなんて一億年早いよ。」

「い、一億年て…!」


















すごい腹立つんですけど!
















(いや、それはおれの台詞だから。なんで足を引っかけようとする?)
(バカにするような顔で笑うから。)
(まぁ浅香はバカだしな。)
(ひどい!私はただ大地さんが好きなだけなのに!)







150303執筆






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