「だーいっちさーん!!」
がしっ!
いつものように大地さんを見つけ背後から腕に抱きつく。
すると大地さんは特にふらつく事もなく、ため息を一つついてこちらを振り返る。
「浅香…お前な、毎回言うけど背後から飛び付くな。」
「えーだって大地さんがいたから。」
「えーじゃないし、俺がいたからって何で飛び付く。」
「ふふふ、だって大地さんがいたからですもん!」
ニコッ!と笑って返せば、大地さんは諦めたかのようにその話を終えた。
そのまま並んで歩いていて、ふと疑問を感じる。
「大地さんどこに行くんですか?」
「今さら?購買行くんだよ。」
「やった!私も行きますー。購買といえばこの前大地さんとバスケ部の主将さんと昼ごはん争奪戦してましたね!」
その言葉に大地さんは顔を引きつらせてこちらを見てくる。
「…見てたの。」
「はい!それはもうバッチリ!走ってる所から追いかけてましたもん!」
「追いかけてたの。」
「はい!丁度移動教室の帰りで!大地さん見て速攻追いかけました!」
「ああそう…。」
遠い目をする大地さんににこりと微笑む。
あの日、移動教室の帰りに大地さん達が走っているのを見て友達に教科書を押し付け走って追いかけた。
そして非常ベルを鳴らしてしまい、教頭に怒られている所までバッチリ見ていたのだ。
いつもは頼りがいのあるしっかり者の大地さんだが、可愛い姿を見れたとテンションが上がり、ついカシャーとカメラのボタンを押していたのだった。
その時の様子を思い浮かべながら話を続ける。
「──教頭に怒られてましたね!写メ撮っちゃいました!」
「は?」
教頭に怒られる、その言葉よりも“写メ”──その単語に大地さんの表情が固まる。
それとは対照的にキラキラしながら画像を見せる。
「ほら!大地さんとバスケ部の主将さんと教頭!」
ふふふ!と笑いながらその写メを大地さんに見せると大地さんはニコッと笑う。
「かして、それ。」
「え、欲しいんですか?送りますよ!」
「──いいから、かして。」
その素敵な声と笑顔にほんわりとした気分になり、何も考えずに「どうぞ。」とスマホを渡す。
ぴぴぴ、とスマホを操作し、数秒で返してくれる。
(勿論素敵笑顔で。)
それを受け取りふふふ、とニヤニヤして、ふとスマホの画面を確認すると“消去しました”の文字。
確認すればさっきまで“大地さんコレクション”に入っていた写メが消えていた。
「あああああ!!ちょ、大地さん何やって、っていないし!」
泣きながら隣の大地さんを見ればそこに姿はなく、すでに歩きだしてしまっていた。
ダッ!と慌てて追いかけ大地さんの袖をぎゅー、と握る。
「大地さんー…!なぜこんなことをォオ!」
プルプル震えながら言っても大地さんはニコッと笑うだけ。
「いいじゃないか、写メなんてなくても。いつも一緒にいるんだから。」
その言葉にハッとする。
「大地さん大好きです!!」
「はいはい。」
再び大地さんの腕にぎゅっと抱きつけば大地さんは歩くのを止めてこちらを見てくる。
「…浅香さー。」
「はい?」
若干真面目な顔つきの大地さんにこちらも真面目な顔つきになる。
どうしたんだろう、そんなにあの写メ撮った事怒ってたのかな。
(泣いてみたけど実はバックアップ取ってあるんだけど。)
それとも大地さんの知らない間に追いかけて盗撮したのが多かったの見られたかな。
(大地さんコレクション見られたもんな。)
怒られる理由は満載な気がしてきて、ドキドキしながら待っていると、大地さんはそのままの表情で言った。
「俺以外にはするなよ、これ。」
その言葉に一瞬、動きが止まる。
“これ”と言いながら自分の腕を指さしてくる。
つまり他の野郎に抱きつくな、とそういうことですね!?
大地さんが、大地さんがこんな事を言ってくれるなんて。
「──当たり前じゃないですか!大地さんにしかしないですよっ!!ていうか大地さんにしかしたくないです!だって大好きですもん!」
「……そこまで聞いてないから。」
「へへへ!」
「おい…。」
「ふふふー!離さないですよー!」
更にぎゅーっと抱きついてみれば呆れたため息をつきながらも何も言い返してはこない。
それが“くっついていてもいいよ”と言ってくれているようでニヤニヤしてしまう。
その表情を見て大地さんはまたまたため息をつく。
顔が気持ち悪いぞ
(ふふふー、そんな事言っても私は離れませんよー。)
(…はいはい。)
(おっ、大地。仲良しだなー本当に。)
(旭。)
(まるで付き合ってるみたいだなー。なぁ浅香。)
(はい!)
(何の話だなんの。)
(旭さーん聞いてください大地さんがねー!)
(浅香!お前の口は閉じててられないのか?)
(え…やだ、大地さん私の口を閉じさせたいんですか?大歓迎です!)
(どんな耳だ!)
(大地は独占欲強いなー。)
(旭うるさい!)
*****
☆バスケ部の主将とのお昼ごはん争奪戦は13巻より
☆Always with you…いつもあなたの側に
150523