「うぐー、」 


べたーっと机に突っ伏していればその側を同級生でありよき理解者の一人、田中龍之介が声をかけてくる。


「何変な顔してんだよ。」

「あー龍之介ー、ヘルプー!」

「?」

「おなかすいたー!!」


そう叫べば龍之介はズルーっ!と足を滑らした。

それを見てつい笑いを漏らせば、龍之介は体勢を戻して一言。


「購買に行ってこい!」

「えー!動きたくないよー!」


ぐだぐだしながらそう言えば龍之介はにやりとして目をキラリとさせる。


「そうは言うがな…購買に大地さんがいるかもしれないぞ!」


そのチャンスを逃していいのか!?そう言う龍之介にハッとする。

そして体を起こして龍之介と手を取り合う。


「龍之介…!私が間違ってた!そうだよね!お腹すいたからって動かないなんて私が間違ってた…!!大地さんに会えるなら私、行く!」

「おう!そうだ!それでこそ浅香だ!お前ならやれる!」


そんなやり取りをしていれば、その横をたまたまうちのクラスに来ていた縁下が冷たい視線で見てくる。


「購買に行くだけでしょ?大袈裟。」

「ちーかーらー!お前ほんとわかってねぇべや!俺は浅香の気持ちわかる!潔子さんに会うためなら腹減って動けなくても這いつくばってでも会いに行くぜ!」

「龍!」

「浅香!」

「…茶番はいいから購買行けば?」


しばらく時が止まっていた2人はハッとする。

しまったこれでは休み時間が終わってしまう。

財布を取り出すと、ダッシュで購買に向かう浅香を見送り、うんうんと頷く田中、それを見ていた縁下はふと口を開く。


「まあこの昼休みじゃないこの時間に大地さんがいるかどうかは微妙だけどね。」

「た、確かに…!いやしかしそういう時に会えた時こそ運命を感じるものだよ縁下クン。」

「ハイハイ。」


田中の言葉をさらりと流し、縁下はため息をつくのだった。





















「はーあ、大地さんいなかったなー。龍之介に騙されたー。」


購買に行っても運命的な出会いはなくがっくりしながらもとりあえず腹を満たす為に菓子パンを購入した。

そしてやっぱり昼休みに大地さんに突撃しよう、と思いながら自販機に向かう。


「んー、何飲もうかな〜。」


ドス!

ガシャコン!


自販機から何やら力強い音が。

思わずその音源を見れば両指で隣合う同じ飲み物のボタンを押している人が。

そしてその姿は見覚えがあった。


「あ、期待の1年生その2の影山くんだ。」


そんな言葉がつい口に出てしまい、言ってしまってからハッとするももう遅い。

彼はこちらを見てペコ、と頭を下げる。


「…チス。」

「チース!あ、私は2年の浅香です。」

「あ、知ってます。いつもバレー部見に来てて、キャプテンと一緒にいる人、ですよね。」

「いつも一緒…!」

「あ、はい。いつもキャプテンといますよね?」


その言葉にふふふと笑うと彼はビクリとしてこちらを見ている。

今年の一年はなんだかよい子が多い。


「あの、期待の1年その2って…。」

「ああ!その1は日向。」

「アイツがその1…。負けねえっ…!」


どこか悔しそうな様子を見せる影山くんを不思議に思うも、よく考えれば日向と彼はミドルブロッカーとセッターというポジションの違いがあるにしても競い合って成長しているような気がする。


「おれの方が日向よりバレーうまいですから!」

「あはは、うんうん。影山くんスゴいうまいよね!」

「ちなみに…浅香さんはバレーできるんですか?」

「えっ、私?私は運動からっきしダメだから!すぐ転ぶんだ!」

「そうなんですか…。」


少し残念そうな様子の影山くん。
そんな様子に首を傾げる。


「どうしたの?」

「あ、いや、先輩よくバレー部見てるから教えてもらえるかと思って。」

「ああ!確かに私バレー部うろちょろしてるもんね!」

「あ、はい。それに応援の仕方も凄いので…特に澤村さんへの応援はアツイです。」

「えへへ、まあね!あ、でもちゃんと他の人も見てるよ!影山くんのよくわかんないけどかなり凄そうなトスとか。日向の凄い運動能力からのスパイクとか。大地さんのミラクルスーパー格好いいレシーブとか!みんなを引っ張っていくキャプテンしてる姿とか!後輩を気にする様子とか、旭さんをいじってる時のちょっと意地悪そうな顔とか。」


他の人、と言いつつも大地さんの事がつい口に出てしまう。

語り出したら止まらなくなってしまうので何とかストップをかけ、影山くんを見る。

すると彼はぽかんとした顔でこちらを見ていて。

そしてしみじみしながら言った。


「なんていうか…浅香さんは澤村さんのこと大好きなんですね。」

「うん!大地さんなら目に入れても痛くないよ!」

「め、目に…ですか?」

「うん!大好きすぎるって事だよ!」

「なるほど!浅香さん難しい言葉知ってるんですね。」

「ふふふ、まぁね!」




















そんなやり取りをしているのを見ていた3年生ズは何とも言えない表情になっていた。

















(おい、大地。ことわざの意味違うって注意してきたら。)
(なんでおれが…浅香は本当にバカだな。)
(浅香…そんなに大地のことが好きなんだな…!)
((なぜ泣く。))
(あのやり取りを見て泣く理由よく分かんないんだけど。)
(見た目だけでなく中身もおっさんになったのか旭は。涙腺弱まった中年?)
(ヒドっ!!)



(いやー影山!私君と仲良くできそうだわー。)
(はい。また色々教えてください!そして日向のボゲにおれは勝ちます!)
(なにその闘争心!いいね!アツイね!)
(はい!浅香さんの澤村さんの事思う力もアツイっす!)
(ありがとー!)






****

主人公は田中と同じクラス。バカだけど自分ではそんなにバカだとは思っていない。

目に入れても痛くない
→かわいくてたまらない、見境なくかわいがるさまのたとえ。
多く、子や孫をかわいがるさまのたとえとして使う。




150516






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