2016/08/06 15:28

*ゴールドその2




「──さァ、作戦決行よ!」


ギルド・テゾーロの資産、テゾーロ・マネーを盗む作戦は今から始まる。
この作戦でゾロを助け出す為の借金返済のメドが立たねば──彼は見せしめとして殺される。
そんな事は絶対にさせない。

カリーナの作戦により麦わらの一味は二手に別れる事となった。
一方は侵入者を監視する全ての映像電伝虫を統括するホスト電伝虫に仕掛けをしカメラを一時止める。
もう一方はカリーナの手を借りながら中に浸入し、金庫まで進みテゾーロ・マネーを運び出す。

カメラを止めに入るには塔の“外側”から浸入するしかない。
あの高い塔の外側から。
それを請け負ったのはゴムゴムで進むルフィ。
それと同じくしてロボ機能で登れるであろうフランキーの二人である。

シオンは中からチームに加わろうと思っていたがやはりというか何というか──ルフィにガシリと腕をつかまれてしまう。


「おいシオン!どこ行くつもりだ!」

「どこって…ナミ達と一緒に。」


そう言えばルフィは思いきり息を吸って大声で叫んだ。


「だめだ!!!!」


キーンとなる耳を押さえながらルフィへと視線を向ける。
毎度の事であるのでナミ達は呆れ気味、カリーナはぱちくちりと目を丸くさせていた。
ルフィはというとぷんぷん!と腰に手を当てて子どもを叱る親のように口を開いた。


「シオンはおれと一緒だ!」

「…でも私ゴムゴムじゃないし。ロボじゃないからあんな高い塔登れないよ。」


そう返せばルフィの後ろでフランキーが「そんなロボだなんて褒めんなよー。」とニヤニヤしているがそれに突っ込んでいる場合ではない。
こちらも何度もこのようなやり取りをしているからといって負けるわけにはいかない。
そう思って気を引き締めていればルフィは「なんだそんな事か。」と言うとニカッと笑う。


「そんなのおれに掴まっていけばいいじゃねェか!」

「ルフィに…?」


その言葉にふと想像する。
落ちたら終わりのあの高い塔を登るルフィの首に掴まってぶら下がりながら進む姿──普通に考えて無理だろう。


「いや、無理でしょ。」

「無理なんかじゃねェよ!」

「無理!」

「無理じゃねェ!」


ギャーギャー騒ぎ始める二人にカリーナはぽかんとする。


「何、あの二人何ケンカしてるの?」


それに答えるのはナミである。
視線はシオンとルフィに固定されているままであるが見慣れた光景であるからしてどうでもよさそうに答える。


「よくある事よ。ルフィはシオンを側に置いておきたいのよ。」

「え、それって…。」

「ルフィはアホだからね…でもまァあのおバカの唐突な行動を抑えられるのは確かにルフィだけだから。私にとってもルフィといてくれた方が安心だけど。でもシオンがいくらごねたとしても結果はいつも同じ…まァ見てなさい。もうすぐ決まるから。」


頭に「?」を浮かべるカリーナを横目にシオンとルフィを見るナミと一味。


「無理!!」

「無理じゃねェっ!!!」

「あーもう!なんでそう無茶言うの!」

「シオンがいつも勝手にどっか行っちまうからだろ!!」

「そ、んな事は…!」

「シオンはおれと一緒に行くんだ!!おれが見張る!!」

「うぐ、」


いつも勝手にどこかへ行ってしまう。
その言葉に心当たりがないわけではないシオンは言葉につまりぐんぐん押されていってしまう。
サンジがいよいよ「バカ野郎!シオンちゃんを困らせるんじゃねェよ!」と怒鳴るもルフィはキッとシオンを見る。


「シオン!!行くぞ!!!」

「あーもう!分かったわよ!行けばいいんでしょ!」


もう!と叫び、次の瞬間ハッとするも目の前のルフィの満足げな笑みを見てがくりと肩を落とす。
そんな様子を見て一味は苦笑いである。


「あーあー。」とウソップ。
「ほんとにしょうがねェな。」とフランキー。
「いつもワンパターンなんだから。」とナミ。
「ヨホホホいつも楽しそうですねェ!」とブルック。
「二人はいつも楽しそうね。」とロビン。
「仲良しだもんなっ!」とチョッパー。
「シオンちゃん…。」とサンジ。


「……分かった、私もルフィと行く。」

「当たり前だろ!」


ニコニコして言うルフィにシオンは脱力する。
どう回避しようとするも結局はこうなってしまうのだからもうしょうがないという事にしておこう。
シオンとルフィのやり取りを見ていたカリーナは目をぱちくちりさせて笑って言った。


「仲良しなのね。麦わらのルフィと不滅のシオンは。」

「そうよ。シオンにもし何かあったら…ルフィは間違いなく怒るわね。」

「…そう。」

「?何よ、どうしたの。」


カリーナの変な反応を見てナミ眉間にシワを寄せる。


「…あの子、気をつけた方がいいわよ。」

「?何によ。」

「ギルド・テゾーロに。」

「??」


気をつける──そう言った彼女に首を傾げる。
この作戦をするからには全員が気をつけなくてはいけないだろう。
なのに、“あの子”──シオンだけを名指しした。
その理由を尋ねればカリーナは口を開く。


「ギルド・テゾーロは…“不滅のシオン”に興味を持っていたから。」

「──!!」

「“不滅のシオン”は巷でも“時価”や“不滅”と呼ばれる所以を不思議に思われている。私は詳しい事は知らないけれど。──テゾーロは全て金で支配してきた。そんな奴が次に狙うもの…彼女は狙われる理由が充分ある。」


ナミはシオンをちらと見る。
彼女は“ハウザード”という一族で、“永遠の命”と呼ばれる一族であり自己再生能力が強い。
それ故に“キラー”という組織に狙われていたり政府にも追われている。
一般的にはその理由は公開されてはいないが、知る人が知れば喉から手が出るほど“欲しい材料”となる。

そう、例えば天竜人。
奴らが彼女の事を知れば、その血を手に入れようと躍起になるだろう。
確かに先程テゾーロと相対した時、彼はシオンの姿に反応して絡んでいた。
あの時捕まらなかった事に少しだが安堵する。
ゾロも不穏な気配を感じてシオンや他の仲間を押し退けて一人先陣を切っていったのかもしれない。

シオンが、また狙われているかもしれない。
それを不安に思うもわーわー騒ぐシオンとルフィを見ると力が抜けてふ、と笑う。
狙われているかもしれないと聞かされたのに笑っているナミを見てカリーナは目を丸くする。


「大丈夫よ!今までも色々あったけど…シオンにはルフィがついているからね!」


こうなるとやっぱりシオンにはルフィといてもらった方が安心だわ、と笑うナミにカリーナも笑った。


「ルフィは私を落としそうだからフランキーにぶら下がる。」

「なんでだよ!」

「絶対、落とす。」

「落とさねェ!」

「落とすよね、フランキー。」

「ん?ああ…どうだろうなァ。まぁスーパーなおれは絶対にそんな事ァしねェがな!」

「でしょ!」

「フランキー!フランキーはシオンの事分かってんのか!」

「あァ?」


怪訝そうな表情を見せるフランキーにルフィは叫ぶ。


「シオンはなァ!さっきまでそこにいても気がついたら一人で勝手にどっか行くんだぞ!!」

「いやいや。」

「見張っててもいなくなるんだぞ!フランキー、絶対にシオンを見失うなよ!」

「……。」


フランキーは憤るルフィと呆れた様子のシオンを交互に見てやれやれと首を振る。


「おいシオン、お前ルフィに運んでもらえ。」

「えっ、何で!」

「おれはシオンを見失う事はないとは思うが……おれの手には負えねェな。」

「な、」

「よし!決まりだ!」

 

腕を組んで言うフランキーにショックを受ける。
何だかんだ言ってみんなルフィに甘いのだ。

 
「──絶対に落とす!」

「だから落とさねェっ!!」

「落とす!!」

「落とさねェ!!」


ギャーギャーと何度も同じやり取りを続け騒ぐ二人にとうとうナミが叫ぶ。


「──うるっっさい!!」

「「──!!!!」」

「時間がないっつってんの!!いつまでも同じやり取りしないっ!!もう行くわよ!!!」

「「すみませんでした。」」


全くもう!と息を吐くナミにシオンとルフィは頭を下げる。
ナミに怒られ結局はルフィにぶら下がる事となるシオンだった。











自己満足!読んで頂いてありがとうございました!
もしかしたらその内またupするかもです(^〇^)




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