寒がりなキミと…

テレビの電源を入れ、すぐさま天気予報にかえた。

「わぁ、今日最低0℃だって」

真っ青な文字が晴れマークの下で点滅していた。

晴れるくせに寒いなんて、矛盾してると俺は思ってる。

「しょうがねぇよ、冬なんだからそんなもんだろ」

亜久津はそう言いながらこたつに入り込む。

俺より寒がりなくせに、やけに強気だ。

「こたつ入らないの、これから出かけるんでしょーが」

今日は久しぶりのデートだ。

デートって言っても、ただ買い物に行くだけなのだが…。

「…俺もいかねぇとだめか?」

「絶対ダメ。はいはい、行くよ?」

軽い舌打ちが聞こえて亜久津はゆっくりこたつからでてきた。

(いじけてるところも…かわいいんだから)


******


「やっぱり寒いね、大丈夫?亜久津」

幸い風は吹いていなかったが、やはり寒い。

「…大丈夫じゃねぇ」

亜久津はマフラーに顔をうずめてボソボソつぶやいた。

長身の亜久津が顔をうずめて縮まっている様子がおかしくて笑える。

数時間で買い物も終わり、あとは家に帰るだけになった。

亜久津も満足したはずだ。

モンブランを美味しそうに食べていたから。

「帰ろうか、寒いし」

「当たり前だ、こんな極寒にいつまでもいられるか」

「これぐらいの寒さに慣れなきゃ、まだまだ寒くなるよ?」

「家からでなきゃすむ話だろーが」

まったくその通りだ。亜久津の言うことは的を得るから困る。

「そう、にしても…さむっ!」

「今さらか、…お前の感覚は狂ってるのか」

「平常だよ?寒すぎてちょっと叫びたくなっただけ」

手袋をしていても寒い。ますます気温は下がるのにこれでは乗り切れるか心配だ。

「まぁ…気持ちは分からなくもねぇがな…」


亜久津は鼻を赤くしていた。もしかしたら俺も同じかもしれない。

手袋をしていても手がかじかんでいる気がした。

「寒いな…手が寒い」

「手袋してるからまだいいだろ?」

「……チッ」

亜久津は何か不服そうに俺の方をみて白い息を吐きだした。

「…こっちのがあったかいだろ」

そういう前に亜久津は俺の手を握っていた。

…それもかなり強引に。

「…珍しいこともあるね、どうかした?」

「うるせぇ、やならやめてやる」

「やだやだ、このまま。ちょっと待って」

俺は亜久津の手から手袋を外した。

俺の手も極寒のなかに晒された。

「冷てぇじゃねーか」

「こっちのほうがもっとあったかくなるでしょ?」

「…チッ」

亜久津の顔の赤みがますます濃くなった気がした。

白い肌が桃色に色づいている。

手を握る力が強くなった。俺も負けじと握り返してみた。

「寒がりだね、亜久津は」

「…うるせぇ」

冬は嫌いじゃない。

寒さに便乗して、大好きな人が甘えてくれるから。

「寒いね、亜久津」

「…あぁ」

家に帰るまでずっと繋がってたのは今年一番のラッキーだ。

かわいいキミとまた冬を乗り越えよう。






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