話がある





合宿も2日目の夜、お風呂も上がって就寝前のとき。
もう肌寒いし、今日は寝よう、とみんなで話していたら、私の携帯が鳴った。
吹雪くんに呼び出されて小さなロビーに来たんだけど、当の本人はいなかった。
だけど、そこにいたのは氷上くん。
ちょっとドキドキしながら声をかけてみた。

「あれ、どうしたの?」
「吹雪から呼び出された。おまえは?」
「私も、吹雪くんに」

ちょっと、気まずいんだけど。吹雪くん、早く来てくれないかな。
氷上くんの隣に腰かけると、甘い香り。ココアだ。

「あ、ココア」
「飲む?」

うん、なんて言って受けとったけどこれ、間接キスだよね。完全に。
ラッキー、なんて。べつに下心とかないから。本当に、偶然。
あ、温かい。

「あったかいね」
「寒いの?」

少し強引に手を掴まれた。な、なんだこの展開。

「く、来る途中、渡り廊下だったから」

夜風で冷えたんだ、なんて呟いて顔を上げると、心なしか氷上くんの顔が赤い気がした。
ていうか赤い。

ぎゅうっと手を握られて、照れ隠しにココアをすすった。ああ、間接キスだ。

やばい。にやける。

もう、なんなの、この展開は。

早く来てよね、吹雪くん。とか思う反面、もうちょっとこのままでいいかも、なんて思う。

手、握られてるんだよね。体温上がってきた。心拍数やばい。バレるよ、これは。

もういっそコクっちゃおうかな、とか思いはじめたら、いてもたってもいられない。

……よし。

「「あの、」」

ビビった。

「先、どうぞ」

「いや、俺の話は後の方がいい」

「ううん、私の話はもっと後の方がいい。しょうもない、あ、しょうもなくなかった」

「じゃ、先言うぞ」

あれ、顔が真っ赤なんですけど、氷上くん。

うわあ、もしかしてこれ……、

『好きです』

そんな言葉が聞こえてきたのは3秒先の世界。