Mis3 scene5 | ナノ
──scene 5
渡された書類にざっと目を通したレンは、眉尻を上げた。
「つまり、街に逃げたこいつを迅速に捕まえろってことだろ?」
「そうよ」
「一人で十分じゃん」
「なるべく早くってことだから、二人でやんなさいよ」
「でもこの条件なら、レンを頼らなくてもあたしで出来るわ」
「おい」
「何?」
「どういう意味だよ今の」
「どうって、言葉通りだけど?」
「お前より俺のが良いだろ、この任務は」
「そうかしら。どうやって捕まえるの?」
私は冷や冷やと言葉を繋げる二人を見比べる。レンはあからさまに苛々しているし、リンはさっきあんな話をしたばかりだと言うのに、淡々と挑発してるみたい。
ぱんぱん、とメイコさんが手を叩いた。
「もぉー、良いからさっさと行きなさいっての。急ぎだって言ったでしょ!」
「……ちッ」
「はいはい」
レンとリンは揃って指令室を出て言った。後に残ったのは、呆れた様子のメイコさんとおろおろしているだけの私。ここ指令室では、デスクグループであるルカさんとカイトさんも常駐しているのだけど、確か今は二人ともどこかに出張だったはず。
「だ、大丈夫なんですか?あの二人」
「さぁね。でも仕事は完遂するでしょ。プロなんだし」
メイコさんは回転椅子に座りくるりと回るとモニタに向き直った。その手が踊るようにキーボードを跳ね回り、何か難しそうな文書を作成していく。私も頼まれた仕事を片付けてしばらく経つと、そろそろね、とメイコさんがモニタに外の景色を映し出した。
「あらあら。相変わらず速いわね、レンは」
バイクに跨り走るレンの背景は、街中の景色。もう外に出たんだ。本当に速い。走っている車の隙間を縫うようにすいすいと走っているのを、固定カメラらしいいくつもの映像が教えてくれた。
「……あら。見つけたみたいね」
レンは明らかに目的を見つけた動きで狭い路地へと入っていった。カメラが切りかかる。随分人気のない小道だ。
「リンも追い付いたわね」
「ほんとだ」
別のカメラに、通りを走るリンの姿が。追い付いた、とメイコさんは言ったけれど、どこかはわからない。相変わらず丈のみじかなドレス姿。あれ、それに見慣れない銃を腰に提げていた。
リンが好んで使う物より、随分大きいような。大体リンは華奢な銃を好むのだ。それは大分カイトさんの趣味によるものらしいけれど。
「あ、そうだミク。この書類わけてもらおうと思ってあんた呼び戻したんだったわ。さっきのに追加ね」
「えっ」
どさりとデスクの上に紙の束を置かれて、頬が引き攣る。多い。多いですメイコさん! さては溜めこんでたわね……。
それから私はどっと増えた書類と格闘していたから(溜めこんでいたらしい書類が後から後から出てくるのだ)その捕り物の結末は二人が帰ってくるまでわからなかった。
【MISSION 3】
──Start.
20121115