Mis3 scene3 | ナノ




──scene 3



 こないだから、どうもレンとリンの様子がおかしい。この前の、任務が終わってから。
 どこがおかしいってよくは言えないのだけど、何となくぎくしゃくしているような気がする。それに、ちょくちょくある任務には別々で行ってるみたいだし。今まで二人一組で行く姿ばかり見ていたから、すごく不自然。それをメイコさんに言ってみると、


「まぁ…いままでも 一人ずつ行ってたことはあったからね。そりゃあ二人での方が圧倒的に多かったけど、もともと一人で行ける任務も二人でやってたところがあるし」
「そうなんですか?」
「心配いらないわよ。大体あの子たち、大抵のことは一人で出来る実力あるんだから」


 確かに、二人ともすごく強い。以前訓練の様子を見せてもらったことがあるけど、動きがすごく、綺麗だった。レンは力強くて、リンはしなやかで。特に華奢なリンが何人もの男の人を投げる姿は見ていて気持ち良いくらい。


「でも……そうねぇ。そろそろ何とかしてやった方が良いかしら」
「え?」
「何でもない。そうそう、ミク。これリンに持って行ってくれる? あの子のドレスなんだけど」
「あれ、どうしてメイコさんが?」
「ふふっ。ボタンが取れてね」
「ボタン?」
「そ。あの子裁縫が苦手なのよねー」
「へぇ。器用そうなのに」


 意外な事実に胸がほっこりとしつつも、頼まれた黒いドレスをリンの部屋へと持って行く。今の時間は部屋にいるはずだ。事務員として、メンバーの過ごし方は大体頭に入っている。
 ノックをすると、すぐにリンが顔を出した。


「ミク。どうしたの?」
「メイコさんから、これ、預かって来たの」
「ああ、ありがと」


 ドレスを受け取ったリンは、どこか元気がないように見えた。それは気のせいと言われればそうかもしれないし、私がそういう色眼鏡でリンを見ていたからかもしれないけれど。


「ねぇ、リン」
「なぁに?」
「……怒ってる?」
「怒ってるって……誰が?」
「リンが」
「誰に?」
「私に」
「どうして」
「…………わかんないけど。ええと、こないだから、様子が変だから」
「……」


 リンは目を伏せると、息をふぅと吐いた。
 どきり。リンの仕草はどこか色気があって、落ち着かない。長い睫毛が頬に影を落として、紅い唇が濡れていて。私より二つ、年下だと聞いているのに。


「入って」


 リンは私を部屋の中に誘った。これは初めてのことで、思わず私は立ち尽くす。
 い、良いのかしら。リンは、レンもそうなんだけど、どこか人を受け付けない雰囲気があるような気がする。ううん、人当たりは良いと思う。でもこう、一線を引いていて、そこからさきは二人の世界、みたいな。


「ミク」


 けど、リンが微かに笑ったのを見て、慌ててドアの中へと滑り込んだのだった。



20121113