Mis3 scene0 | ナノ
──scene 0
しゅるり。
静かな夜に、衣擦れの音が蠢く。ベッドサイドの明かりが仄暗く照らすだけの薄暗い部屋に潜むは、一組の男女。
リボンタイを外した少女は、口元に嫣然と笑みを浮かべた。赤いルージュが引かれた唇で、囁く。
誘うように。
「それは災難だったわね」
「ああ……全く」
「わたしで慰められるかしら?」
「やってみなくちゃ、わからない。だろう?」
「それもそうね」
くすくすくすくす。小鳥が歌うような笑い声には隠しようもないほどの艶色。細い腕が、男の首に。男の腕が、折れてしまいそうな細腰に絡まった。
妖しいシルエットが壁に照らされる。それを見る者は二人の他になく、当の二人はお互いをお互いの瞳へ映すのみ。ベッドへと沈み込み、少女が笑う。
「性急ね」
「こうされるのが好きなんじゃないか」
「嫌いじゃないわ」
少女の両手が男の頬へ伸び、目を閉じて────、
「BAAAAAAAAAAAAAAAAAAAANG……なんちゃって」
「!?」
少女の紅唇から漏れた戯言のような効果音が、それ以上の爆音にかき消された。爆音だけではなく、凄まじい振動。
「ここか!」
何故か廊下から漂ってくる煙と火薬の臭い。その向こうから響いたのは、年若い青年の声。
「なっ……!」
少女の上の壮年の男は、目を見開いて半身を起こすも、それは突然のことで頭が回らない様子。
「残念」
そんな男を、少女は、
「時間切れよ」
勢いよく蹴り飛ばした。
20121108